中学3年生の冬。
私、坂西 楓(さかにし かえで)は
記憶障害になった。理由は、
たしか、横断歩道を渡っていた時。
信号は青だった。
けれど、猛スピードの車が私をめがけて一直線に走って来た。
避けようとして、失敗した。
打ち所が悪かったのか、
その時の1年前と事故に遭った後の記憶が無かった。
それだけでは無かった。
後遺症として、3日ごとに記憶がリセットされる。
いわゆる、記憶喪失になってしまった。
最初は悔しくてずっと泣いていた。
けれど、4日目になってなぜ泣いていたのかさえもわかんなくなっていた。
そこから中学校での生活はほとんど誰とも関わらなかった。
話にはついていけないし。
高校でも、友人関係はどうでもいい感じに付き合っていこうと思っていた。
なのに、登校初日。
迷子になってしまった。
行きかたを忘れたわけではない。
ただ、私が方向音痴ってことを忘れていたのだ。
優しい君はしっかりと教えてくれた。
きっともう会わない。
1学年だけで8クラスあるんだから。
でも、
う、運命?
さっきのあの人がいる!
我ながら、少し嬉しかった。
が、
さ、サイテー!
確かに方向音痴ですが、
確かにそうだけど、
言い方に問題が、
つい私もカッとなって言ってしまった。
もう、最悪。
運命的な出会いって誰もが想像してることなのに、こんなサイテーな形の運命的な出会いになるなんて!
誰とも関わらないでいたかったのに
これが運命的な出会いと、
サイテーな君との出会いだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。