玲於に今日の夜誘われたけど亜嵐くんとの先約があるから
もちろん断った。
" 亜嵐と玲於どっちが好きなの? "
聞いてくるもんだからビックリした。
もちろん亜嵐だけど、なんで玲於?
ちょっとよく分からない。
来たのは雰囲気のいい居酒屋。
私と亜嵐くんの行きつけ。
お世話になっている店主にそう伝えた。
おっちゃん優しいんだよ!
もう1本焼いてくれるし、最高だよね。
亜嵐くんの視線が痛かった。
今日の亜嵐くんは変だ。
いつも言わない " かわいい " とか " 好き? " とか。
普段言わないからこそドキドキしてしまう。
慌てて亜嵐くんに鳥焼きを渡した。
" 照れてんの? "
って。
意地悪だなぁ。
ほんとに。
私はパクッと焼き鳥を食べた。
異様に重くなった私と亜嵐くんの空気。
嫌だな…
けど、亜嵐くんだって私にいっぱい嫉妬させてる。
私、そんなことしてないし…
してるつもりない。
つもりがないだけで嫉妬させてるなら謝るのに
話させてくれないんだから。
私だけじゃない!
亜嵐くんに日々ずっと!
嫉妬三昧なのに…
私だけそんな悪者扱い酷いじゃん。
私の大好きな声で呼ばれる私の名前も今は聞きたくない。
5000円札だけ置いて外に出た。
真から凍りそうな寒さ。
冬は寒い…
息が白く空中に吐き出される。
その場から歩いてとりあえず家に向かう。
はぁ、初喧嘩?
追いかけてきてくれるのかな。
そんな妄想膨らんでたら
" 着信 : 佐野玲於 "
横にスライドした。
携帯を耳に当てると
名前を名乗らない坊主。
そこは玲於らしい。
今…ちょうど喧嘩したばっかだった。
あ ~ 、どうしよ。
仲直りしなきゃだよなぁ。
このままわかれるなんて嫌!
けど、勇気が出ない。
モヤモヤとした心と戦う。
負けそうになってるのが今の現状。
冷たい空気の中一粒の涙が頬を伝う。
この人はなんでそんなに見破ってしまうの?
人の心読みすぎだよ…
すると電話の向こうから聞こえる声が今では近くで聞こえる。
振り向くと、
携帯を握りしめる私の側に歩いてくる。
優しそうに笑う玲於。
なんでこんな時にそんな顔するの。
また、泣きそうになった。
そんな時、玲於の胸が私の顔にある。
暖かい温もり。
そういうとぎゅっと強くなった力。
これが玲於なりの優しさなのかと思い知らされた。
そんな優しさに漬け込む私。
何度かあった。
涙が溢れて止まらない。
別れたくない…
亜嵐くんと一緒にいたいのに。
ぎゅっと玲於の裾を掴む。
うざくて玲於から離れると子供のような笑顔で笑ってる。
も ~ 、やだ。
私までつられちゃう。
私の頭を掴んで髪をボサボサにした。
送る。
と一言残して歩く。
ピタッと止まる玲於の足。
ゆっくり振り返って横に首をふる。
かわいい。
照れた時の癖、後頭部の髪をかく。
ドSだなぁ。ほんと。
彼女にもそんなことしてるのかな。
驚いたように私を見る玲於。
え?
私、何か変な事言った?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!