ゆっくり目が開く。
目の開いた先には見慣れない天井と匂い。
知らない家に私はいるんだと気づいた。
ベッド…に寝かせられてる…!?
私はすぐさま服を確認したが昨日のまま…
私は何があったのか。
昨日の記憶が曖昧でおかしくなる。
白濱亜嵐がなんで…ここに!?
お粥をそっと私の横に持ってきた。
白濱さんはベッドの横に座って私を見上げる。
上目遣いで私を見つめる目…
いつもはカッコイイって思うのに可愛いって思えてきた。
その顔、ずるいです。
はい!とスプーンで私に差し出してきたお粥。
湯気がふんわりと立っていて美味しそう。
手…カサついてる…
白濱さんからスプーンを受け取ろうとしたが
逸らされた。
はい、あ ~ ん?
って…
もう…
私は口を開けてパクッと食べた。
わ…美味しい。
料理得意じゃない人が作るお粥じゃないみたい。
子供みたいに目を輝かせて私に聞いてくる。
それだけを残して違う部屋に戻って行った。
熱は下がったみたいだ…
よかった。
帰れるかな。
周りを見渡すと私のカバンが端っこに置いてある。
綺麗にしてるんだな…
あまり、物のない部屋。
無駄なものが無い。
私の部屋とは大違いだ。
急に現れてビックリ。
" 凄いね "
褒められた…?
私の心は暖かかくなった。
明美さんや冬真に褒められることは
程々にある事として…
他の人に褒められたりすることはあまりないから
ちょっと…嬉しい。
え…?
今、さりげなく予約された…?
私があの、白濱亜嵐の髪の毛を!?
明美さんにやってもらった方が何倍もかっこいいから!
あまり、自信が無い。
ま ~ た、上目遣い。
その顔に私は弱いと今、思った。
私の頭にポンと手を置くと私に
薄いストールを渡してきた。
深緑と黒の線がいくつも入ったストール。
白濱亜嵐の…ストールが今…私の手元に…!
はい
と、もう一度渡されたストール。
ギュッと握った。
大切に使わなきゃ…
でも、これいつ返せばいいのだろうか…
聞こうと思った時。
トコトコ私に、近寄ってきた白濱さんは
私のおでこに手を当てた。
その途端、私の、体温は一気に上昇。
逆に熱が上がりそう…
不意打ちに触られると心臓がもたない。
ただ、私は有名人にこうされるのがビックリしてるだけ。
彼の事などどうも思っていない。
出ていこうとする私の肩をベッドに押し付けた。
そういう上から見下ろす白濱さんの顔は
色っぽくてドキドキさせる…
ずっと見つめられると…
私の顔は火がついたみたいに赤くなる。
と言うと、白濱さんは離れて部屋を出ていってしまった。
ビックリした…
あんな至近距離で見ることなんて一生できない…
貴重な体験…
ピンポーン…
白濱さんがインターホンに話しかけると
ちょっとだけ声が聞こえた。
1人じゃない何人か…
いや、まさか上がってくるとか無いよね。
私、見られたらお終いだよ!?
しかも、今いる場所ベッドの上!
勘違いされるに決まってる。
ほら、困ってんじゃん。
私すごく迷惑かけてるんだから…
早く帰らないと!!
私は端に置いてあったカバンと
白濱さんに借りたストールを手に取り勢いよく
玄関に走る。
白濱さんに頭を深く下げて扉を開けると…
ニコニコして私に寄りかかってきた人…
私から離れるなり…その一言…
まぁ、あたりまえか…
隼…?と呼ばれる人の後ろに他4人の人…
嘘はええねん!って関西弁の二人…
嘘じゃないんですが…
私、間違った…?
出るタイミング。
ちらっと白濱さんの方を見ると
ガッツリ睨まれた…
わ…最悪。
ごめんなさい という気持ちで手を合わせた。
携帯を片手に話す人…
亜嵐くんの家いい匂いする!
って携帯を持つ男の人が言って…
私1人だけになった。
笑いながら言ってるけど…
わらえるのだろうか。
あまり、顔に出さない白濱さん。
またね
って言われた…
またっていつ会うんだろう。
私も
また
と返した。
外に出るとやはり風邪のせいかちょっと寒い。
そんな時に手に持つストール。
首に巻いて防寒。
ふんわり香る白濱さんの匂い。
部屋の匂いとはまた別の白濱さんの香り。
もしかして…さっきの人たちって
GENERATIONSの皆さんなのかな…
何かお礼しなきゃ…
私は近場の雑貨屋に寄って白濱さんっぽい雑貨を探す。
私の目に止まったのは
紫色のハンドクリーム。
大人っぽいパッケージで使いやすそう。
白濱さん手荒れしてるのかかさついていた。
丁度いいかな。
レジにハンドクリームを出して買った。
ストールを渡す時…ついでに渡そう。
お礼にしちゃ…ちょっとちっちゃいかもしれないけど
気持ちだけでも…
買ったハンドクリームを持って外に出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!