第5話

ハンドクリーム
2,193
2018/12/26 14:04
ゆっくり目が開く。
目の開いた先には見慣れない天井と匂い。
あなた

え…

知らない家に私はいるんだと気づいた。
ベッド…に寝かせられてる…!?


私はすぐさま服を確認したが昨日のまま…


私は何があったのか。


昨日の記憶が曖昧でおかしくなる。
白濱亜嵐
あ、起きたんだ。大丈夫??
あなた

白濱…亜嵐…

白濱亜嵐がなんで…ここに!?
白濱亜嵐
はい?白濱亜嵐ですよ。
お粥をそっと私の横に持ってきた。


白濱さんはベッドの横に座って私を見上げる。
あなた

なんで…

白濱亜嵐
だって、倒れてたから。
あなた

私、倒れてた!?

白濱亜嵐
うん、えらそうにね。
あなた

本当にごめんなさい!
迷惑かけました!!

白濱亜嵐
別に、迷惑じゃないけど?
上目遣いで私を見つめる目…


いつもはカッコイイって思うのに可愛いって思えてきた。
その顔、ずるいです。
白濱亜嵐
はい、これ!
俺、料理得意じゃないけど
頑張って作ってみた!
はい!とスプーンで私に差し出してきたお粥。


湯気がふんわりと立っていて美味しそう。


手…カサついてる…
あなた

じ、自分で食べれますので大丈夫です…

白濱さんからスプーンを受け取ろうとしたが


逸らされた。
白濱亜嵐
だめ、俺が食べさせるんだから。
はい、あ ~ ん?


って…


もう…
私は口を開けてパクッと食べた。


わ…美味しい。


料理得意じゃない人が作るお粥じゃないみたい。
白濱亜嵐
ど??
子供みたいに目を輝かせて私に聞いてくる。
あなた

美味しいです。

白濱亜嵐
よかった!また、食べたくなったら言ってね。
あなた

ありがとうございます。

それだけを残して違う部屋に戻って行った。
あなた

はぁ…

熱は下がったみたいだ…


よかった。


帰れるかな。


周りを見渡すと私のカバンが端っこに置いてある。


綺麗にしてるんだな…


あまり、物のない部屋。


無駄なものが無い。
私の部屋とは大違いだ。
白濱亜嵐
あ、あなたちゃんだっけ。
急に現れてビックリ。
あなた

そうです…

白濱亜嵐
あなたちゃん明美さんの
アシスタントになるんだってね。
あなた

なんで知ってるんですか!?

白濱亜嵐
明美さんが言ってたから!
あなた

あ ~ 、なるほど…

白濱亜嵐
凄いね、明美さんのアシスタントなんて
俺、見たことないわ。


" 凄いね "


褒められた…?


私の心は暖かかくなった。


明美さんや冬真に褒められることは


程々にある事として…


他の人に褒められたりすることはあまりないから


ちょっと…嬉しい。
あなた

まだまだ、これからです。

白濱亜嵐
もしも、一流になったら
俺の髪の毛もよろしくね?
え…?


今、さりげなく予約された…?


私があの、白濱亜嵐の髪の毛を!?
あなた

無理です、無理です!!
白濱さんの髪の毛を触るとか
何百年と早いですよ!
明美さんでお願いします…

明美さんにやってもらった方が何倍もかっこいいから!


あまり、自信が無い。
白濱亜嵐
お客様の言うこと聞いてよ。
ま ~ た、上目遣い。


その顔に私は弱いと今、思った。
あなた

はい…

白濱亜嵐
楽しみにしてる。
私の頭にポンと手を置くと私に


薄いストールを渡してきた。
あなた

これ…?

白濱亜嵐
ほら、帰る時に使いな?
また悪化しちゃうと困るでしょ?
深緑と黒の線がいくつも入ったストール。


白濱亜嵐の…ストールが今…私の手元に…!
あなた

こ、こ、こんなの、受け取れませんよ!

白濱亜嵐
あなたちゃんはなんの心配してるの?
ファンの子の心配??
あなた

そりゃ…もちろん!

白濱亜嵐
けどね、俺今、すごくあなたちゃんの
心配してるわけなの。だから。ね?
はい


と、もう一度渡されたストール。
あなた

ありがとうございます…

白濱亜嵐
い ~ え。
ギュッと握った。


大切に使わなきゃ…


でも、これいつ返せばいいのだろうか…


聞こうと思った時。
白濱亜嵐
あなたちゃん体調どんな感じ?
あなた

あ、もう大丈夫です。

白濱亜嵐
頭は?
あなた

ちょっと…クラクラしますけど…

白濱亜嵐
まだ、熱あるのかな。
トコトコ私に、近寄ってきた白濱さんは


私のおでこに手を当てた。
その途端、私の、体温は一気に上昇。


逆に熱が上がりそう…


不意打ちに触られると心臓がもたない。


ただ、私は有名人にこうされるのがビックリしてるだけ。


彼の事などどうも思っていない。
白濱亜嵐
ん ~ 、熱は無いみたいだけどなぁ。
あなた

私帰るんで大丈夫です!

白濱亜嵐
いや、ダメだよ?
あなた

な、なんでですか。

白濱亜嵐
まだ、治りたてだから悪化しちゃ困る。
あなた

でも、私は大丈夫なんで…

出ていこうとする私の肩をベッドに押し付けた。
あなた

ちょ…

白濱亜嵐
まだ、だめだって…
そういう上から見下ろす白濱さんの顔は


色っぽくてドキドキさせる…
あなた

白濱さん…

ずっと見つめられると…


私の顔は火がついたみたいに赤くなる。
白濱亜嵐
わかった?
あなた

はい…

と言うと、白濱さんは離れて部屋を出ていってしまった。
ビックリした…


あんな至近距離で見ることなんて一生できない…


貴重な体験…


ピンポーン…


白濱亜嵐
はい?
白濱さんがインターホンに話しかけると


ちょっとだけ声が聞こえた。


1人じゃない何人か…
いや、まさか上がってくるとか無いよね。


私、見られたらお終いだよ!?


しかも、今いる場所ベッドの上!
勘違いされるに決まってる。
白濱亜嵐
ちょっと、今日は駄目。
ほら、困ってんじゃん。
私すごく迷惑かけてるんだから…


早く帰らないと!!


私は端に置いてあったカバンと


白濱さんに借りたストールを手に取り勢いよく


玄関に走る。
白濱亜嵐
ちょっと!今はだめだっ…
白濱さんに頭を深く下げて扉を開けると…
あなた

げっ…

小森隼
亜嵐く ~ ん!
ニコニコして私に寄りかかってきた人…
白濱亜嵐
ちょちょ!隼!
小森隼
え、だれ!?
私から離れるなり…その一言…


まぁ、あたりまえか…
隼…?と呼ばれる人の後ろに他4人の人…
中務裕太
あれ、亜嵐くん彼女いたん!?
白濱亜嵐
彼女じゃない!
数原龍友
聞いてへんで ~ !
白濱亜嵐
だから、違うって!
嘘はええねん!って関西弁の二人…


嘘じゃないんですが…
私、間違った…?


出るタイミング。
ちらっと白濱さんの方を見ると


ガッツリ睨まれた…


わ…最悪。
ごめんなさい という気持ちで手を合わせた。
佐野玲於
亜嵐くん珍しっ…
携帯を片手に話す人…
白濱亜嵐
違うわ!アホ!
数原龍友
ま、とりあえずお邪魔しま ~ す!
白濱亜嵐
ちょ、ちょちょ!
佐野玲於
おっ邪魔しま ~ す!
亜嵐くんの家いい匂いする!


って携帯を持つ男の人が言って…


私1人だけになった。
あなた

あの…白濱さん…なんかすみません…

白濱亜嵐
大変なことになっちゃったなぁ!
笑いながら言ってるけど…


わらえるのだろうか。


あまり、顔に出さない白濱さん。
白濱亜嵐
ま、みんなにはちゃんと説明するから大丈夫。
あなた

ごめんなさい…

白濱亜嵐
大丈夫!あなたはちゃんしっかり治してね。
あなた

はい…治します…

またね


って言われた…


またっていつ会うんだろう。
私も


また


と返した。
外に出るとやはり風邪のせいかちょっと寒い。
そんな時に手に持つストール。


首に巻いて防寒。
あなた

いい匂い…

ふんわり香る白濱さんの匂い。


部屋の匂いとはまた別の白濱さんの香り。
もしかして…さっきの人たちって


GENERATIONSの皆さんなのかな…
何かお礼しなきゃ…


私は近場の雑貨屋に寄って白濱さんっぽい雑貨を探す。
あなた

なんだろ…

私の目に止まったのは


紫色のハンドクリーム。


大人っぽいパッケージで使いやすそう。
白濱さん手荒れしてるのかかさついていた。


丁度いいかな。
レジにハンドクリームを出して買った。
ストールを渡す時…ついでに渡そう。
お礼にしちゃ…ちょっとちっちゃいかもしれないけど


気持ちだけでも…


買ったハンドクリームを持って外に出た。

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