言われた場所に言われた時間に来た。
8時…35分…
8時半って言ったのに!
5分も遅刻してる。
亜嵐くんにしては珍しいな。
いつも5分前には来てるはずなのに…
「 亜嵐くん、仕事忙しい? 」
とりあえずLINEを、送った。
忙しいならわざわざ今日に飲まなくていいのに。
変な人…
「 ごめん!今日行けそうになくなった 」
思わぬ通知。
来れないの…
「 ならなんで誘ったの 」
ずっと亜嵐くんに会いたかった。
ずっとずっと亜嵐くんだけ考えて仕事終わらせたのに。
やだ…
会いたい。
「 ごめん! 」
「 会いたかったのに。 」
それだけ打って電源を落とした。
最近亜嵐くんと会えていなかった。
お互い仕事が重なって同じ時に休みは取れず
ずっと会えていなかった。
電話はしょっちゅうだけど私も気使って
夜遅くまでは出来なかった。
亜嵐くんだって仕事あるし…疲れてるだろうし。
いつの間にか溢れだしてくる涙。
こんな大人になって泣くなんて…
もう、あれから泣かないって決めたのに。
また亜嵐くんの事でなくなんて…
もう、行く場所なんてない。
速攻家に帰った。
靴もカバンもコートを全て投げ捨てベッドにダイブ。
今更、ちょっと後悔がでてきた。
なんであんなに強く言ったのか。
芸能人なんだもん。
仕方ないって思ってたのに。
それなりの覚悟は決めていたのに。
やっぱり欲には勝てなかった。
ベッドサイドに置かれた写真には私と亜嵐くんの写真。
それを手に取って見つめる。
こんなに二人とも笑顔だ。
別れたくなんかない。
ずっと一緒がいい…
今まで溜め込んでいた涙がドバっと溢れた。
枕は冷たい。
私の涙で濡れていく。
──ピーンポーン
私の涙は止まった。
え、こんな夜に…
涙を見せないためタオルを手に持ちゆっくり玄関に近寄る。
鍵を開けると
亜嵐くん!と叫ぶつもりが
急に抱き締められた。
…唯一感じた亜嵐くんの匂い。
久しぶりに聞いた亜嵐くんの生声。
その途端、さっきまで出ていた涙がまた流れる。
会いたい。
その願いが叶ったかのように会えた。
大好きな亜嵐くんに。
抱き締められる状況から亜嵐くんは私から離れた。
そして、目を合わせる。
私達、付き合ってもうそろそろ一年が経つのに
( 記念日:12月20日、現在:12月17日 )
" ソウイウコト " はしたことが無い。
キスの2つや3つはあるがその先はいかない。
いや、いけない。
ニヤニヤしだす亜嵐くん。
え?
結局なんだったの…
てか、考えてることなんて大体想像つく。
けど口が裂けても言えない。
お風呂から漏れるシャワーの音。
それがどこかドキドキする。
テレビの音なんて入ってこない。
シャワーの音だけ。
敏感になっている。
ソファーに体操座り。
あ、止まった。
シャワーの音が止まった途端、ドアが開く音。
急に呼ばれびっくりして机の角に足をぶつけた。
動揺しすぎだ、馬鹿!
亜嵐くんのカバンから取り出して脱衣場まで持っていく。
返事がない。
え!もしかして…
のぼせた!?
咄嗟にドアを開けると
タオルを腰に巻いた亜嵐くんが洗面台の前で立っていた。
よかった…
倒れてない…
一安心かと思いきやその格好で近づいてくる。
どんどん迫ってきてついには壁に挟まれた。
濡れた髪の毛と濡れた肌
いつもの亜嵐くんでさえ色気だだ漏れなのに
この状況はすごくまずい。
心臓壊れそう。
Sな亜嵐くん。
亜嵐くんから手が伸びてきて私の顎のラインを
サラッと触れてその手が後ろへ流され
もう片方の手も私の背中へ。
ぎゅっとされてる。
あかん…
この心臓の脈が伝わってしまいそう…
反則…
この状況でそんなこと囁かれてしまったら終わり。
と言って亜嵐くんは私から離れて
顔が近まって私の唇に触れた。
いつもとは違う深く甘い。
脱衣場に響き渡るリップ音。
何度も何度も角度を変えて絡む舌。
亜嵐くんの胸を押しても叶わず無駄な抵抗。
やっと離されたかと思いきや
こんなこと断言されて!
やばい、壊れそう。
こんな気持ちは初めてだ。
頭がぼーっとして動かない。
そのニヤニヤ顔。
ずっと私の頭に残ったまま夜の " 遊び " へと変わった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。