12月20日の朝。
眠たそうな声。
起こしちゃったかな…
あ、俺らの記念日だ って言ってくれるよね。
忘れてたなんて言わせない…なんては言えない。
だって、亜嵐くん忙しいし。
多少…覚えてなかったぐらいで私はなんとも思わない。
あっさり出した亜嵐くんの答え。
ちょっと…残念。
でも、何も思わないっと…
えへへ
って笑うものの…声だけ。
顔は笑ってなんかないと思う。
なんか私だけ覚えてて亜嵐くんは忘れてるのに
お祝いなんかしたくないなって気がした。
だから、話を勘違いってことにしたの。
実はケーキ予約したんだよね。
今日で1年が経つもん。
朝から仕事らしくもう電話は切った。
私も、仕事だし…
もう行こうかな。
仕事の準備をして向かう。
さむいなぁ。
窓にたくさんの水滴が着いている。
朝日ももう上がり切った様子。
こんな寒そうな日にはマフラー。
クローゼットの中に閉まっておいた " あのマフラー "
もう、既に1年が経った。
あの出会いがなかったら今頃私達は
こうして付き合うことも無く、芸能人と視聴者
というごく普通、当たり前の立場だったのかもしれない。
今日は一年記念日だもん。
これ巻いていく。
靴を履いて外に出ると予想以上の寒さ。
芯から冷えて凍え死にそう。
私、寒さに弱いんだよな。
コートを前でクロスするような形にする。
足早に向かった。
すごく深いことを考えていそうな顔で
腕を組んで机にもたれている明美さん。
私を見るなり顔はぱっと明るくなった。
まさか…、クビ宣言?
別室に連れてこられ向かい合って話す。
明美さんはびっしりと詰まったスケジュール表を
ペラペラめくる。
私も喜ぶと思った。
嬉しくて嬉しくて舞い上がるって…
なのに気持ちが全く乗らない。
朝のこと気にしてるんだ…
今日も頑張ろっと私の肩をトンと叩くと出ていった。
ふうっ…
今日か…
なんでよりによって今日なの…
今のが正直な答え。
分からずそのまま終えたかった。
LDHさんで働かさせてもらうのはほんとに有難いこと。
けど…
亜嵐くん、本当に覚えてないのかな。
わざとじゃない?
仕方ない。
亜嵐くんの事は気にしないようにしよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!