そして、約束の時間。
念の為、1時間前には仕事場を出るようにしていて
今は電車の中。
久しぶりに電車なんか乗った。
平日だから割と人は少ない。
それにしても、言うべき?
亜嵐くんに。
さっきから亜嵐くんのLINEを開いては
" 今日からLDHで働くよ "
と、打っては消し…打っては消し…の繰り返し。
うん…一応言おう。
そう覚悟してLINEじゃなくて
電話を後でかけることにした。
そして、電車は目的地に着いてドアが開く。
亜嵐くんの電話番号をタップしコールが鳴る。
いつもとは違う。緊張する。
___prrrrrrr
ドクッ…ドクッ…
私の心臓の音が聞こえてくる。
いつもと同じ亜嵐くんの声。
ちょっと安心…
プーッ、プーッ、プーッ…
携帯を耳から離すと最初に戻っている画面。
どういうこと…?
私のこと嫌いになったの…?
意味わかんない…
今日ずっとおかしいし。
記念日も忘れちゃうぐらいいい事でもあった?
泣きたい気持ちを堪えた。
泣くなら後で泣く。
その覚悟でLDHの事務所へ足を運んだ。
カウンターで私に尋ねる女性。
受付の人に着いていく。
GENERATIONS…さんだったな。
4階らしい。
エレベーターを降りて突き当たりの部屋に向かう。
どうしよう。
めっちゃ緊張してきた。
みんなに変な反応されたらどうしよう。
メンタル崩壊する。
一歩一歩歩く度に心臓の音は速くなる。
そして、辿り着いた部屋。
開けようとドアノブを握って回す。
目を開けると
やはり、みんな驚いた顔して私を見てる。
必死になって声を出し頭を下げる。
あぁっ!
どうにでもなれっ…
と最初に声を出した涼太くん。
なら亜嵐くんも…
にやにやし出す龍友くんと裕太くん。
わぁぁあ…
恥ずかしい…
やっと、視界が良くなって周りを見渡すと
涼太くん…
裕太くん…
龍友くん…
隼くん…
玲於…
メンさん…
あれ?
すると私の後ろの扉が開いた。
向こうにいた人。
それは紛れもなく亜嵐くん。
亜嵐くんはなんとも思ってないんだろう。
その顔。
私の気持ちはわかんない…
仕方ない。
けど…
こんな変な気持ちばかり行き来する。
ちょっと険悪な空気になった。
やばい。
言いすぎた。
ゴソゴソと後ろから袋を出す。
なんやら高価な袋で
私に差し出してきたのは小さな箱。
その当たり前が嬉しくて嬉しくて…
泣かないと決めていたさっきとは違う涙が出てくる。
ごめん と頭を下げる亜嵐くん。
嬉しいじゃん。
疑ってた私、馬鹿みたい。
亜嵐くんと目を合わせ笑う。
はぁ、、よかった。
ちゃんと好きでいてくれた…
照れた様子の玲於。
私は未だに頭で理解はできない。
亜嵐くんは自分の携帯を取り出した。
私は亜嵐くんの携帯を受け取る。
玲於「 今日記念日じゃないの? 」
亜嵐「 あ、そうだ。 」
玲於「 忘れてたとかあなた悲しむよ 」
亜嵐「 忘れてるわけねぇし! 」
玲於「 どうすんの?なんかやる? 」
亜嵐「 何か出来ることあるかね? 」
玲於「 サプライズでなにかあげれば? 」
亜嵐「 それいいよね。俺も考えてた。 」
…
何となく理解はできた。
改めてお礼を言うと照れた様子で頷く。
追い詰められたようで玲於の顔は険しい。
最後の方しか聞こえない。
ボソボソと聞こえてくる声。
と、ボソボソ話す組を見下ろす。
みんな大きく横に顔を振って否定。
玲於の圧ってすごい。
でも、私のことまだ忘れられてないの…?
不意にもちょっとだけドキッとした。
二人で行っちゃったし…
どうすればいいの?私。
そんな中亜嵐くんの顔はちょっと険しい。
顔を触って確認してる。
スタッフさんに呼ばれ亜嵐くんとはさよなら。
ん ~ 、名残惜しいけど…
仕事だ。
仕事とプライベートの区別つけなきゃ…
ドアを閉めた時、亜嵐くんにメンバーが投げかけた言葉が
ちょうどドアの閉まった音で聞こえなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。