第19話

あの女性は…
1,816
2019/01/05 14:14
さっきと同じように順番に外に出る。


白濱さんがLINEしたら私も出る。
白濱亜嵐
じゃ、来てね!
あなた

はい!

じゃ、と言って出ていった白濱さん達。


私の目にはどこか烏滸がましいことを想像していた。
私が奥さんで白濱さんが夫。


それを私が送り出すっていう…笑


そんなこと出来るはずがないただの妄想。


まるで、私が白濱さんを好きみたいに ──────
白濱さん達が出て行ってしまってから静まるリビング。


連絡が来るまでソファに腰を下ろして周りを見る。


綺麗にしてるんだなぁ。


と、ひとつ目に入ってきた写真立て。
棚にいくつも立てて並べてあるのに一つだけ倒してある。
倒れちゃったのかな。


と、立ち上がって棚の所まで歩く。
あなた

わ…凄い、写真…

端からどんどん見ていくとGENERATIONSの


デビュー日から順に並んでいる。
と、辿り着いた倒れている写真立て。
おかしな写真でも入ってるのかな。


変顔の写真とか…?笑


なんて、頭の中は愉快な妄想。
その写真立てをびっくり返してみたら
あなた

え…

そこには


白濱さんと一人の女性。
その女性は白濱さんと物凄くお似合いで


とっても美人。
突然、私の心臓が高く高鳴る。


付き合ってるの…


なのに…私に好きって言ったの…


写真立て一番端で最近の場所。


デビュー日付近に付き合ってたならもっと前に


置いてあるはずなのに。
しかも、ずっと置いてある…
私の中で変な焦りが出てきて苦しい。
無言のままその写真立てを裏返して置いた。


何事もなかったように…


ピロン


携帯の通知が広い部屋に鳴り響く。


白濱さん「おっけ!」


「はい」


その文字もどこか信じられなくなった。


付き合ってるなら…


言わないで欲しかった。


これ以上、私の心を弄ばないで…
少し重くなった足で白濱さん達の元へ、
中務裕太
さ!行こうか!あなたちゃん!
笑顔で言う中務さんを見てると安心する。


その横でまた、笑う白濱さん。


見つめてしまう。


すると、白濱さんは私のに気づいたのか


ん?


と言う顔で見つめる。


何故か、逸らしてしまって前を向いた。
あなた

行きましょう…!

いつも通りに…しなきゃ…
.
数原龍友
あ、きたきた!
着いた頃には私達以外は揃っていて空いてる席に座る。
玲於くんの隣。


白濱さんの隣が安心するんだろうなって


部屋に上がる前までは思っていた。


けど、見てしまったから…
数原さんは え? っていう顔で私と白濱さんを交互で見る。


並び方はこう。


メン ハヤト あなた レオ

アラン ユウタ リュウト リョウタ
白濱亜嵐
よし、全員揃ったから!
乾杯しましょう!
関口メンディー
腹減ったぁ ~!
数原龍友
メンさん、いっぱい食べてくださいね!
自分の奢りですから!!
関口メンディー
だから、なんでだよ!
奢るとしてもあなたちゃんだけ!
あなた

あ、ありがとうございます笑

佐野玲於
やっぱ性格悪いっすね、メンさん。
小森隼
そういう性格が顔に出るって言いますしね、
関口メンディー
うるせっ!
この空間は、とても楽しい。


自然に笑えてくる。


仲がいいんだな、ってよく分かる。
みんなの顔を見てると笑っててほっこり。


笑い声も聞いてて居心地がいい。
見てると


カシャ…

あなた

えっ…

横で私にカメラを向けてる人がいて


佐野玲於。
あなた

盗撮。

佐野玲於
してねぇよ。
あなた

したじゃん。聞こえた。

私にスマホを見せないようにいじるから


気になるじゃん。
佐野玲於
ちょ、やめろよ…
お腹を突っついて力を緩める作戦。
あなた

なら、見せて?

佐野玲於
やだ。
あなた

なら、またやるよ?

佐野玲於
やだ。
やだやだ、それしか言ってない。
あなた

まあ、いいや…

玲於くんから手を離そうとした時。


掴まれて…
あなた

えっ…

手を握られた。


みんなに見えないように。ぎゅっと。
佐野玲於
なに?
あなた

い、いや…手…

佐野玲於
やだ?
ここは、さっきみたいに "  やだ  " って言いたいのに…


別に…嫌な気もしない。
あなた

別に…

佐野玲於
なら、いい。
私と手を繋いでいるのがバレないように


玲於くんと私との距離が縮まる。
私の心臓はドキッドキ…
それから、一向に話す気配がない玲於くん。


私はなかなか話が頭に入ってこないでいる。
たまたま、白濱さんの方を見たら丁度目が合って…
浮かぶのはあの写真。


今日…白濱さんの家に泊まるんだよ…?


こんな気持ちのまま泊まれない。
あなた

あ、あの…私帰ります。今日は…
誘っていただきありがとうございました。

玲於くんからも手を離した。
そして、お金だけ机に置いて外に飛び出す。


" あなたちゃん! "

" ちょっと… "


皆さんの声は私に届いている。


けど、もう戻れない。
ちょっと風のある夜道を足早に歩く。


もう、大丈夫。


きっと居ない。


白濱さんや中務さんに迷惑かけずに済む。
けど…
あなた

なんでっ…

目から涙。


あの空間から逃げ出したのが苦しかった…?


皆さんの優しさが苦しかったのかな…


それとも…


ずっと私の心の隅にいる " しこり " のようなもの。


たった一枚の写真。


あの白濱さんの笑った顔。


忘れたくても忘れられないような幸せそうな顔だった。


私だけに見せてくれていたんじゃなかったんだ。


私以外にも沢山…沢山…愛した人だっていた。
見なきゃ良かった。


立ち歩かなければ良かった。


いや、それ以前に白濱さんに助けを求めなければ


良かったのかもしれない。


助けを呼ぶならもっと他にいたのに。


でも、真っ先に浮かんだのは白濱さんの顔だった。


もう、自分の気持ちがどうなのかが分からない。
あなた

もう…消えて…
私の中から居なくなって…!!!

人気のない夜道に響き渡る自分の叫び声。
気持ちがスっと抜けて力も抜ける。


その場に倒れ込んでまた涙が溢れる。
白濱さんに…出会わなければ…良かった。


こんな思いなんかしなかった。


私、こんなに嫉妬してる。


白濱さんとにこやかに写るあの女性に。






















あなた

私、、好きなんだ、白濱さんが。






















トントン…
肩を叩かれて後ろを振り向くと
あなた

玲於くん…

走ってきてくれたのか肩で呼吸している。
佐野玲於
急に逃げ出すとか有り得ねぇ。
あなた

ご、ごめんなさい…

佐野玲於
ん。とりあえず行こ。
玲於くんは手を差し伸べてくれた。


けど、これ以上迷惑はかけられないから…
あなた

玲於くん…私に構わなくていいから
皆さんの所に行って。

佐野玲於
やだ。
あなた

やだじゃない…お願い。

佐野玲於
無理。
あなた

お願い…

佐野玲於
お前、馬鹿なの?
あなた

佐野玲於
好きなやつ目の前にしてはい帰ります
って帰ってくやついると思うか?
また、涙は溜まる。 














佐野玲於
ほっとけねぇよ…お前のこと。
俺がほっとくわけねぇじゃん。














優しい口調になった時。


目に溜まった涙は溢れて溢れて ────────
佐野玲於
ほら、俺の胸貸してやるから。
と、引き寄せられた私。


泣きたくない…


が、涙は溢れるばかり。
あなた

うぅっ…

佐野玲於
大丈夫。大丈夫。
玲於くんってこんなにやさしかったっけ…

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