『風の呼吸 弐ノ型〝爪々・科戸風〟』
と、素早く避ける鬼。
私は二本の刀を投げた。
そして、持ち前の跳ぶ力で、空へと。
そのまま二回転して刀を掴み、
『月の呼吸 捌ノ型〝月龍輪尾〟』
そうして、鬼の両腕を斬り捨てる。
私は、腕も細く、足も細い。
筋肉が付きにくい体質だった。
だけど、私にはこの背の高さと手足の長さがある。
それを利用して、空へ飛び投げた刀の遠心力を使うことで、
鬼の頸を斬りやすくする。
何をするかは大体判っているだろう。
私と実弥くんは、呼吸を揃えて。
『風の呼吸 陸ノ型〝黒風烟嵐〟』
『月の呼吸 伍ノ型〝月魄犀花〟』
実弥くんの少し荒い攻撃に、私の月でサポートし、
鬼の頸を
斬った。
鬼の頸がボトっという音ともに落ち、
呻き声を上げながら消えていく。
残念ながら、それを可哀想などと思う
優しい心は持ち合わせていないわけでね。
私が何故実弥くんに倒れかかったというと。
背中の傷がめちゃめちゃ痛かったんだよね…(笑)
そう言って、いつもの体勢に戻る。
刀を突き付けられて心配されてもね…(笑)
大丈夫、だと思う。多分。
また来た道を戻るように、
私達は本部へと戻ることにした。
消えた隊士達の行方は、恐らく鬼が喰ったのだろう。
森は実弥くんが探したらしいが、何も残っておらず、
ただ血の生臭い臭いだけが残っていた。
出来るだけ背中に負担が掛からない姿勢で、森を後にする。
そして、本部に着いて。
この感謝の言葉が、彼に聞こえていたかは、
分からないが。
実弥くんは私に背を向け、行ってしまった。
しのぶちゃんのとこに行け。
って、背中を一応見せてこいってことかい?
普段は口も態度も悪いのに、
本当は優しく、人想いな実弥くん。
全く、格好良いなぁ。
私は、羽織と耳飾りを靡かせて、
実弥くんとは反対方向、
蝶屋敷に向かうことにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。