第26話

重ねる姿
1,330
2020/01/25 07:51
胡蝶 しのぶ
…傷は問題なし、
体調はどうでしょう?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
元気だよ!背中も痛くない!
胡蝶 しのぶ
嘘は、
夜霧 蘭
夜霧 蘭
吐いてないよ!早くー!
胡蝶 しのぶ
大丈夫ですよ、彼方からは特に大きな事は起こっていないと聞きましたし…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
何かあってからじゃ遅いんだよー。
胡蝶 しのぶ
はい、なら良いです。
また何かあったら来てくださいね?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
うん、ありがとうしのぶちゃん!
胡蝶 しのぶ
いいえ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
あぁ、そうだ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
カナエちゃんにもよろしく伝えておいてくれるかい?
胡蝶 しのぶ
…!……はい、分かりました。
しのぶちゃんは頬を緩め、


心からの笑顔を私に向けていた。


私は部屋を出て、蝶屋敷の外へと向かう。





思い出す、あの姿。




──────胡蝶カナエ、花柱。


しのぶちゃんのお姉さんだ。


優しく、美しく、花の様に凛とした女性だった。


彼女は女性隊士の中だと、


一番仲が良かったかもしれない。


優しく微笑むその姿とは裏腹に、


鬼へは強く、芯のある太刀筋。


そんな彼女の訃報を聞いた時に、


涙を流さずにはいられなかった。


しかもその場にしのぶちゃんが居たとか。


今でもあのしのぶちゃんの顔は忘れられない。


カナエちゃんが亡くなった事実に、


現実を受け止められず、泣きじゃくる彼女の顔を。


でも今は、彼女はもう柱で、


毒で鬼を殺す薬を作った天才だ。


それに、花の呼吸を使った継子がいる。


そんな姿を見てしまうと、


たまにカナエちゃんと重ねてしまう時がある。
…彼女を殺した鬼はまだこの世にいる。


きっとその鬼を殺したい気持ちは山々だろうね。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
お、義勇くん。
蝶屋敷を出たところで、義勇くんを見付けた。


彼は私に気付き、此方へと歩いてくる。
冨岡 義勇
…!…夜霧か。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
蝶屋敷に何か用でもあるのかい?
冨岡 義勇
用があるのは胡蝶だ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
あら、任務だったの?
呼んでこようかい?
冨岡 義勇
いいや、気にしな…
きよちゃん
あっ!!水柱さん!!
しのぶさん呼んできますね!!
冨岡 義勇
いや…あ…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
ふふっ、
そんなに自分で行きたかったのかい?
冨岡 義勇
否、毎回呼ばれてしまうから、
少し此方から呼んでみようかと…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
そうかいそうかい。
冨岡 義勇
夜霧は…これから任務か?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
あぁ、天元くんのとこに行かなければ。
冨岡 義勇
そうか。
胡蝶 しのぶ
あら~?
まだ夜霧さん此処に居たんですか?
胡蝶 しのぶ
駄目ですよ冨岡さん。
夜霧さんは忙しいんです。
冨岡 義勇
いや、俺は別に…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
はいはい、二人とも道中仲良くね。
じゃあ、行ってくる、また会おう。
胡蝶 しのぶ
くれぐれも怪我だけはしない様にお願いしますね?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
善処する~
胡蝶 しのぶ
はぁ…お気を付けて。
冨岡 義勇
次も生きて会おう。
胡蝶 しのぶ
冨岡さん、それじゃあ死に行くみたいです…だから嫌われるんですよ。
冨岡 義勇
…!!………俺は、嫌われていない。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
……心配な二人だなぁ(笑)
私は二人の話す姿を見守りつつ、


有栖の案内で遊郭へと向かうことにした。

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