光の速さで蜜璃ちゃんに誤解を解きに行く小芭内くん。
ここで誤解を解かなければ流石にこれは私が悪い。
と、手を伸ばすと明らかに嫌悪感をこちらに向ける小芭内くん。
人差し指と人差し指を合わせて、明らかに落ち込む蜜璃ちゃん。
昔からこの顔には弱いよね、小芭内くん。
そう甘露寺邸を後にして、
もう暗くなりかけているのに気付き、
少し急ぎ目に見廻りへと走った。
良い兆候なのか、先程小芭内くんが言っていた通り、
〝嵐の前の静けさ〟とやらなのか。
もしそうなのであれば、奴との決戦も近い筈。
御館様も、勿論勘づいていらっしゃり、
私達へと伝えていた。
そうして明日から始まるのが、
〝柱稽古〟
久しぶりに聞いた、確信している声。
彼がそこまで言うのなら。
私は信じて待とう。
もう最終決戦なんだ、そこまでしても良いだろう。
柔な精神力じゃ勝てるはずがない。
最近の隊士は精神的な病を患う者が少なくない。
と、しのぶちゃんに聞いているし、私も知っている。
だからこそ、どんな時、どんな事が起ころうとも、
精神を保ち、目の前の事を遂行する、
そんな精神力を…。
いや、まぁ、…うん。そこは良い。
そう言いながら、
軽く一人の隊士くらいあるんじゃないかという大きな岩を指差す。
いや馬鹿な。まさか。
何と久しぶりだろうか!
彼との手合わせなど!
昔、柱で無かった頃は、
私が彼の隙間時間を見付けて、手合わせを願っていたものだ。
だが柱となればそうはいかない。
日々の疲れ、休む暇など無い。
だが今は少しだけ時間がある。
それに彼からのお誘いだ、断る理由がない。
そう笑って、二人で手合わせをした。
たまたま居合わせた胡蝶は、
とんでもない速さで切りあい、
その上大男と凛とした女が笑顔で殺気を出して戦っている。
その辺の人間なら腰を抜かすレベルの戦いを繰り広げていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。