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第54話

誤解と殺気
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2021/09/12 11:22
伊黒 小芭内
ち、違うんだ甘露寺!!
光の速さで蜜璃ちゃんに誤解を解きに行く小芭内くん。
甘露寺 蜜璃
だだだ、大丈夫!?
伊黒さん!その怪我…!!
伊黒 小芭内
…え、あ、あぁ、大したことはない。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
やぁ蜜璃ちゃん。えっと、ただの手合わせなんだ。喧嘩じゃないよ。
ここで誤解を解かなければ流石にこれは私が悪い。
甘露寺 蜜璃
そうだったのね…!ごめんなさい、
早とちりしちゃって…。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
大丈夫、もう終わるところさ。
さ、立てるかい小芭内くん。
と、手を伸ばすと明らかに嫌悪感をこちらに向ける小芭内くん。
伊黒 小芭内
当たり前だ。貴様なんぞの力を借りなくとも…
甘露寺 蜜璃
でも怪我をしていて危ないわ…、私で良ければ手を貸すし…その…迷惑なら…
人差し指と人差し指を合わせて、明らかに落ち込む蜜璃ちゃん。


昔からこの顔には弱いよね、小芭内くん。
伊黒 小芭内
………す、すまない。失礼する。
甘露寺 蜜璃
もうっ!そこはありがとうでしょ、
伊黒さんっ。
伊黒 小芭内
…ふっ、あぁ、ありがとう。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
わー、はは、完全に空気だね私。
さてそろそろお暇するよ。
甘露寺 蜜璃
えっ、もう少しゆっくり…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
いいや、お気遣いありがとう。
私は天元くんのお屋敷に行くから。
甘露寺 蜜璃
そう…?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
うん、ありがとう。それじゃぁね。
小芭内くん、上手くやるんだ…
伊黒 小芭内
それ以上言ったらお前を殺す………
夜霧 蘭
夜霧 蘭
殺意高~い……
そう甘露寺邸を後にして、


もう暗くなりかけているのに気付き、


少し急ぎ目に見廻りへと走った。
良い兆候なのか、先程小芭内くんが言っていた通り、


〝嵐の前の静けさ〟とやらなのか。


もしそうなのであれば、奴との決戦も近い筈。


御館様も、勿論勘づいていらっしゃり、


私達へと伝えていた。


そうして明日から始まるのが、
〝柱稽古〟
夜霧 蘭
夜霧 蘭
やぁ、行冥くん。
悲鳴嶼 行冥
…蘭か…。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
暇だねぇ。流石に始まって早々こちらに来る訳がないか。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
というか来れる人も少数だろうねぇ。
悲鳴嶼 行冥
いや、来るだろう…。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
!…そうだね。
久しぶりに聞いた、確信している声。


彼がそこまで言うのなら。


私は信じて待とう。
悲鳴嶼 行冥
…蘭は、何を強化させるつもりだ?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
精神力だよ。云わば心理的なものさ。
もう最終決戦なんだ、そこまでしても良いだろう。


柔な精神力じゃ勝てるはずがない。


最近の隊士は精神的な病を患う者が少なくない。


と、しのぶちゃんに聞いているし、私も知っている。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
一人一人やっていくつもりさ。
そもそも君の訓練を何人も潜り抜けて来るわけないだろう?
だからこそ、どんな時、どんな事が起ころうとも、


精神を保ち、目の前の事を遂行する、


そんな精神力を…。


いや、まぁ、…うん。そこは良い。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
どうせまたとんでもないのをやろうしてんだろう?大丈夫かい?
君の鉄球でとか止めてね?
悲鳴嶼 行冥
落ち着け、…簡単なものだ。
そう言いながら、


軽く一人の隊士くらいあるんじゃないかという大きな岩を指差す。


いや馬鹿な。まさか。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…え?岩動かすの?もしかして。
悲鳴嶼 行冥
あぁ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…行冥くん怖…。
悲鳴嶼 行冥
今日は俺も鍛練をする…。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
えっ何するんだい!?
私も混ぜてくれ!
筋力系以外ならお供するぞ!
悲鳴嶼 行冥
…ふっ、手合わせでもするか。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
何と久しぶりだろうか!


彼との手合わせなど!


昔、柱で無かった頃は、


私が彼の隙間時間を見付けて、手合わせを願っていたものだ。


だが柱となればそうはいかない。


日々の疲れ、休む暇など無い。


だが今は少しだけ時間がある。


それに彼からのお誘いだ、断る理由がない。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
ならば相手が必要だな?
悲鳴嶼 行冥
あぁ、頼むぞ蘭。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
任せてくれ!
そう笑って、二人で手合わせをした。


たまたま居合わせた胡蝶は、
胡蝶 しのぶ
は…?何ですかあれ…殺気丸出しの戦い…。笑顔なのが余計恐ろしい…。
とんでもない速さで切りあい、


その上大男と凛とした女が笑顔で殺気を出して戦っている。


その辺の人間なら腰を抜かすレベルの戦いを繰り広げていた。

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