第27話

助けを求める兄妹
1,312
2020/01/30 11:08
夜霧 蘭
夜霧 蘭
さて───困ったな。
今から数時間前、


道端にいる子供二人に声を掛けた。


もう既に月が上り、太陽は沈んでいた。


このいつ鬼が襲うか分からない状態で、


二人を放ってはおけなかった。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
どうしたんだい、お二人さん。
???
…あ!……た、助けてください!!
村に、村に鬼が…!!
???
たすけ…て…おねがい…
一人の兄らしき男の子は、


恐怖に手も足も、どこもかしこも震えて涙を堪え、


必死に私に訴えかけた。


その着物の裾を掴み涙をポロポロと落とす女の子。
着物は薄汚れ、足や腕に擦り傷を負っていた。


私はその子らの目線に合わせ、しゃがむ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
村に鬼…案内は出来るかい?
???
で…きます。あ、貴方は…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
名乗るほどの者じゃないさ。
それより、二人の名前は?
啓助
啓助、です…
花乃
は、はなの…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…分かった。花乃、啓助。
私を案内してくれるかい?
啓助
お、お姉さんは鬼を倒せるの…?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
あぁ、そうだよ、専門だからねぇ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
辛いだろうけど、質問に答えてくれ。
鬼に殺されてしまった人はいるかい?
そう言うと、二人は首を横に振る。
おっと、これは予想外の反応かなぁ。
殺されていない?


喰ってないのか?


それ、本当に鬼になのかい…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
他に捕まってる人、とかは?
花乃
あ…!そんちょうさんが…!
夜霧 蘭
夜霧 蘭
村長…
啓助
村長さんが、人質?に取られてるから、皆動けなくて…
啓助
お茶屋のおばちゃんは、
鬼狩り様がいらっしゃるからって…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
もう安心しなさい。
鬼狩り、は私だからね。
花乃
ほんとうに…!!?
夜霧 蘭
夜霧 蘭
本当さ、あー、あと。
君らは鬼を見たかい?
その質問にも二人は首を振る。


怯えているから、気持ちは読めないが、


嘘では無いのだと思われる。


怯えるのも無理は無い。


小さな子供が、化物の様な鬼を見たら、


震え上がって失禁してしまうだろう。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…今はどうしているんだい?
啓助
村長さんは、鬼に捕まって、
村長さんの家にいる…
花乃
みんなは、そこからはなれたいえにいるの…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
いい判断だ。だが君達は、
何故あそこにいたんだい?
啓助
本当は、
夕暮れ前に戻るつもりだったんだ…。
花乃
あのね、くだものを、
とりにいってたの!
夜霧 蘭
夜霧 蘭
そうかいそうかい、自分も怖いのに、
村の人の為に…かい。
啓助
でも、鬼狩り様が来てくれて、
本当に良かった…
夜霧 蘭
夜霧 蘭
私は通りすがりだけどね。
しばらくしたら他の隊士が来てくれるだろう。
花乃
おねえさん、おに…たおしてくれる?
涙を拭いながら、潤んだ目で裾を引っ張ってくる。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
倒すも何も、仕事だからね。
村の皆が笑って暮らせる様にね。
啓助
あっ…あの、見えている家の裏に、
村があります…!
夜霧 蘭
夜霧 蘭
そうかい、ご案内ありがとう。
さて、すぐにでもぶっ飛ばそう。
花乃
お、おねえさん、きょうはね、
おに、いないんだよ。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…?どういうことだい?
啓助
…!!そうだ、言い忘れていました…
鬼が出るのは三日に一回…
啓助
つい昨日来たばかりだから、
次来るのは三日後です…。
夜霧 蘭
夜霧 蘭
…マジか…うん、ちょっと待ってね。
嘘だろ?────そんな感じだと、


天元くんの方に間に合わないぞ…!
夜霧 蘭
夜霧 蘭
さて────困ったな。

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