ポロン
携帯が鳴った.
うちはほぼ無表情に近い表情で無言で指を動かす.
別に蓮に彼氏が出来たことが嫌なんじゃない.
でもこの時うちは蓮のことが憎くてたまらなかった.
春陽の気持ち、考えたことあんの?
なんて、ただの八つ当たりだ.
今のうちめっちゃやだ……
2人に会いたくない.
仮病、使っちゃった.
自分のために春陽と彼氏出来たばっかの蓮を二人きりにさせるなんて、春陽の気持ち考えてないのはうちの方だ.
うちが春陽のことを好きになったのは幼稚園の年長さん.
初恋だった.
(回想)
…これが私の初恋だった.
春陽は優しいから、こんなうちにもつきあってくれてた.
幼なじみのうちより蓮のことがすきってことは、うちじゃもう駄目なんだろうな…
そう思った時、
携帯が鳴った.
ポロン
うちは走った.
夢中になって走った.
会いたい、だって.
それがどんな意味かなんて考えずに、うちは浮かれていた.
好きなの.ずっとずっっと昔から大好きなの.
今日、告白しよう.
10年間ずっと秘めてた想いを
伝えたい.
春陽は泣いていた.
春陽の気持ちが痛いほど分かって、私も泣きたくなった.
春陽も、うちと同じくらい好きなんだ.
蓮のことが.
うちもだよ.
うちの方が春陽のことめっちゃ好きだよ.
うちじゃ駄目なの?
気づいたらうちは春陽のことを抱きしめていた.
春陽は私の腕からすり抜けていった.
そう言って春陽は帰った.
言わなきゃよかった.
優しい春陽が、うちのこと好きでもないのに付き合ってくれるわけない.
そういうとこが好きなのに.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!