第7話

藤原 洸希.
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2019/06/24 07:30
藤原 洸希
藤原 洸希
ねえ、高橋さんってさ.
藤原 洸希
藤原 洸希
いつも頬に絆創膏貼ってるけど傷治りにくいの?
高橋 蓮
高橋 蓮
あ…これは…
指で絆創膏に触れた際に絆創膏が剥がれてしまった.




バッ

私は焦って手で頬を隠した.
高橋 蓮
高橋 蓮
………見た?
藤原 洸希
藤原 洸希
……うん.


私は常に頬に絆創膏を貼っている.

理由は怪我をしたからではない.

私の頬には傷痕がある.

小さい頃に父から虐待を受けたときの傷だ.

私の父はお酒を飲むと手を上げるような人だった.

今はもう会っていないけれど.

私は父のこと、嫌いだったけれどやっぱり少しだけ好きだった.


藤原 洸希
藤原 洸希
…隠さなくていいよ.
藤原くんは私の手を握って、片方の手で私の傷痕に触れた.
藤原 洸希
藤原 洸希
そんなことしなくても、君は綺麗だよ.
涙が溢れた.

ずっとこの傷がコンプレックスだった.

小学校の頃から気持ち悪いと罵られ、中学校から隠すようになった.

人に綺麗なんて言ってもらうなんて、もうずっと諦めていた.

けれど私もやっぱり女だった.











私は目を瞑った.



彼は顔を傾けて、私にキスをしようとした.

その時.


ガラッ
高嶺 愛華
高嶺 愛華
なに…してるの?
藤原 洸希
藤原 洸希
愛華…
私は涙を溜めたまま振り返った.
高嶺 愛華
高嶺 愛華
…最低.
高橋 蓮
高橋 蓮
…私、帰る.
ガラッ




私なにやってんだろ.
高橋 蓮
高橋 蓮
“夏のせい 夏のせい”
高橋 蓮
高橋 蓮
“夏のせいにしたらいい”
高橋 蓮
高橋 蓮
“それでも駄目なら 君のせいにしてもいい”
全部、藤原くんのせいだ.

藤原くんは私の絆創膏を剥がしてしまった.

なのに拒絶しなかった.





私は受け入れられる幸せを感じてしまった.

もう後戻り出来ない.

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