利用されて。
悔しくて。
情けなくて。
切なくて。
自分の力で処理しきれない感情が、ポロポロと瞳から零れ落ちる。
ホント…、バカみたい。
もう男なんて信じない。大キライ。
意識が朦朧とする。
震える両足じゃ身体を支えきれなくなって、その場に崩れた。
広がっていくアスファルトにできた染みを、ぼんやりとただ見つめることしかできなくて。
瞬間…、
「…、凪沙」
蓮の声じゃない。
誰?
空耳?
聞いたことのない低い声に名前を呼ばれ。
優しく包むように抱きしめられた温もりが、落ちかけた私の意識をギリギリのところでこの場に繋ぎとめた。
「泣かない約束。だろ?」
耳元で囁かれたその声は、ダイレクトに私の鼓膜を揺さぶる。
約束……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。