第5話

5.嫌いなはず。
20
2019/02/01 13:51
ガタンゴトン……プシューッ!
電車通学の私、星宮陽向は、いつも通り7:35分の電車に乗っていた。

この時間帯は通勤ラッシュのはずだけど、この時間のこの車両はやけに空いていることを、高校生活の過去2年間で学んだのだ!!
「まもなく〇〇駅でーす。
お出口は左側です。
急な停車にご注意ください。」

聞きなれたアナウンスをなんとなく聞き流して、左側のドアを見る。
「ドアが開きま〜す」
そのアナウンスと共にドアがあき、乗車してきた人たちを目で追う。
陽向
………………!!
その中に、見知った彼の姿を見つけた。
…………?
彼も同時に気づいたようで、目が合うとこっちに歩いてきた。

おはようヒナ
陽向
…おはよう。
黒瀬司は、よく一緒にいるメンツの1人だ。普通に話したりするけど、正直私は、彼のことが苦手だった。

たまに真顔で何を考えているのか分からない。そうゆう所が、少し怖いとも思う。

みんなといる時はすごく笑顔で、得意の毒舌でペラペラと喋っているのに、1人になったとたん、真剣な眼差しになる。
なんか元気ないね。
どしたん?
陽向
………別に。いつも通りだよ。
自分でも分かるくらい、すごく態度に出てるけど、それも彼は面白がっているのだろう。
そっか。笑笑
嫌われちゃったかな〜俺。
陽向
別に、そんなんじゃないよ。笑
そう言って私は、カバンからイヤホンを取り出す。
完全に話しかけないでくださいモードだ。これをやれば、大抵の人は話しかけてこない。

我ながらいい案じゃないか…!

そう思って、スマホの音楽アプリを起動させる。
これで安心…と思った時、
ねぇ、何聞いてるのー?
司がそう言って、私の左耳のイヤホンを、自分の右耳につけた。
陽向
え……ちょ?!
なにやって、
あ〜これ知ってる!
CMでやってるヤツだよね!
陽向
うん……。
もう人の話を聞かなそうなので、素直に返事をする。
俺もこの曲すきだわぁ、
そう言って笑う彼の横顔に、
少しドキっとした。

いやいやいや!!ないない!


私は彼が嫌いなはずだから。
♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。
「まもなく〇番線に、電車がはいりまーす。」
ふわぁっふ。ねみぃ。
今日はいつもより早く起きてしまったので、何本か早い電車に乗る。
あ〜二度寝すりゃよかった。
いつも遅刻常習犯な俺は、もう登校時間なんて気にしない。
「ドアが開きま〜す」
車内に入ると、思っているより混んでいなかった。この時間楽かも…。と思った時、ふいに視線を感じて見ると…
陽向
………………!
同じ学校の制服を着た、けっこう可愛い女子。俺のよく知った顔だ。

驚いた顔をして、こちらをガン見している。

なんだよそんなに見て…笑笑
おはようヒナ
そう声をかけると、ヒナは視線をそらし、
陽向
…おはよう。
と気まずそうに言った。


2人きりになるといつもそうだ。
俺嫌われてるの?笑笑
なんか元気ないね。
どしたん?
と俺が聞くと、
陽向
………別に。いつも通りだよ。
ヒナはそっけなく言った。


もう、可愛げが無いんだから。
もっと女の子らしくしてみなよ〜

彼女に直接伝えたら、余計なお世話だと言われるだろう。
そんな姿を想像して、ついクスリと笑ってしまう。
そっか。笑笑
嫌われちゃったかな〜俺。
イジワルのつもりで俺が言うと、
陽向
別に。そんなんじゃないよ。笑
ヒナは苦笑いでそう言って、イヤホンを付けた。完全にこっちをシャットダウンだ。


そこまで態度に出すことないじゃん。

そっちがそうするなら俺だって…
ねぇ、何聞いてるのー?
俺はヒナの片耳のイヤホンを取って、自分の耳につける。

こうやってイジワルでもしないと、あっちは俺に話しかけてこない。
それに、からかうと予想以上の反応をくれるので、いつも面白い。
陽向
え……ちょ?!
なにやって、
ほらまた。大げさに驚いて。




顔を赤くして目を見張る彼女に、少しドキっとしたのは
きっと気のせいだろう。

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