ガタンゴトン……プシューッ!
電車通学の私、星宮陽向は、いつも通り7:35分の電車に乗っていた。
この時間帯は通勤ラッシュのはずだけど、この時間のこの車両はやけに空いていることを、高校生活の過去2年間で学んだのだ!!
「まもなく〇〇駅でーす。
お出口は左側です。
急な停車にご注意ください。」
聞きなれたアナウンスをなんとなく聞き流して、左側のドアを見る。
「ドアが開きま〜す」
そのアナウンスと共にドアがあき、乗車してきた人たちを目で追う。
その中に、見知った彼の姿を見つけた。
彼も同時に気づいたようで、目が合うとこっちに歩いてきた。
黒瀬司は、よく一緒にいるメンツの1人だ。普通に話したりするけど、正直私は、彼のことが苦手だった。
たまに真顔で何を考えているのか分からない。そうゆう所が、少し怖いとも思う。
みんなといる時はすごく笑顔で、得意の毒舌でペラペラと喋っているのに、1人になったとたん、真剣な眼差しになる。
自分でも分かるくらい、すごく態度に出てるけど、それも彼は面白がっているのだろう。
そう言って私は、カバンからイヤホンを取り出す。
完全に話しかけないでくださいモードだ。これをやれば、大抵の人は話しかけてこない。
我ながらいい案じゃないか…!
そう思って、スマホの音楽アプリを起動させる。
これで安心…と思った時、
司がそう言って、私の左耳のイヤホンを、自分の右耳につけた。
もう人の話を聞かなそうなので、素直に返事をする。
そう言って笑う彼の横顔に、
少しドキっとした。
いやいやいや!!ないない!
私は彼が嫌いなはずだから。
♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。+..:*♡o。
「まもなく〇番線に、電車がはいりまーす。」
今日はいつもより早く起きてしまったので、何本か早い電車に乗る。
いつも遅刻常習犯な俺は、もう登校時間なんて気にしない。
「ドアが開きま〜す」
車内に入ると、思っているより混んでいなかった。この時間楽かも…。と思った時、ふいに視線を感じて見ると…
同じ学校の制服を着た、けっこう可愛い女子。俺のよく知った顔だ。
驚いた顔をして、こちらをガン見している。
なんだよそんなに見て…笑笑
そう声をかけると、ヒナは視線をそらし、
と気まずそうに言った。
2人きりになるといつもそうだ。
俺嫌われてるの?笑笑
と俺が聞くと、
ヒナはそっけなく言った。
もう、可愛げが無いんだから。
もっと女の子らしくしてみなよ〜
彼女に直接伝えたら、余計なお世話だと言われるだろう。
そんな姿を想像して、ついクスリと笑ってしまう。
イジワルのつもりで俺が言うと、
ヒナは苦笑いでそう言って、イヤホンを付けた。完全にこっちをシャットダウンだ。
そこまで態度に出すことないじゃん。
そっちがそうするなら俺だって…
俺はヒナの片耳のイヤホンを取って、自分の耳につける。
こうやってイジワルでもしないと、あっちは俺に話しかけてこない。
それに、からかうと予想以上の反応をくれるので、いつも面白い。
ほらまた。大げさに驚いて。
顔を赤くして目を見張る彼女に、少しドキっとしたのは
きっと気のせいだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。