2人が慌てて入ってきたのは
本当に10分後だった
「おつかれさま」
私が2人分の飲物を用意しようと
給湯室に行くと
その後ろを亮平もついてきて
私を後ろから抱きしめた
「亮平?」
亮平「やだ」
困ったことに何を言っても
「やだ」としか返ってこない
2人の飲物は冷たいものがいいだろうと
冷蔵庫から出せば済むのに
「りょーちゃん、どうしたの」
優しい声で亮平の手をなでながら聞くと
耳元で小さな声で
亮平「嫉妬しました」
とつぶやいた
亮平「あなたは俺のじゃないのにごめん」
ずっと前に亮平に告白されたことがある
でも、付き合うとかはダメって言われた
俺の物って束縛しちゃうからって
「私、束縛されてもいいけどな」
亮平「部屋に閉じ込めておきたくなっちゃうからダメ」
亮平の顔を見ていると
冗談なのか本気なのかわからない
でも少し悲しそうで
思わず手をつかんでしまった
「私は、亮平だからそれを許せるって思ってるんだよ」
それだけ言って飲み物を持って
デスクルームに戻った
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!