相変わらず恵の記憶は戻っていないが、
子供達は随分大きくなった。
幸は小学生になって、習い事でバスケと習字を始めた。
学校から帰って、そのまま習い事に行くようにしている。少しでも、家で寂しい思いをする事を避けたかったから。
命生は保育園の年中で、幼稚園の迎えはお義姉さんにお願いしている。
週に2回音楽教室と体操教室に通わせて、なるべくお義姉さんには迷惑をかけないように…
仕事もなるべく当直を無くして完全復帰。
当直がある日と土日はお義姉さんに2人の世話をお願いしている。
どうにか週に一度は休みを入れてもらっているが、それもかなり厳しい。
白石は、年に一度は子供達に会いに来る。
記憶は無いけど、俺や子供達を愛していたのは確かだって。
勿論、あの卑屈な違法行為に巻き込まれた事も覚えていない。
………
今日は12月7日。幸の誕生日だ。
白石にもその事は言ってある。
昼にサプライズしようという作戦だ。
ピーンポーン
お母さん
幸はそう言って、恵に抱きついた。
俺は幸に、恵が母親だって教えていない。
恵も居づらいと思うから。
けど、幸は今、お母さんって…
ついに、あの事実を恵に話すことになってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!