第5話

伝わる
1,971
2020/05/14 05:48
相変わらず恵の記憶は戻っていないが、
子供達は随分大きくなった。
幸は小学生になって、習い事でバスケと習字を始めた。
学校から帰って、そのまま習い事に行くようにしている。少しでも、家で寂しい思いをする事を避けたかったから。


命生は保育園の年中で、幼稚園の迎えはお義姉さんにお願いしている。
週に2回音楽教室と体操教室に通わせて、なるべくお義姉さんには迷惑をかけないように…
仕事もなるべく当直を無くして完全復帰。
当直がある日と土日はお義姉さんに2人の世話をお願いしている。
どうにか週に一度は休みを入れてもらっているが、それもかなり厳しい。
白石恵
藍沢先生。
藍沢耕作
何だ。
白石恵
あの…明日、子供達に会わせてくれないかな?
白石恵
藍沢先生非番でしょ?
私、明日は午前だけだから。
藍沢耕作
わかった。
白石は、年に一度は子供達に会いに来る。

記憶は無いけど、俺や子供達を愛していたのは確かだって。
勿論、あの卑屈な違法行為に巻き込まれた事も覚えていない。
白石恵
ついでに、お昼ご飯作ろっか?
材料買ってくね。
藍沢耕作
すまない。助かる。
………
藍沢耕作
あとちょっとしたら白石先生が来るから、
ちゃんと待ってような。
藍沢幸
うん!
今日は12月7日。幸の誕生日だ。
白石にもその事は言ってある。
昼にサプライズしようという作戦だ。
ピーンポーン
藍沢耕作
白石先生来たぞ。
白石恵
お邪魔しま〜す!
藍沢幸
お母さん!!
お母さん
幸はそう言って、恵に抱きついた。
俺は幸に、恵が母親だって教えていない。
恵も居づらいと思うから。
けど、幸は今、お母さんって…
藍沢耕作
幸…
藍沢幸
お父さん、本当は白石先生、俺のお母さんなんでしょ?
藍沢幸
お父さん、白石先生の写真見て、泣いてた。
藍沢耕作
見てたのか…?
藍沢幸
当たり前だよ。もう俺、7歳なんだから!
藍沢耕作
白石。これから話すことは、まだお前も知らないことだ。
白石恵
え…私が知らないこと?
藍沢耕作
幸、命生。ちょっと2人で遊んでおいてくれるか?
俺達は寝室で話をするから。
藍沢幸
うん。
ついに、あの事実を恵に話すことになってしまった。

プリ小説オーディオドラマ