今日は、何度目かのお見舞い。
でも今日はいつもと違う。あるものを届けに行くんだ。
〜3か月前〜
私は、麻里ちゃんがいる病院に足を運んだ。
麻里ちゃんが植物人間状態になってから2ヶ月後。紫ちゃんが戻ってきたこと…それは1番嬉しくて、1番悲しかった。
ガラガラ
麻里ちゃんは、座って窓の景色を見ていた。そしてゆっくり私に首を向けた。
私の足は嬉しさで崩れて床につく。
…その直後の話だった。
〜現在〜
あれから1度も足を運んでない。まだ大人に程遠い…大人まであと4年、6年かかる私には早かったんだ。
あの瞬間は今でも鮮明に覚えている。忘れない。忘れるわけがない。
コンコン…ガラガラ…
結局3ヶ月前…あの後、ちょっと自己紹介をしてすぐに帰った。家に帰ったらボロ泣き。
そして最後の決意したんだ。
麻里ちゃんに声を届けるって。その前から決めていたのは決めていた。でも、まだ迷いがあったんだ。
私は、動画を流す。
ドナーソングだ。
口調や一人称が変わった麻里ちゃん。
3ヶ月かかったこの声、今からあなたに届けます
ずっと話してきたこと、麻里ちゃんとの日々を思い出しながら歌ったよ。私の大好きな麻里ちゃんへの気持ち。
聞いてください。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。