第32話

背中を追いかける5
29
2020/01/04 15:09
〜次の日〜
今日の天気は、最悪な天気だった。
変に生暖かい風が吹き、空は今にでも雷雨が来そうな真っ黒な色。
それでも僕は静夜さんの元へ向かう。
静夜
いらっしゃい。
暖かい声で迎えてくれる静夜さん。そんな僕達の間に、また紙飛行機が届いた。
静夜
…!?…バッ
その紙を見ると、静夜さんは驚いたような表情をして、急いで走った。
そこは…


















とても高い崖があるところだった。
裕輝
ちょっと…どうしたんですか!?
僕は追いかけながら問いかける。



ザザザザー!!!ゴロゴロゴロ…




急に強い雨と雷がなる。
それでも静夜さんは止まらない。
そういえば…
〜来る時〜
裕輝
こんにちは〜…
真志
…こんにちは…
あの人…崖に向かってた…!
真志
「頑張る」「できる」「もっと」「努力」「なんで」
…はぁ…疲れた…
静夜
待って!はぁ、はぁ…
静夜さんは男の人の肩を掴む。振り返った男の人は、やっぱりさっきの人だった。
真志
え、誰
静夜
俺は静夜。とりあえず、ここから戻ろ?
静夜
…ポロッ
静夜さんのポケットの中に入っていたさっきの紙飛行機を拾う。
『俺には生きる価値があるのか?もう、死にたい』
裕輝
…え…
真志
来んな!!!!
真志
もう、疲れたんだよ!!!どれだけ努力したって報われない!!!俺には…生きる価値があるの…?
静夜
…ゴクッ…
静夜さんも悟っただろう。
彼は、僕らでも想像しきれないほどの苦痛を味わってきたのだろう。
責任感。期待。
…でも…
裕輝
…生きる価値って、そんなに必要かな?
真志
…え?
静夜
え?
裕輝
人を「価値のあるなし」で決めつけてさ、何になるの?
裕輝
…僕だって、生きる価値なんかないかも____
でも、そんなのこれから見つけていけばいいじゃんっ!
裕輝
一緒に探そうよ。「生きる価値」を___
静夜
…そうだねっ!大丈夫。俺や…
裕輝
僕らがいるから。
真志
…ポロッ…
真志まさしさんは、メガネを外して指で涙を拭う。
真志
…ありがとう。
そうして僕らは、ひとつの命を救った。

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