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第6話

国立くんの弱点
3,411
2021/06/26 04:00
ジタバタもがく私を引っ張って、彼が玄関の扉を開けると、
国立 煌
国立 煌
あれ、菱田さん? 
玄関の外には、アイスをかじりながら帰ってきた国立くんの姿があった。
菱田 将人
菱田 将人
……煌!
春野 小町
春野 小町
国立くん!
春野 小町
春野 小町
(このタイミングで帰ってきてくれるなんて、神!!)
この安心感、ハンパない。
国立くんが神様のように見えてくる。
国立 煌
国立 煌
何やってんの?
菱田 将人
菱田 将人
見知らぬ女子高校生が、勝手に上がり込んできた。
ストーカーかもしれん
春野 小町
春野 小町
だから、ちがいますってば!
国立くん、この人誰?
国立 煌
国立 煌
菱田さんは、俺たちのマネージャーだよ
春野 小町
春野 小町
マネージャー!?
菱田 将人
菱田 将人
……煌の知り合いなのか?
国立 煌
国立 煌
うん。俺のクラスメイト。
で、うちの家事をやってくれてる。
家政婦? みたいな
菱田 将人
菱田 将人
家政婦!?
私は誰からも聞いていないぞ
国立 煌
国立 煌
兄さん達が決めた。
給料もちゃんと払ってるっぽい
菱田 将人
菱田 将人
……そんな大事なことを、なぜ私に言わなかった?
しかも、どうして女子高生を雇っているんだ?
国立 煌
国立 煌
知らねー。
翔兄が気に入ったから?
国立くんの言葉に、菱田マネージャーはため息をついた。
菱田 将人
菱田 将人
翔の女癖の悪さは、なんとかならんのか……。
とにかく、私は反対だ。
家政婦が必要だというなら、私が人選して雇うとしよう
菱田 将人
菱田 将人
……というわけで、君は解雇だ
春野 小町
春野 小町
え!?
菱田 将人
菱田 将人
聞こえなかったのか。
君はクビだ。
早くここから出ていきなさい
春野 小町
春野 小町
クビって、いきなりそんなことを言われても……。
亮さんもいっしょに、話をさせてください!
菱田 将人
菱田 将人
必要ない。
そもそもこのマンションは事務所が借りているのだから、私にも決定権はある。
……君は、解雇だ。
これ以上ここにいることは、不法侵入と見なす
春野 小町
春野 小町
そんな……
しかたなく、玄関から出ていこうとすると、目の前に現れた人影にはっとなる。
国立 亮
国立 亮
……なんの騒ぎだ?
春野 小町
春野 小町
亮さん!
菱田 将人
菱田 将人
亮……!
もうすぐ迎えに行こうと思っていたら、ずいぶん早いじゃないか
国立 亮
国立 亮
雨が降り出して、撮影が中止になったんです。
……それより、何かあったんですか?
こんな玄関先で
菱田 将人
菱田 将人
この女子高生を家政婦として雇っていると聞いたが……、
亮、本当なのか?
国立 亮
国立 亮
それは本当です。
我が家の家事をやってもらうために、俺が雇いました
菱田 将人
菱田 将人
なっ……!
なぜそんな大事なことを私に言わなかったんだ
国立 亮
国立 亮
いずれは言うつもりでしたが、
まだ雇って一月もたっていないので
菱田 将人
菱田 将人
聞けば煌のクラスメイトだというし、わざわざリスクの伴うことをしてどうする?
国立 亮
国立 亮
彼女の家事のスキルは高く、俺の負担が格段に減りました。
睡眠時間も増えて、より仕事に集中できるようになったのは事実です
国立 亮
国立 亮
仕事のパフォーマンスが上がることは、菱田さんも望むところでしょう
菱田 将人
菱田 将人
それはそうだが……、
なにも女子高生でなくてもいいだろう
国立 亮
国立 亮
三人とも彼女の作る料理を、とても気に入っています。
偏食の煌でさえ、彼女の作った料理を食べましたから
菱田 将人
菱田 将人
煌が……!?
国立 煌
国立 煌
……フン
国立 亮
国立 亮
俺たちにとって、彼女はなくてはならない存在です
春野 小町
春野 小町
亮さん……
春野 小町
春野 小町
(亮さんがそんな風に思ってくれてたなんて、すごくうれしい)
菱田 将人
菱田 将人
……そこまで言うなら、とりあえずは様子を見よう
菱田 将人
菱田 将人
しかし、今後スキャンダルや問題が起きた場合は、すぐにやめてもらう。
いいな?
国立 亮
国立 亮
そのときは……、
しかたありませんね
菱田 将人
菱田 将人
君も、今まで以上に、彼らとの接し方に気をつけるように。
家以外では絶対に彼らに話しかけず、他人のふりをするように
春野 小町
春野 小町
はい
菱田 将人
菱田 将人
煌とはクラスメイトだそうだが……、学校でもいっさい接点を持たないこと。
いいな?
春野 小町
春野 小町
わかりました
一切接点を持たないって、かなり徹底しているけど……、人気アイドルを守るためには、しかたないよね。
菱田 将人
菱田 将人
亮、せっかく早く帰ってきたなら、事務所に寄ろう。
書いてもらう書類がいくつかあってな
国立 亮
国立 亮
わかりました
そうして亮さんと菱田さんは、家を出ていった。

国立くんと二人になって、やっとはりつめていた肩の力が抜ける。
春野 小町
春野 小町
……こわかった
国立 煌
国立 煌
そうか?
春野 小町
春野 小町
国立くんと亮さんが帰ってきてくれて、本当によかった
みんながいなかったら、私はあのまま菱田さんに警察に連れて行かれたあげく、ハウスキーパーをやめさせられていたにちがいない。
春野 小町
春野 小町
(私、まだこのバイトをやめたくないもん)
せっかく亮さんが、あんな風に言ってくれたんだから。
もっと、みんなの支えになれるよう、がんばりたい。
春野 小町
春野 小町
でも、これからは学校や帰り道で、国立くんに話しかけないようにするね
せっかく少しだけ仲良くなれた気がしたけど、誰がどこで見てるかわからない。
今日みたいに一緒に帰ったり声をかけるのはやめよう。
春野 小町
春野 小町
(みんなを守るためだもんね)
一人うなずいていると、国立くんがぼそっとつぶやいた。
国立 煌
国立 煌
別に、普通にしてりゃいいんだよ
春野 小町
春野 小町
え?
国立 煌
国立 煌
菱田さんはああ言ったけど……、学校で変装した俺と話したって、誰もなんとも思わねーよ
春野 小町
春野 小町
でも……
国立 煌
国立 煌
いちいち気を遣われるのが嫌だから変装してんのに……
ぼやくように言った国立くんの言葉にはっとなる。
そういえば、芸能人だからって特別扱いされるのが嫌だって言ってたっけ。
国立 煌
国立 煌
事情を知ってるお前くらい、普通にしててほしい
そう言って、私の額を軽くコツンとした。
春野 小町
春野 小町
いたっ
見上げると、国立くんはふっと微笑んだ。
春野 小町
春野 小町
その笑顔に、私の心臓がドキッと跳ねる。
春野 小町
春野 小町
(ダメだ、私、国立くんの笑顔に……弱い)
国立 煌
国立 煌
さーて、もうすぐテストだから、少しは勉強するか
国立くんは面倒くさそうに言って、家に上がった。
春野 小町
春野 小町
そうだ、私もご飯を作るんだった
そうして、私もすぐにキッチンへと向かった。

  *   *   *   *

冷蔵庫の余り物で、夕食の焼きうどんを作っていると、
国立 煌
国立 煌
うわああああっ!!!
家中に、国立くんの叫び声が響き渡る。
春野 小町
春野 小町
な、何事!?
いそいで廊下に出ると、国立くんがあわててこっちに駆け込んできた。
国立 煌
国立 煌
出た……、出たんだよ!
春野 小町
春野 小町
出たって、何が?
春野 小町
春野 小町
まさか、ユーレイ、とか……?
まっ青な顔をした国立くんにおそるおそる尋ねると、
国立 煌
国立 煌
ゴ……、ゴキブリだよ!
春野 小町
春野 小町
……ゴキブリ?
国立 煌
国立 煌
俺は虫が大っ嫌いなんだ!
中でもゴキブリがいちばん苦手で……
国立 煌
国立 煌
くっそー、亮兄はいねーし、どうすんだよ!?
もう部屋に入れねぇ
春野 小町
春野 小町
(いつもクールな国立くんに、こんな弱点があったなんて……、意外すぎる!)
国立くんは、身震いしながら廊下に座り込んだ。
その怯えっぷりがなんだかかわいくて、思わず笑ってしまう。
国立 煌
国立 煌
おい、笑ってんじゃねーよ!
春野 小町
春野 小町
ごめん、ごめん。
ゴキブリくらい、私が退治するよ?
国立 煌
国立 煌
ええっ!? マジかよ!?
春野 小町
春野 小町
いいよ。
お給料ももらってるんだし。
殺虫剤、どこにあったっけ?
国立 煌
国立 煌
ダメだ!
大事なギターがあるから、殺虫剤はやめてくれ
春野 小町
春野 小町
うーん、じゃあ、新聞紙ちょうだい。
バシッといくから
国立 煌
国立 煌
……マジかよ、すげーな
国立くんはそう言って、亮さんの部屋から新聞紙を取ってきてくれた。
国立 煌
国立 煌
こっちだ!
早く、来てくれ!
国立くんに続いて、私も部屋に入る。
国立 煌
国立 煌
あれ? どこに行ったんだ?
春野 小町
春野 小町
(そういえば、国立くんのお部屋に入るの、初めて……)
国立くんがゴキブリを探す中、ドキドキしながら部屋を見渡す。
ソファとベッド以外は、音楽のための機材であふれている。
机には大きなパソコンとスピーカーがあって、パソコンには見たことのない黒い機械がいくつもつなげられていた。
春野 小町
春野 小町
(すごい……。これ、作曲のための機材だよね?)
国立 煌
国立 煌
あっ、いた!
やっぱり俺の大事なギターの所に……!
見れば、三本置いてあるギターの奥で、壁伝いに登っていくゴキブリの姿がある。
春野 小町
春野 小町
まかせて!
私は丸めた新聞紙を手に力を込めると、思い切り叩いた。
国立 煌
国立 煌
うわっ!
一撃で仕留めると、床に落ちたゴキブリをビニール袋に入れて、殺虫剤を吹きかけた。
念のため、もう一枚袋を重ねてから、ベランダのゴミ箱に捨てておいた。
春野 小町
春野 小町
……はい、終わり!
国立 煌
国立 煌
す、すげーな……
国立くんは、感嘆の声を上げた。
春野 小町
春野 小町
また出たら、呼んで。
これもお仕事だし
国立 煌
国立 煌
……やっぱり、俺、お前が必要だ
春野 小町
春野 小町
えっ
国立くんの言葉に、ドキッとなる。
国立 煌
国立 煌
これから夏にかけて、もっとゴキブリが出るだろ?
亮兄がいないときもあるし、これからよろしくな!
春野 小町
春野 小町
あ、そういうこと……
国立くんの言葉に、ちょっとだけ期待をしていた自分にあきれて、苦笑した。