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第4話

国立くんとハンバーグ
3,717
2021/06/12 04:00
翌日、教室に入ると、すぐに玲奈が私の席にやって来た。
玲奈
玲奈
おはよ!
昨日のSYOのインスマ、見た?
春野 小町
春野 小町
ううん、まだ見てない
玲奈
玲奈
SKY//HIGHが、冬に新しいアルバムを出すみたいで、今作ってるんだって
春野 小町
春野 小町
新しいアルバムを?
三人のスケジュールはいつもチェックしているけど、新しいアルバムのことは全然知らなかった。
玲奈
玲奈
アルバムが出れば、きっとツアーも始まると思うんだ。
私、がんばってチケット取るからさ、絶対にライブに行こう! 
小町だって、本物のSKY//HIGHに会いたいでしょ?
春野 小町
春野 小町
う、うん……
本当は昨日も会ったし、今週また会えるんだけど……、なんて口が裂けても言えない。

ハウスキーパーのバイトを始める前に、家族を含め、誰にもバイトのことは口外しないという念書を書いたのだ。
玲奈
玲奈
考えてみたら、KOHって私たちと同い年だから、きっとどこかで高校生してるんだよね?
あーあ、あんなイケメンが同じ学校にいたら、毎日がパラダイスなのに
春野 小町
春野 小町
あはは……
春野 小町
春野 小町
(……いる!
うちのクラスにいるから!)
春野 小町
春野 小町
(しかも、実物は無愛想で冷たいっていうね……)
急に昨日のことが思い出されて、心がもやっとする。
私は、チラリと国立くんの席を見たけど、そこに国立くんの姿はない。
春野 小町
春野 小町
(今日も、お休みかな)
昨日は仕事でもないのに、国立くんは学校を休んでいた。
昨日、ちらっと姿を見た時は、体調が悪いようには見えなかったけど……、
一体何をしてたんだろう。
春野 小町
春野 小町
(それじゃ、単なるサボり!?
もうすぐテストなのに)
ただでさえ仕事で学校を休みがちなのに、そのうえテストで悪い点を取ったらマズいよね?
春野 小町
春野 小町
(もし、今日もお休みだったら、ノートのコピーを持っていってあげようかな)
余計なお世話と思いつつ、今日も来る気配のない国立くんの席を見て、そう思った。

  *   *   *   *

結局、国立くんは今日もお休みだった。
私はノートのコピーを手に、国立くんの家のインターホンを鳴らしたけど、やはり誰も出ない。
春野 小町
春野 小町
(誰もいないのかな?)
しかたなく、合鍵を使っておじゃますることにした。
リビングをのぞいても人気がない。
一応国立くんの部屋の前まで来ると、中からギターの音が聞こえてきた。
春野 小町
春野 小町
(家にいたの!?)
春野 小町
春野 小町
……国立くん、ちょっといいかな
少し緊張しながらドアをノックして声をかけると、ギターの音が鳴り止んで、部屋のドアが開いた。
国立 煌
国立 煌
……何?
黒のスウェット上下に、ボサボサの髪の毛をした国立くんが、面倒くさそうに部屋から出てきた。
春野 小町
春野 小町
(うわ……、機嫌悪そう)
しかも、目の下にはうっすらとクマがあって、疲れがたまっているようにみえる。
春野 小町
春野 小町
あのね、もうすぐテストだから、お休みした分のノートのコピーを持ってきたんだ
そう言って紙の束を差し出すと、
国立 煌
国立 煌
いらねー
そう言って、国立くんはバタンとドアを閉めて部屋へ戻ってしまった。
春野 小町
春野 小町
え? いらないって……
あぜんとして、閉められたドアを見ていると、廊下の向こうから翔さんがやって来た。
国立 翔
国立 翔
あれっ、小町ちゃん、来てたの?
今日はバイトの日じゃないよね?
春野 小町
春野 小町
翔さん!
勝手におじゃましてごめんなさい
春野 小町
春野 小町
もうすぐテストなので、国立くんに授業のノートのコピーを持ってきたんですけど……、
いらないって
やっぱりよけいなお世話だったのかもと後悔していると、翔さんは笑って言った。
国立 翔
国立 翔
ごめんね、小町ちゃん。
いま、煌は新しいアルバムの曲作りで忙しくてさ。
しかも、かなり難航してる
春野 小町
春野 小町
曲作りが難航……
最近学校を休んでいたのは、曲作りのためだったんだ。
きっと、今はテストどころじゃないんだろうな。
国立 翔
国立 翔
ここ数日、煌の機嫌が悪いのはそのせいだよ。
曲作りに煮詰まると、ちょっとしたことでイライラしたり、機嫌が悪くなるんだ。
……そんなときは、ほっとくしかないんだけどね
春野 小町
春野 小町
(だから、私が譜面を片づけただけでも怒ってたんだ)
国立 翔
国立 翔
作曲は煌の仕事だから、オレたち、手伝うこともできなくてさ
国立 翔
国立 翔
煌は天才だって言われてるけど、いつも簡単に曲ができるわけじゃない。
どんな曲も、毎回苦しみながら作ってるよ
春野 小町
春野 小町
そうだったんですか……
私がいつも聴いているSKY//HIGHの曲も、こうして国立くんが頑張って作っていたんだ。
春野 小町
春野 小町
(……私には作曲の大変さはわからないけど、
私が何かしてあげられることはないのかな)
国立 翔
国立 翔
ここ数日、ずっと部屋にこもって作曲してるから、飯もちゃんと食ってるのか……
心配そうにつぶやいた翔さんの言葉に、はっとなる。
春野 小町
春野 小町
翔さん、国立くんが一番好きな食べ物は、なんですか?
国立 翔
国立 翔
え?
煌が好きなものって……、やっぱりハンバーグかな
春野 小町
春野 小町
ハンバーグ……
妹の芽依と同じだ。
意外と子供っぽい所もあるんだな。
春野 小町
春野 小町
そういえば、冷凍庫に特売で買った挽肉があるはず!
国立 翔
国立 翔
え?
小町ちゃん、今日はバイトの日じゃないよね?
春野 小町
春野 小町
今日はボランティアです!
ハンバーグだけ作っていきますね
さっそく腕まくりをした私に、翔さんがあきれたように笑った。
国立 翔
国立 翔
ボランティアって……、
小町ちゃんにはかなわないなぁ
春野 小町
春野 小町
私にできることは、これくらいですから
そう言って翔さんに笑ってみせると、私はすぐにキッチンへと向かった。

  *   *   *   *
春野 小町
春野 小町
さて、火は通ったかな
おいしそうな焦げ目のついたハンバーグをぎゅっと押して、肉汁をチェックする。
春野 小町
春野 小町
……うん、バッチリ!
たくさん食べれるように、どんどん焼いちゃおう
焼けたハンバーグをお皿に移して、次のタネをフライパンにのせていると、
国立 煌
国立 煌
……いい匂いがする。
もしかして、ハンバーグ?
匂いにつられて、ふらりと国立くんがキッチンにやって来た。
春野 小町
春野 小町
そうだよ。
焼きたてがあるけど、食べる?
国立 煌
国立 煌
ハンバーグなら、食べる
よほど好きなのか、あまりに素直な反応に、なんだかうれしくなる。
私はできたてのハンバーグにソースをかけて、国立くんに渡した。
春野 小町
春野 小町
はい、どうぞ
国立くんは無言でお皿を受け取ると、テーブルについてハンバーグを口にした。
そのとたん、
国立 煌
国立 煌
……うまい
国立くんの表情が、一瞬で明るいものに変わった。
春野 小町
春野 小町
よかった……!
うちの妹や弟も大好きなハンバーグなんだ。
妹はチーズ入りが一番好きなんだけど
国立 煌
国立 煌
チーズ入りって、めちゃくちゃうまそう!
国立くんの目がキラキラと輝く。
それが芽依の反応と同じで、思わず笑ってしまう。
春野 小町
春野 小町
まだハンバーグのタネが残ってるから、チーズ入りも作ろうか?
キッチンから問いかけると、国立くんは食べながらうなずいた。
国立 煌
国立 煌
絶対、食う!
春野 小町
春野 小町
(まるで、小さい子供みたい)
くすっと笑って、ハンバーグのタネにチーズを仕込ませていると、
国立 煌
国立 煌
……そうだ!
急に国立くんが大きな声を出して、椅子から立ち上がった。
春野 小町
春野 小町
どうしたの!?
国立 煌
国立 煌
今、ひらめいた!
すぐに……、打ち込まねーと!
そう言って、ハンバーグも食べかけのまま、国立くんは駆け足で部屋へと戻っていった。
春野 小町
春野 小町
なに、今の……
しばらくぽかんとしていたけれど、興奮した国立くんの様子からすると、
難航していた曲作りの打開策が見えたのかもしれない。
春野 小町
春野 小町
……国立くん、がんばれ
ひとり言のようにつぶやいて、私は残りのハンバーグを焼いた。
そうして、すべてのハンバーグを焼き終えて家へ帰ろうとすると、国立くんがリビングに戻ってきた。

その表情は、晴れやかで、さっきまでのとげとげした雰囲気は消えている。
国立 煌
国立 煌
ずっと悩んでたフレーズが、今、できあがった
国立くんは得意げに、ニッと笑って見せた。
その姿に、私までうれしくなってくる。
春野 小町
春野 小町
本当に? よかったね!
国立 煌
国立 煌
うまいハンバーグ食ってたら、急に思いついた
春野 小町
春野 小町
ハンバーグで?
思わず笑うと、国立くんは、心からの笑顔を私に向けた。
国立 煌
国立 煌
……サンキュ
春野 小町
春野 小町
!!
初めて見た国立くんの笑顔に、心を打ち抜かれる。
春野 小町
春野 小町
(その笑顔、ずるい)
世の女性達を虜にしてしまう笑顔を、自分だけに向けられたら。
春野 小町
春野 小町
(国立くんから、目が離せない……)
心臓の鼓動が高鳴るのを感じながら、ただ、国立くんの姿を目で追っていた。
国立 煌
国立 煌
で、さっきの続き、食べにきた。
まだある?
春野 小町
春野 小町
う、うん。すぐ温めるね
はっと我に返って、ハンバーグをレンジに入れる。
国立 煌
国立 煌
そういえば、チーズ入りも作った?
春野 小町
春野 小町
作っておいたよ。
いっしょに温めようか?
国立 煌
国立 煌
やった!
その表情は、やっぱりハンバーグを食べてるときの芽依と同じで、またまた笑ってしまったのだった。