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第1話

オカンな小町とさえない国立くん
9,809
2021/05/22 04:00
早坂先生
早坂先生
これで今日のホームルームを終える。
週末はテストに向けて準備を始めるように。
以上!
先生の話が終わって礼をすると、クラスは放課後らしいにぎやかな雰囲気に包まれた。

それぞれが部活に行ったり、帰りにどこの店に寄るかを話す声がとびかう中、私はリュックを背負って帰ろうとすると、親友の玲奈に呼び止められた。
玲奈
玲奈
小町ー!
今からみんなで新しくできた駅前のカフェに行くけど……、やっぱり今日も忙しい?
春野 小町
春野 小町
ごめんね、今日はこのまま芽依のお迎えに行くんだ
玲奈
玲奈
お迎えって、保育園?
今日は早帰りなのに、もう行くの?
春野 小町
春野 小町
うん。
今日は芽依の誕生日だから、早めにお迎えに行く約束をしちゃって
玲奈
玲奈
も~、小町ってばいいオカンだなぁ
春野 小町
春野 小町
オカン、ねぇ……
玲奈の言葉に、思わず苦笑する。
玲奈
玲奈
もちろん悪い意味じゃないよ?
毎日、学校が終わったらまっすぐ家に帰って、
家事や下の子の面倒をみてるなんて……、
小町は本当に偉いよ
春野 小町
春野 小町
まぁ、長女の私がやるしかないからね
お母さんが三年前に病気で亡くなってから、家事と兄弟の面倒をみるのは長女である私の仕事。
春野 小町
春野 小町
(中二と小四の弟に、園児の妹とくれば、私がやるしかないもんね……)
春野 小町
春野 小町
とくに妹の芽依は二歳でお母さんを亡くしてるから……。
私はお母さんにはなれないけど、
これ以上、芽依には寂しい思いをさせたくないんだ
玲奈
玲奈
泣ける家族愛だね……!
玲奈
玲奈
でも小町だって、たまには息抜きしなくちゃダメだよ?
次は小町に予定合わせるから、一緒に行こうね
春野 小町
春野 小町
ありがと、玲奈。
次は行くから
玲奈
玲奈
じゃあ、また月曜日にね!
玲奈と別れて教室を出ると、今度は廊下で先生に呼び止められた。
早坂先生
早坂先生
春野、ちょっと頼みたいことがあるんだが……
春野 小町
春野 小町
はい?
早坂先生
早坂先生
ここ数日、国立が学校を休んでいるだろう?
国立に、たまったプリントを届けてほしいんだ
春野 小町
春野 小町
国立くん……、ですか?
その瞬間、国立くんの姿が頭に浮かぶ。

目を覆うほどのもっさりとした髪の毛と、大きな黒縁眼鏡のせいで、ほとんど顔が見えない。
そのうえ、よく学校を休むから、存在感の薄い男子という印象しかなかった。
春野 小町
春野 小町
でも、どうして私に?
早坂先生
早坂先生
春野と国立は同じマンションだろう?
春野 小町
春野 小町
そうなんですか!?
早坂先生
早坂先生
知らなかったのか?
まぁ、去年引っ越してきたそうだから、会ったことはないのかもしれんな
春野 小町
春野 小町
全然知らなかった……。
国立くん、遅刻や欠席が多いから会わないのかな
早坂先生
早坂先生
う……ん。
春野、ここだけの話だが、国立は持病があってな。
大きな病院に行ったり、入院したりで休みが多いんだ
春野 小町
春野 小町
そんな事情が……
国立くんの話に同情していると、早坂先生は二十枚ほどのプリントを私に手渡した。
早坂先生
早坂先生
とはいえ、テストも近づいてきたし、俺も心配してるんだ。
このプリントを月曜日までに出せば、大目に見てやると伝えてくれ
春野 小町
春野 小町
はい。わかりました
私は受け取ったプリントをカバンにしまうと、急いで保育園へと向かった。

 *   *   *   *
春野 小町
春野 小町
遅くなってすみません!
息を切らしながら保育園のドアを開けると、保育士さんが笑顔で迎えてくれた。
保育園の先生
保育園の先生
小町ちゃん、学校お疲れさま
春野 小町
春野 小町
ごめんなさい。
思ったよりホームルームが長引いて、遅くなっちゃって
保育園の先生
保育園の先生
いいのよ。
小町ちゃんも高校生で忙しいのに、本当に偉いわ
春野 芽依
春野 芽依
あっ、お姉ちゃんが来たー!
保育園の先生
保育園の先生
さぁ、芽依ちゃん、お片付けして帰りましょうか
春野 芽依
春野 芽依
はーい!
そうして保育園を出ると、私は芽依を子供乗せ自転車に乗せた。
春野 小町
春野 小町
さーて、今日は芽依のお誕生日だから、リクエスト聞いちゃう!
晩ごはんは何がいい?
私は自転車をこぎ始めると、後ろの席の芽依に問いかけた。
春野 芽依
春野 芽依
えっとね、ハンバーグ!
チーズが入ってるのがいい!
春野 小町
春野 小町
オッケー!
海斗や琉斗も大好きだから、たくさん作らないとね!
春野 芽依
春野 芽依
やったぁ!
お姉ちゃん、大好き~!
春野 小町
春野 小町
お姉ちゃんも、芽依がだーい好き!
そう言って二人で笑い合うと、私はペダルを踏む足に力を込めた。

 *   *   *   *
春野 小町
春野 小町
今日も疲れたぁ……
夜の八時半。
やっと家事を終えた私は、部屋のベッドにダイブした。

あの後、芽依のリクエストであるハンバーグを焼いて、手作りケーキでお祝いしてたら、あっという間にこんな時間。

学校と家事に追われて、私の毎日はものすごいスピードで過ぎ去っていく。
春野 小町
春野 小町
(この調子で、あっという間に高校三年間は終わるんだろうな……)
白い天井を見ながら、ぼんやりとそんなことを思う。
私の高校生活に、夢や青春なんていう文字はない。
春野 小町
春野 小町
(けれど、私にとって家族は何より大切なものだから)
とりわけ自分が不幸だなんて思ってはいない。
でも、ちょっとだけ、恋愛や青春というものに憧れたりする自分もいる。
春野 小町
春野 小町
……なんて、あれこれ考えてもしかたないんだし、
SKY//HIGHを見て、元気を出そう!
私は手元にあったスマホを開いて、SKY//HIGHの動画を流す。
春野 小町
春野 小町
いつ見ても、かっこいいよなぁ……
SKY//HIGHは兄弟三人で構成された男子アイドルグループ。
アイドル好きの玲奈に教えてもらって、動画を見た途端、ファンになってしまった。

メンバーは人気俳優のRYO、ファッションモデルのSYO、メインボーカルと作曲担当のKOH。
すでに人気のあったRYOとSYOに、イケメンで音楽の才能のあるKOHが加わり、瞬く間に売れっ子アイドルになった。
春野 小町
春野 小町
(みんなステキだけど……、やっぱりKOHがいちばん!)
長めの黒い髪の毛からのぞく、キリッとした眉と意志の強そうな瞳。
画面越しに見ていても、その瞳の引力に引きつけられてしまう。

クールであまり笑わない彼けど、時々見せる笑顔には、どこか少年っぽさもあったりして、同年代はもちろん、年上の女性にも大人気。

けれど、KOHのいちばんの魅力は、その歌声だった。
春野 小町
春野 小町
KOHの声、本当にいいなぁ……
私は目を閉じて、KOHの声に耳を澄ませる。
世間でも高く評価されているKOHの歌声は、人を引きつけて夢中にさせてしまう何かがある。
春野 小町
春野 小町
ああ、よかった……
一曲聴き終えると、私はすっきりとした気分でベッドから起き上がる。
春野 小町
春野 小町
よし!
この調子で、一気に宿題も終わらせちゃおう!
私はご機嫌でカバンを開けると、中に入っていたプリントの束を見つけて、はっとなる。
春野 小町
春野 小町
しまった!
国立くんに渡すプリントが……!
今日は芽依の誕生日でバタバタしてて、今まですっかり忘れていた。
急いで時計を見ると、今は八時四十分。
春野 小町
春野 小町
少し遅いけど……、少しでも早く渡してあげた方がいいよね?
私はプリントを手に、すぐに家を出た。

 *   *   *   *
春野 小町
春野 小町
1005号室……、ここかぁ
最上階にある国立くんの家の前にやって来た。
春野 小町
春野 小町
(国立くん、昨日も今日もお休みだったけど、家にいるのかな。
……最悪、お家の人に渡せばいいよね?)
ドキドキしながらインターホンを押したけど、ちっとも応答がない。
春野 小町
春野 小町
留守……かな?
もう帰ろうか迷っていると、ガチャッと玄関のドアが開いた。
春野 小町
春野 小町
あの、私……
薄暗い中、家から出てきた男の人に声をかけようとしたとたん、いきなりがばっと抱きしめられた。
春野 小町
春野 小町
!?!?
私は、その広い胸の中でぼうぜんとしていた。
ふわりと香る大人っぽい香水の香り。
回された腕は力強いのに優しくて、不思議と心地よくて。
私はあらがうこともなく、そのまま抱きしめられていた。
????
????
……ずっと、会いたかった
春野 小町
春野 小町
えっ?
????
????
沙羅
春野 小町
春野 小町
沙羅……?
いきなり出てきた女の名前に、違和感を覚えてつぶやくと、
彼はあわてて私から離れて、私の顔を見た。
????
????
あれ?
……沙羅じゃない?
薄暗い中、訳もわからずに眼鏡をかけた彼を見上げると、
国立 煌
国立 煌
翔兄、家の外で何やってんだよ!?
家の中から、さらにもう一人誰かが出てきた。
国立 煌
国立 煌
誰かに見られたらどうするんだよ!?
早く家に入れ
春野 小町
春野 小町
え? え?
無理やり私たちを玄関へと引き入れようとする彼の顔を見たとたん、
春野 小町
春野 小町
(あれ? この顔……)
春野 小町
春野 小町
KOHにそっくり……
思わずつぶやくと、彼ははっとして口を覆う。
国立 煌
国立 煌
……!
春野 小町
春野 小町
まさか……、本物!?
私は驚きで目を見開いた。
毎日飽きるほど見ている動画と同じ顔が、目の前にある。
春野 小町
春野 小町
なんで、ここにKOHが!?
ビックリしすぎて大きな声を出した途端、口をふさがれた。
春野 小町
春野 小町
ふがっ!?
国立 煌
国立 煌
とにかく中に入れ。
説明は後だ
春野 小町
春野 小町
(えっ? えっ?)
訳がわからないまま、私は玄関の中へと押しこまれた。
春野 小町
春野 小町
(一体、何がどうなってるの――!?)
私の心の叫びは届かないまま、玄関のドアがバタンと閉められた。