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第10話

それは、たぶん……
3,622
2021/07/24 04:00
私たちは国立くんの部屋に戻ると、すぐにリビングへと向かった。
国立 煌
国立 煌
菱田さん、いる!?
菱田さんと亮さんはカバンを手に、ちょうど家を出ようとしているところだった。
菱田 将人
菱田 将人
何事ですか……、おや
菱田さんは、煌の後ろにいた私に気づいて、眉をひそめた。
国立 亮
国立 亮
小町……
国立 翔
国立 翔
小町ちゃん!?
一緒にいた亮さんと翔さんも、驚いて私を見る。
菱田 将人
菱田 将人
なぜ戻ってきたのですか
春野 小町
春野 小町
その……
いざ、菱田さんを前にすると、何も言えなくなってしまう。
そんな私を見て、煌が口を開いた。
国立 煌
国立 煌
……菱田さんだろ?
亮兄の腕時計を、小町のカバンに入れたのは
国立 翔
国立 翔
えっ!?
菱田 将人
菱田 将人
私を疑うとは……、心外ですね。
何を根拠に、そんな言いがかりを?
国立 煌
国立 煌
小町が翔兄を撮ってた動画に映ってたんだ。
……小町、さっきの流して
春野 小町
春野 小町
うん
私は問題の動画を再生する。
画面の中で、ソファを背に翔さんが踊り始めた。
国立 翔
国立 翔
これ、さっき小町ちゃんに撮ってもらってたやつ?
国立 亮
国立 亮
これに……、菱田さんが映っていたのか?
春野 小町
春野 小町
はい
春野 小町
春野 小町
(って、菱田さんがソファの前をゆっくり通りがかっただけだけど……)
それだけで本当に証拠になるのかと、ヒヤヒヤしながら、問題のシーンを待っていた。

すると、
菱田 将人
菱田 将人
……なによ
春野 小町
春野 小町
え?
はっと顔を上げると、菱田さんが真っ赤な顔をして、私のスマホを取り上げた。
菱田 将人
菱田 将人
なによ!
こんな動画まで撮っちゃって、本当に嫌な子ね……!
春野 小町
春野 小町
え!?
突然発せられた菱田さんのオネエ言葉に、ぎょっとなる。
春野 小町
春野 小町
菱田さん……⁉︎
国立 翔
国立 翔
ごめんね、菱田さんは感情が高ぶるとオネエ言葉が出ちゃうんだ
菱田 将人
菱田 将人
……そうよ、あたしがアンタのカバンに入れたのよ。
なんか文句あるっ?
春野 小町
春野 小町
文句というか、その……
菱田さんのあまりの変貌ぶりに、毒気を抜かれて、問い詰める気も失せてくる。
国立 煌
国立 煌
……菱田さん、何でこんなことしたんだよ?
菱田 将人
菱田 将人
決まってるでしょ?
この小娘が目障りだったからよ!
菱田 将人
菱田 将人
平凡な女子高生のくせに、三人の私生活にずかずかと入り込んで、ちやほやされていい気になって……!
菱田 将人
菱田 将人
あたしがデビュー前から、どれだけ亮たちをかわいがって、
大切に育ててきたのか知らないくせに……!!
春野 小町
春野 小町
あ……
きっと菱田さんは、亮さんたちのことが、かわいくてしかたないんだ。
三人の近くにいて、仲良くなった私のことが、気にいらなかったんだろうな。
国立 翔
国立 翔
でもさ、菱田さん、今回のことはさすがに見過ごせないよ。
小町ちゃんに盗みの濡れ衣着せるなんて、ひどいよ
国立 煌
国立 煌
俺も同感だ。
小町に謝って欲しい
春野 小町
春野 小町
みんな……
菱田 将人
菱田 将人
まぁ、ちょっとやり過ぎたとは思うけど……
ばつが悪そうにつぶやいた菱田さんに、亮さんは真剣な表情で向き合った。
国立 亮
国立 亮
……これまで菱田さんは、いつも俺たちのことを一番に考え、支えてくれる、頼れる兄のような存在だと思っていました
国立 亮
国立 亮
けれど、今回のことで、俺は菱田さんに失望した
菱田 将人
菱田 将人
亮!?
いつになく厳しい口調の亮さんに、菱田さんもたじろぐ。
さらに、翔さんや煌までもが、厳しい目つきで見ていることに気づいて、菱田さんは観念して言った。
菱田 将人
菱田 将人
……悪かったわよ
国立 亮
国立 亮
菱田さんのしたことは許されることではありませんが……、
菱田さんにはいくら感謝しても足りないほどの恩があるのも確かです
国立 亮
国立 亮
……なので、今回のことは水に流します
菱田 将人
菱田 将人
亮!
国立 亮
国立 亮
ですが、菱田さんがどう思おうと、これまで通り、小町にハウスキーパーとして来てもらいますから。
いいですね?
菱田 将人
菱田 将人
……わかったわよ
国立 亮
国立 亮
ですが、また小町を陥れるようなことがあったら……、
そのときは覚悟しておいてください
菱田 将人
菱田 将人
菱田 将人
菱田 将人
……わかったわ
菱田さんは、静かにうなずいた。
すると、亮さんは私の方を向いて言った。
国立 亮
国立 亮
……というわけだ。
小町、これからもよろしくな
春野 小町
春野 小町
は、はい!
春野 小町
春野 小町
(よかった……!
私、これからもハウスキーパーとしてここに来れるんだ)
一人、うれしさをかみしめていると、亮さんは申し訳なさそうに続けた。
国立 亮
国立 亮
俺も……、小町に謝らなければいけない。
俺がすぐに冷静な判断をできずに、小町に嫌な思いをさせてしまった
春野 小町
春野 小町
そんな……
国立 亮
国立 亮
しかし煌だけは……、考えるより先に動いていたな
国立 翔
国立 翔
だよねー。
オレ、煌が他人のために必死になって動くのを初めて見たかも
国立 煌
国立 煌
えっ?
国立 翔
国立 翔
小町ちゃんのために走っちゃってさ。
それって……、もしかして、もしかする?
翔さんがニヤニヤして煌の肩に手を回すと、煌は赤くなってその手を振り払った。
国立 煌
国立 煌
うるせーな!
いちいち勘ぐってんじゃねーよ
煌は怒って、部屋へと戻ってしまった。
春野 小町
春野 小町
あ……
国立 翔
国立 翔
煌、逃げたな
まだからかい足りないのか、翔さんは残念そうに廊下を見ていた。
国立 亮
国立 亮
しまった、菱田さん、そろそろ出ないと遅刻しそうだ
菱田 将人
菱田 将人
ああ、そうだったな。急ごう
いつのまにか、菱田さんの言葉も表情も、いつもの仕事モードに戻っていた。
国立 翔
国立 翔
さーて、オレも女の子とランチの約束があるから、行ってこよっと。
小町ちゃん、またね!
春野 小町
春野 小町
はい!
いってらっしゃい
そうしてみんなを送り出して一人になると、慣れ親しんだリビングを見渡す。
春野 小町
春野 小町
(また、ハウスキーパーとしてここに戻れたんだ)
一人、うれしさをかみしめて、はたと煌のことを思う。
春野 小町
春野 小町
(……そういえば、私、
煌にお礼を言ってない)
誰よりも、お礼を言わなくちゃいけないはずなのに。
私は、すぐに煌の部屋に向かった。
春野 小町
春野 小町
……煌、いる?
ドアをノックして声をかけると、
しばらくしてギターを持った煌がドアを開けてくれた。
春野 小町
春野 小町
ちょっとだけ、話してもいいかな?
国立 煌
国立 煌
いいよ。
……入れば?
春野 小町
春野 小町
いいの?
……おじゃまします
春野 小町
春野 小町
(そういえば煌の部屋で、ゴキブリ退治をしたっけ)
思い出して、一人でふっと笑ってしまう。

煌はいつものソファにギターと一緒に座ったから、私はカーペットの上に向かい合って座る。
煌は、うっすらと部屋に流れている音楽に合わせてギターを弾きだした。

その姿をしばらく見つめていると、
ふいに煌がギターを弾く手を止めて、私を見た。
国立 煌
国立 煌
そういえば、話って?
春野 小町
春野 小町
あのね、私、煌にお礼を言いたくて……
国立 煌
国立 煌
お礼?
春野 小町
春野 小町
あのとき、私を追いかけてくれたでしょ?
……私のこと信じてくれて、ありがとう
国立 煌
国立 煌
別に……、お礼を言われるほどのことじゃねーよ
春野 小町
春野 小町
ううん、あのとき、煌が来てくれたから、私はこうして戻ってこれたんだよ
春野 小町
春野 小町
……本当に、ありがとう
国立 煌
国立 煌
……俺が、嫌だったんだ
春野 小町
春野 小町
ん?
国立 煌
国立 煌
小町がハウスキーパーをやめるのが、嫌だった。
……だから、追いかけた
春野 小町
春野 小町
え……?
そう言って、煌はまっすぐに私を見た。
いつもと違う、煌の熱っぽいまなざしに、胸が勝手に騒ぎ出す。
春野 小町
春野 小町
煌……?
煌に見つめられて、身動きが取れなくなる。
ドキドキとうるさい鼓動が全身に響くのを感じながら、ただ煌の黒い瞳を見つめ返す。
国立 煌
国立 煌
……小町
急に呼ばれて、心臓がさらに大きく跳ねた。
春野 小町
春野 小町
は、はいっ!
国立 煌
国立 煌
一曲、聞いてくれる?
春野 小町
春野 小町
え?
……今から歌うの?
国立 煌
国立 煌
一回限りの即興曲だから、ちゃんと聞いておけよ?
春野 小町
春野 小町
即興って、いまから作るってこと!?
……すごい!
私はワクワクしながら待っていると、
煌は、ジャジャッ、と慣れた手つきでイントロのコードを弾きはじめた。
国立 煌
国立 煌
〽Hm……
煌がハミングで歌い出す。
私は、正面からじっと煌を見つめた。
春野 小町
春野 小町
(今だけは、煌を独り占めしてもいいかな)
国立 煌
国立 煌
〽 ある日、突然
国立 煌
国立 煌
〽 俺の世界に 飛び込んできた君
春野 小町
春野 小町
(えっ……?)
国立 煌
国立 煌
〽 いつの間にか
国立 煌
国立 煌
〽俺の心の真ん中にいて
国立 煌
国立 煌
〽そこから離れてくれないんだ
春野 小町
春野 小町
(この歌詞って、まさか……)
そんなはずはない、と心の中で打ち消してみたけれど、歌からあふれてくる煌の思いは、私の胸に届いて、もう煌から目が離せない。
国立 煌
国立 煌
〽それは たぶん……
まるで告白の続きを待つような気持ちで、ドキドキしながら聴いていた。
国立 煌
国立 煌
〽 たぶん……
煌はもう一度繰り返したけど、次の瞬間、ハミングに切り替えてしまう。
国立 煌
国立 煌
〽 Hm……
春野 小町
春野 小町
(あれ?)
一番大事なところが聞けずに、モヤモヤしていると、煌はジャーンと曲を終わらせてしまった。
春野 小町
春野 小町
……えっ、
それで終わり?
国立 煌
国立 煌
ああ
春野 小町
春野 小町
うそ!?
さっきの歌詞の続きは?
『たぶん』何?
思わず煌につめよると、煌は赤くなってそっぽを向いた。
国立 煌
国立 煌
俺が終わりっていったら、終わり!
そういう曲なんだよ
煌は照れ隠しにまたギターをかき鳴らすけど、どうしても納得がいかない。
春野 小町
春野 小町
じゃあ、せめてもう一回弾いて!
もう一回聴きたい!
国立 煌
国立 煌
だから、一回しか弾かないって言っただろ?
即興だから、二度と同じように弾けねーし
春野 小町
春野 小町
そんなぁ……
ぷうっと頬を膨らませていると、
国立 翔
国立 翔
小町ちゃーん!
いる?
部屋の外から翔さんの声が聞こえた。
春野 小町
春野 小町
あれ?
帰ってきたんですか?
翔さんはドアから顔をのぞかせると、
国立 翔
国立 翔
さっき、車に泥水をかけられて、ひどいことになって。
先週、クリーニングに出したチノパン、戻ってきてる?
春野 小町
春野 小町
あ……、すぐに出しますね!
煌に本当のことを聞けずじまいだったけど、しかたなく立ち上がって部屋を出ようとすると、後ろで煌がギターを弾きだした。
春野 小町
春野 小町
(あれ、さっきの曲?)
ドアの前で立ち止まると、煌が歌い出す。
国立 煌
国立 煌
〽 それは、たぶん……
国立 煌
国立 煌
〽 君のことが 好きなんだ
春野 小町
春野 小町
!!
驚いて振りかえると、そこには、いたずらっぽく笑う煌の笑顔があった。