バスケの授業が終わり、僕は
冬樹を保健室に連れて行った。
しかし、肝心な保険の先生がいない
じゃないか…
ピシャンッ…
ドアが閉まり…俺は1人
保健室の椅子に座って腫れ上がった
右手をながめた。
暇なので、窓を開けて
風に当たる。
俺が、話そうとすると牙崎が
「ちょっと待って」と言って、窓の淵に
手をかけると、軽くジャンプをして
こちら側に、乗り上げてきた。
ザッ…
俺は牙崎に、バスケでの負傷を
伝えると、いきなり体を引っ張られて
水道の前に連れて行かれた。
励行する俺に、構わず
牙崎は、俺の右手に冷たい水をかけ出した。
牙崎の横顔は、いたって
真剣そのものだった。
ふざけてるとかは、一切なくて
でも一言も言わんで、始めるから
俺もうまく対応できへん。
牙崎は、再び俺のことを
保健室に連れてくると、手を拭き
湿布を貼って、ずれないように
テープも巻いてくれた。
何を言ってるんや?コイツ…
俺だけに伝わればいい的なことを
今、さらっと言いやがって…
牙崎…お前は、俺の手なんかより
そっちの方が大事なのか…
なんか、胸がザワザワする。
ドンっ‼︎
牙崎を、突き飛ばし…普段なら言わない
ような事を言ってしまった。
うるさい!俺の気も知らんで…
なんで俺は、こんな奴好きになって
もうたんやろう…
ガラー
牙崎が俺のことを、呼び止めた声
なんか無視して、保健室から飛び出した。
俺は、どうしたいんやろう?
なんで、今…こんなに泣きそうなんやろ…
全部、俺が悪いはずやのに…
教室に戻る途中、保健室の先生を連れた
知十に会った。
大丈夫と伝え、俺は保健室に置き去りにした
牙崎のことを思い出す。
牙崎は、何も悪くない…ただ俺は…
いやなんでもない。俺は静かに教室の
椅子に座った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!