第26話

バスケに集中できない
80
2020/04/29 05:50
奏太そうたに好きと伝えた日から
2週間が、過ぎた。
明 奏太
明 奏太
おはよう、智十ちと
宇佐美 智十
宇佐美 智十
あ、奏太…おはよう
僕は、いまだ
ぎこちないというのに、

奏太の奴は、普通の態度すぎて
ついていけない。
___『体育…の時間』____
村田 冬樹
村田 冬樹
智十!パスっ
ヒュン‼︎

バスケの練習試合中だ。

僕は、冬樹ふゆきからの、パスを
受け取ると、一気に加速して

ドリブルをしながら、ゴールまで走る。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
(よし、今だ!レイアップシュート)
軽くジャンプして、左手で
ボールを支えながら、ゴールに

入れようとしたその時…
明 奏太
明 奏太
させるか!
宇佐美 智十
宇佐美 智十
そう!
パシッ‼︎

一瞬で、奏太にボールを
取られてしまった。

僕が、床に足を着ける頃には
奏太は、風のような速さで

僕の横を、通りすぎ
そのまま、シュートを決めて

得点が入ってしまった。
村田 冬樹
村田 冬樹
あちゃー
ドンマイや、智十
宇佐美 智十
宇佐美 智十
・・・
村田 冬樹
村田 冬樹
お〜い、智十?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
あ!な、何?えっと…あ
どうした…いや、なんでもない
慌てて、両手で顔を隠す。
村田 冬樹
村田 冬樹
ハハハ、どないしたん?
熱でも、あるんとちゃうか?顔赤いで
宇佐美 智十
宇佐美 智十
へ、か…顔赤い?
ごめん、ちょっと顔洗ってくるから!
村田 冬樹
村田 冬樹
おい、ええんか?
次、まだ試合あるで
宇佐美 智十
宇佐美 智十
他の奴と、代わって貰って
バタバタバタ…走りながら、
体育館横の水道まで向かう。


急いで、蛇口を捻り
顔を洗う…

心臓の音が、うるさく鳴るので
僕は、ムッと口をつぐむ。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
何してんだろう…
べつに、何もしてないか…
明 奏太
明 奏太
サボりかよ?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
へあっ!?
奏太、なんで…
急に後ろから、声をかけられ
思わずまぬけな、声が出る。

額から流れた、汗を拭うと
奏太も蛇口を捻り

顔を、パシャパシャと洗いだした。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
サ…サボりなんかじゃ
ないよ
なんだろう…
2人で、横に立っているだけなのに

妙に緊張してしまう…
変だよ、最近の僕は変だ。
キュッ

蛇口を閉めると、奏太が
僕の頭を、グシャグシャと撫でてきた。
明 奏太
明 奏太
具合悪かったら、いつでも
言えよ
明 奏太
明 奏太
俺が、運んでやるから
宇佐美 智十
宇佐美 智十
なっ!子供扱いするな!
奏太は、フイッと
顔を逸らすと
明 奏太
明 奏太
子供扱いじゃない…
恋人あつかいだ。
と、言って
再び体育館に戻って行った。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
恋人あつかい…
何だよ、それ////
奏太も、僕のこと
恋人って思っててくれたんだ。

僕だけが、こんなに意識してたら
どうしようって思った。

良かった…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
おチビちゃん、何
ニヤけてるの?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
うおっ!
きば、牙崎きばざき
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
あ〜、今
おチビちゃんのクラスは、バスケか
宇佐美 智十
宇佐美 智十
そうだけど…
あ、冬樹ならあそこに立ってて
僕が、指を指して居場所を
教えると、牙崎は目を丸くして

その後、静かに笑った。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
べつに、村田の
ことなんて、聞いてないだろ?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
そうなの?
てっきり、冬樹のこと見に来たのかと
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
なわけあるか、いくら
俺でもそんなに、暇じゃねえよ
宇佐美 智十
宇佐美 智十
ヤンキーなのに、面白いな
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
ハア、だから
俺は、もうヤンキーじゃねえって
牙崎と、話した後
再び体育館に戻ると

ステージ下の端っこに、冬樹が
座っていた。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
おーい、戻ったよって…
ん?
村田 冬樹
村田 冬樹
お〜、智十
戻ってきたな
冬樹の右手に視線を移すと
痛々しく腫れあがっていた。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
どうしたんだよ?
その右手…
村田 冬樹
村田 冬樹
いや、ちょっとバスケでな…
右手を負傷してしまってな
冬樹は、ヒラヒラと
右手を左右に動かすと
村田 冬樹
村田 冬樹
見た目は、アレやけど
全然平気…っ痛っアア
平気と言ってたわりには、
かなり激痛が走ったようで、

目から涙が、にじんでいた。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
後で、保健室行こうな…
村田 冬樹
村田 冬樹
すまん、頼むわ
気が付けば、少しの間
奏太のことを、忘れていて

この、不安定な感情を
落ち着かせることができた。

恋人になるとか、好きとか
意識する前は、何ともなかったことが

今は、照れたり、ドキドキしたりと

忙しい感情に襲われて
何とも言えない状況だった。

好きって、ある意味つらいんだな…
奏太と目が合うだけで、余計なこと

いっぱい考えちゃうし…
恋愛って大変なんだな…

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