奏太に好きと伝えた日から
2週間が、過ぎた。
僕は、いまだ
ぎこちないというのに、
奏太の奴は、普通の態度すぎて
ついていけない。
___『体育…の時間』____
ヒュン‼︎
バスケの練習試合中だ。
僕は、冬樹からの、パスを
受け取ると、一気に加速して
ドリブルをしながら、ゴールまで走る。
軽くジャンプして、左手で
ボールを支えながら、ゴールに
入れようとしたその時…
パシッ‼︎
一瞬で、奏太にボールを
取られてしまった。
僕が、床に足を着ける頃には
奏太は、風のような速さで
僕の横を、通りすぎ
そのまま、シュートを決めて
得点が入ってしまった。
慌てて、両手で顔を隠す。
バタバタバタ…走りながら、
体育館横の水道まで向かう。
急いで、蛇口を捻り
顔を洗う…
心臓の音が、うるさく鳴るので
僕は、ムッと口をつぐむ。
急に後ろから、声をかけられ
思わずまぬけな、声が出る。
額から流れた、汗を拭うと
奏太も蛇口を捻り
顔を、パシャパシャと洗いだした。
なんだろう…
2人で、横に立っているだけなのに
妙に緊張してしまう…
変だよ、最近の僕は変だ。
キュッ
蛇口を閉めると、奏太が
僕の頭を、グシャグシャと撫でてきた。
奏太は、フイッと
顔を逸らすと
と、言って
再び体育館に戻って行った。
奏太も、僕のこと
恋人って思っててくれたんだ。
僕だけが、こんなに意識してたら
どうしようって思った。
良かった…
僕が、指を指して居場所を
教えると、牙崎は目を丸くして
その後、静かに笑った。
牙崎と、話した後
再び体育館に戻ると
ステージ下の端っこに、冬樹が
座っていた。
冬樹の右手に視線を移すと
痛々しく腫れあがっていた。
冬樹は、ヒラヒラと
右手を左右に動かすと
平気と言ってたわりには、
かなり激痛が走ったようで、
目から涙が、にじんでいた。
気が付けば、少しの間
奏太のことを、忘れていて
この、不安定な感情を
落ち着かせることができた。
恋人になるとか、好きとか
意識する前は、何ともなかったことが
今は、照れたり、ドキドキしたりと
忙しい感情に襲われて
何とも言えない状況だった。
好きって、ある意味つらいんだな…
奏太と目が合うだけで、余計なこと
いっぱい考えちゃうし…
恋愛って大変なんだな…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!