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第7話

はじめての朝③
簡単に朝食を済ませ、お皿を洗い終われば
あっという間に登校するべき時間になっていた。
というわけで、寮を出て学園に向かうことになったのだけど__
絵理栖(えりす)
ククッ、
いざ進軍と行こうではないか。
道中の安全は我が保証してやるぞ……
この人は、一体何と戦っているのだろう。
……いや、別に知りたくはないけれど。
園子(そのこ)
お待たせしました、結衣さん。
それに絵理栖さんも
葵(あおい)
戸締り、済んだわ
ともあれ、寮生の生徒会長が揃って登校するようだ。
人数が少ないだけあって、お互いに割と仲がいい様子。
ちなみに菜々美先生は職員会議があるとかで、
僕たちよりもしばらく前に出かけていた。
……理事長の葵お嬢様は、出なくてもいいのだろうか?
教員ではないから関係ないのかな、とか考えていると。
葵(あおい)
結衣、迷子にならないようにちゃんとついてくるのよ
結衣(ゆい)
あ、はい……って、大丈夫ですよ。
道順なら昨日の帰り道でちゃんと覚えましたから
葵(あおい)
え……、一度で覚えたの?
あなた、凄いわね
結衣(ゆい)
そんなに複雑な道ではなかったような
絵理栖(えりす)
うむ。我も一回で覚えるの余裕だった
園子(そのこ)
葵さん、ちょっと方向音痴ですからね~。
学園の中で迷子になっていたこともありますからね
絵理栖(えりす)
理事長なのに……?
葵(あおい)
……行きましょうか
恥ずかしがるでもなく、平然とスルーしてのけるお嬢様。
眉一つ動かさない大物っぷりには、ちょっと感心した。
学園へと向かう道すがらには、
そこかしこに高そうなお屋敷や洋館が並んでいる。
いわゆる、高級住宅街というやつだ。
庶民としてはまだ慣れない空気であるけれど、
それでも街路樹がいろじゅの多い静かな街並みは悪くない。
むしろ、こうして歩いていると
気持ちがリフレッシュされるようでもあり__
結衣(ゆい)
……というか、
普通に徒歩なんですね
葵(あおい)
……?
どういう意味……?
思ったことをぽつりと呟くと、
きょとんと不思議そうに振り返るお嬢様たち。
絵理栖(えりす)
近いから、バスとか乗るような距離じゃないよ?
結衣(ゆい)
いえ、その、
お嬢様学校って、みなさんお車で送り迎えされてるものかと……
葵(あおい)
確かに、そういう子もいるけれど
園子(そのこ)
この辺りは治安もいいですし、そこまでするのは過保護というものです。
学校くらい、一人で歩いていけますよ
結衣(ゆい)
なるほど……
お金持ちとはいえ、
ちゃんとしたお家の娘さんはそういうものらしい。
園子(そのこ)
でも、確か葵さんは……
入学したばかりの頃はお車でしたよね?
葵(あおい)
……ええ、過保護な家なのかも
結衣(ゆい)
あははっ、
でもお金持ちってそういうイメージです
葵(あおい)
とにかく、運転手にはいとまを出したわ。
経費削減で
……何だかやけに世知辛いことを言われてしまった。
お金持ちとは言っても、これが現実というものなのか。
葵(あおい)
学園の経費だったのよ。
理事長の仕事でも使うからって
結衣(ゆい)
それって、
リストラしちゃってお仕事に支障とかないんですか?
園子(そのこ)
今は、用事のある時は菜々美先生が車を出して下さるんですよね
葵(あおい)
ええ……
先生の持ち物だから、文句を言われるわ
う、うーん……
しっかりしているような、図々しいような。
結衣(ゆい)
菜々美先生はお車持ってらっしゃるんですね
園子(そのこ)
通勤は徒歩ですし、
滅多に乗せて貰えませんけど
絵理栖(えりす)
フッ……
あやつは当てにならぬが問題はない。
こうして領地を視察して歩くのも支配者たるものの務め
園子(そのこ)
もう、絵理栖さん、
また勝手に街を支配して
絵理栖(えりす)
表向きは委ねておるが、真の支配者はこの魔界将軍……。
市長や総理大臣など、我が傀儡かいらいに過ぎぬのだ!
結衣(ゆい)
な、なんだってー……
園子(そのこ)
絵理栖さん、絵理栖さん!
でしたら私、市長さんにお願いしてほしいことがあるんですけどっ
絵理栖(えりす)
ふぇっ?
それは、ええと……
園子(そのこ)
傀儡なのでしたら、
絵理栖さんにお願いすれば税金の使い道も思いのままですよねっ?
絵理栖(えりす)
な、なぜ我が、
園子センパイのお願いを聞かねばならぬのだ?
園子(そのこ)
色々と貸しがあるから、でしょうか?
絵理栖(えりす)
ぅぐ……、
考えておいてやらぬこともないが……
園子さんにからかわれて、たじたじになっていく絵理栖さん。
魔界将軍、意外と立場が弱いみたいだ。
そんな気はしていた。
葵(あおい)
…………
と、会話しながら歩いていると、
葵お嬢様が難しい顔つきになっているのに気がついた。
結衣(ゆい)
あの、お嬢様……?
葵(あおい)
え……?
車の話だったかしら
結衣(ゆい)
いえ、それはもう終わりました
答えながら、もしかして何か誤解されているかもと思う。
結衣(ゆい)
あの、すみません……
別に歩くのが不満というわけでは。
余計なことを言っちゃったでしょうか?
葵(あおい)
何を言っているの、あなた
普通に首を傾げるお嬢様。
どうやら勘違いだったらしい。
結衣(ゆい)
すみません、お嬢様がぼんやりしていらしたので……。
どうかなさいましたか?
葵(あおい)
ええ……
すーすーしているの
結衣(ゆい)
へ……?
どういうことですか?
言っている意味が分からず、説明を求めると、
葵(あおい)
スカートの中、
いつもより涼しい気がするの
__ぴたり、と僕と園子さん、絵理栖さんの足が止まる。
園子(そのこ)
あのぉ、葵さん?
もしかしてそれって……
葵(あおい)
私、パンツを穿いていないらしいわね
絵理栖(えりす)
らしいって、自分のことだよねっ!?
葵(あおい)
パンツ……。
制服に着替えるとき……
脱いだ記憶はあるけど、穿いた記憶がないわ
園子(そのこ)
すみません、ちょっと失礼しますね?
その場に軽くかがんで、
ちらりと葵お嬢様のスカートをめくる園子さん。
……さりげなく目を逸らす。
園子(そのこ)
本当に穿いていませんっ!
絵理栖(えりす)
うわー……
園子(そのこ)
寝ぼけて穿き忘れてきたんですね……
結衣(ゆい)
……どうするんですか?
葵(あおい)
もうあまり時間がないわね。
少しは寒いけれど、今日はこのままでいいわ
結衣(ゆい)
いやいや、駄目ですって!
見えちゃったらどうするんですかっ
葵(あおい)
どうするって、
別に何も問題は……
結衣(ゆい)
問題大アリですからっ!
いくら女子校だからって、それに__
何よりも僕が……!
気になって落ち着かない!
結衣(ゆい)
お願いします、走ればきっと間に合いますから……!
すぐに戻りますよっ!?
葵(あおい)
……走るの?
結衣(ゆい)
嫌そうにしないで下さい!
とにかく、決めたからにはさっさと行動に移るべきだ。
結衣(ゆい)
ボクが連れて行きますので。
園子さんと絵理栖さんは先に行って下さい
園子(そのこ)
……いいんですか?
結衣(ゆい)
はい、二人まで遅刻しちゃうかもしれませんし。
ほら、お嬢様、行きますよっ!?
葵(あおい)
仕方ないわね
結衣(ゆい)
誰のせいだと思ってるんですかぁぁ~~~っ!
……とにかく。
葵お嬢様の手を掴んで、大急ぎで引き返すのだった。





__
絵理栖(えりす)
ホントに行っちゃった
園子(そのこ)
ふふっ、
結衣さんって、何だか__
絵理栖(えりす)
世話好き……
いな、あれはお節介と言うのであろうな
園子(そのこ)
すっごくいい人みたいで、良かったです♪
絵理栖(えりす)
ククッ、
やはり我が配下に加えたいものよ……

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春香かなた
春香かなた
『心温まる優しいプリ小説』を趣旨に執筆しています。 〇投稿作品 『僕のシークレット!(第20回プリコン作品)』【全51話】 『雪の降る街へ。第一部「青春編」(運営のおすすめ作品掲載)』【連載中】 作品の感想など、コメントをしてくれると嬉しいです。 〇七つのかなたルール ●『媚びない』 ●『手を抜かない』 ●『未完にしない』 ●『オリジナルのみ執筆』 ●『バッドエンドにしない』 ●『鬱・病み・グロテスク表現はNG』 ●『心温まる優しい作品を執筆する』 これら7つを厳守してプリ小説をやっています。
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