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第3話

お嬢様と秘密のプロローグ③
それから、何週間かの時間が流れて__
結衣(ゆい)
……来てしまった
おばあちゃんの葬儀や遺品の整理を終えて、
わずかな荷物をまとめ、僕は校門の前に立っている。
今まで住んでいた街からは、新幹線で来るような距離。
目の前にあるのは、上品なたたずまいの校門と、
奥には歴史と伝統を感じさせる、木造の校舎。
あの『葵お嬢様』が理事長をしているという学園だ。
すでに僕は、書類と一緒に送られてきたこの学園の制服に身を包んでいるのだけど……。
結衣(ゆい)
えっと……
流石に少し、気後れしていしまう。
如何いかにも上流階級な空気感に気圧されているものもある。
けれども、それだけが理由というわけでもなくて__
結衣(ゆい)
……どうしてこうなった
そう、目下の最大の問題点は……。
菜々美先生(ななみせんせい)
あー、いたいた。
お前が結衣?転校生の
結衣(ゆい)
あ……はい!
結衣と申しますっ
校門から出てきた、たぶん先生とおぼしき女性。
菜々美先生(ななみせんせい)
ん、案内すっから
めんどくさそうにそれだけ言って、
さっさと戻って行こうとする。
菜々美先生(ななみせんせい)
あん?
何ぼーっとしているんだ
結衣(ゆい)
あ、すみません……
お名前をうかがっても?
菜々美先生(ななみせんせい)
ああ、そういや自己紹介してなかったな……
めんどくさ
名前を言うくらいで面倒がられても。
もしかして歓迎されていないのかと、不安になる。
菜々美先生(ななみせんせい)
ナナミナナミ
結衣(ゆい)
へ……?
菜々美先生(ななみせんせい)
あたしの名前。
名字が七海ななみで名前が菜々美ななみ。ツッコミ禁止な。
ここの教員で、担当科目は数学。以上
どうやら単に、自己紹介が好きではないという雰囲気。
素っ気なくて気怠きなまそうな口調を見るに、
純粋に普段からこういう態度なのかも知れないけれど。
菜々美先生(ななみせんせい)
んじゃ、付いてきて。
理事長が待ってっから
それ以上の言葉を交わすような空気でもなさそうで、
大人しく菜々美先生の後を追いかけることにした。














__
菜々美先生(ななみせんせい)
入んぞー
理事長室らしきドアをノックして、
返事も待たずに開けている菜々美先生。
……想像していてた上流階級にあるまじき緩さだ。
ともあれ、先生の後に続いて理事長室の中へ。
直後、奥の机に向かっていた人物が立ち上がり、
部屋の中央へ歩み寄ってくる。
葵(あおい)
案内ご苦労様……菜々美先生。
結衣さんも、よく来てくれたわ
結衣(ゆい)
はい、お久しぶりです……
葵お嬢様
この学園の制服を着ているということは、
本当にまだ学生で理事長をしているということか。
それってアリなのかなぁ……と、ちょっと疑問に思う。
……いや、今はそんなことよりも。
菜々美先生(ななみせんせい)
他に用事は?
葵(あおい)
大丈夫よ……
結衣さんと話があるから、菜々美先生は下がって頂戴
菜々美先生(ななみせんせい)
あいよ、かしこまりー
葵お嬢様の指示で、すぐに菜々美先生は退出していった。
で、部屋の中にはお嬢様と僕の二人きりになったわけだが。
葵(あおい)
改めて、こんにちは、結衣さん。
当校の理事長をしています、星空葵です。
礼儀正しく、けれど何を思っているのかつかめない無表情で、
葵お嬢様は会釈えしゃくした。
結衣(ゆい)
どうも、結衣です。ええと……
挨拶の文言もんごんに、一瞬戸惑ってしまう。
結衣(ゆい)
ご、ごきげんよう……?
葵(あおい)
……ふふっ。
慣れない言葉遣いをしなくても構わないわ
思いっきり、滑ってるらしい。
結衣(ゆい)
では、あの……先日はありがとうございました。
祖母にお線香を上げて下さって
葵(あおい)
生前のばあやにはお世話になったもの。
当然の事よ
結衣(ゆい)
はい……
でも、きっと祖母も喜んでいます。
というか、その節は何のおかまいも出来なくて
葵(あおい)
気にしないで……
後で、お墓の場所を教えてもらえるかしら
結衣(ゆい)
はい……
是非ぜひ、会いに行ってあげて下さい
そんな、社交辞令的なやりとりを交わしながら__
どうやって本題を切り出そうかと、考え込む。
葵(あおい)
……何か、言いたそうな顔をしているわ
結衣(ゆい)
ええと、その……
言いたいことを言っても?
葵(あおい)
どうぞ?
よし、こうなったらもう……全力でツッコもう。
覚悟を決めて、小さく息を吸い込む。
結衣(ゆい)
あのですね、お嬢様……
葵(あおい)
なにかしら
結衣(ゆい)
これってあんまりじゃないですか!?
どうして女子の制服なんですか!
葵(あおい)
どうしてとも言われても、女子校だもの。
当然だわ
結衣(ゆい)
聞いていませんでしたよ!?
女子校だなんて!
葵(あおい)
校名を見れば分かるでしょう?
結衣(ゆい)
それはそうですけどぉ~~
星空女子学園ほしぞらじょしがくえん
それがこの学校の校名だ。もちろん女子校である。
規模は小さいが、この辺りの地方では長い伝統を誇る有名なお嬢様学校……ということらしい。
よその地方の女子校事情なんて詳しいわけでもなかったから、
僕は編入の書類が送られてくるまで知らなかった。
葵(あおい)
何をがっかりしているの?
女子校だと問題があるかしら
結衣(ゆい)
大ありですっ!
僕は男ですよ!?
葵(あおい)
…………
葵(あおい)
そうだったの?
どちらにも取れる名前だったから、気が付かなかったわ
結衣(ゆい)
絶対嘘だっ!
この前会ったときは『結衣くん』って呼ばれました!
葵(あおい)
細かい事はいいのよ
結衣(ゆい)
全然細かくないですし!
これ以上に重要な問題がありますか!
葵(あおい)
文句の多い男はモテないらしいわよ
結衣(ゆい)
やっぱり男だって知っていたんじゃないですか!
葵(あおい)
分かったわ、降参。
知っていたことは認めるわ
結衣(ゆい)
それはそれで問題が根深くなりますけどねっ
分からない。お金持ちの考えることは本当に分からない。
葵(あおい)
……それでもやっぱり、何か問題があるかしら
結衣(ゆい)
むしろ問題しかないと思いますが!?
葵(あおい)
でも、今は全く男に見えないわ。
ぜんぜん平気だと思うのだけど……
結衣(ゆい)
どういう意味ですかぁ~~っ
葵(あおい)
どうもこうも、言葉通りよ?
きょとんと首を傾げながら、
お嬢様は女子制服に身を包んだ僕の全身を眺める。
葵(あおい)
制服、とても似合っているわ。
ぶらぼー
結衣(ゆい)
全く嬉しくないんですが……
葵(あおい)
でも、大丈夫そうとは思っていたけど、予想以上
興味深そうに、葵お嬢様はつかつかと僕のすぐ側まで近寄ってくる。
結衣(ゆい)
あ、あの……お嬢様?
葵(あおい)
……すごいわね、あなた。
足とかも細くて綺麗
結衣(ゆい)
そ、そう……ですか?
葵(あおい)
男の子がスカート穿いているのに、
全く違和感がないなんて。不思議だわ
結衣(ゆい)
ぅ……ぅう……
葵(あおい)
……スカート、穿き慣れているの?
結衣(ゆい)
そんな趣味はありませんっ
葵(あおい)
でも、部屋に入ってくるときも、
歩き方が様になっていたわ
結衣(ゆい)
それは、おかしくないように歩き方とか練習しましたから
葵(あおい)
……女装、すでに受け入れているように思うのだけど
結衣(ゆい)
違います!
僕はただ、お嬢様に直接文句を言おうと思って__
葵(あおい)
文句を言うのに、スカートを穿く必要が?
結衣(ゆい)
女子校に男の格好のまま入るわけにはいかないじゃないですか。
乙女の園ですよ?
葵(あおい)
教職員や、出入りの業者に、普通に男性もいるけれど……
結衣(ゆい)
そんな現実は聞きたくないです。
女子校で、しかもお嬢様学校なら男子禁制であって下さい
葵(あおい)
あなた、女子校にどんな幻想を持っているの……
結衣(ゆい)
いいじゃないですか。
とにかく、男が女子校に通うとか、流石にまずいですよこれ
けれど、そんな僕の非難を、
葵お嬢様は聞いているのかいないのか__
葵(あおい)
中は、どうなっているのかしら……
__ぴらっ
結衣(ゆい)
って、うわわっ!?
何してるんですかぁっ!
葵(あおい)
スカートをめくっているわ
結衣(ゆい)
困りますお嬢様っ!
いやぁぁーーーっ!?
葵(あおい)
……女の子みたいな悲鳴をあげるのね
結衣(ゆい)
いいから止めて下さいよぉぉ……っ!
けれど、抗議の声はものの見事に無視された。
葵(あおい)
なるほど……ドロワーズ。
大丈夫、これならスカートがめくれても分からないわ。太鼓判たいこばん
結衣(ゆい)
押さなくていいですし!
葵(あおい)
でも、わざわざ用意したの?
気合の入った女装ね
結衣(ゆい)
違いますって!
これはただ……っ
そう、下半身がスカスカで落ち着かなかったから、
何か穿かざる得なかっただけであって。
べ、別に『どうせなら何かヒラヒラのを』とか迷ったりなんてしていないんだから!
葵(あおい)
あとは、そうね……
ブラもつけて胸に何かつめれば完璧
結衣(ゆい)
それだけは断固拒否です!
って、だからそういう問題ではなくてですねっ!
葵(あおい)
そうね……
胸の小さい子なら他にいくらでもいるから大丈夫でしょう。
このまま女の子と言い張ればきっと誰も疑わないわ
結衣(ゆい)
ぅう、バレなければいいという話ではなくてですねぇ……
葵(あおい)
つまり、バレない自信はあるのかしら
結衣(ゆい)
それは……ぅうっ
……非常に不本意ながら、なくはない。
男子に対しては背も低めだし、昔から『すごい女顔』とか『クソ可愛い』とか言われまくっていたりいなかったりするもので……。
結衣(ゆい)
それよりも、男が女子校に通うこと自体がですねっ
葵(あおい)
理事長が大丈夫と言っているの。
バレなければ問題ないわ
結衣(ゆい)
手続きとか、そう言う面ではそうなのかも知れませんけどっ
葵(あおい)
なら、他には何も問題はないと思うのだけど……
結衣(ゆい)
倫理的な問題がですね……!
どうしてそんなに女子校に通わせたいんですかぁっ
あくまで『無関係』と言い張るお嬢様に、困り果ててしまう。
__けれど。
葵(あおい)
……どうしてと言われると、それは

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春香かなた
春香かなた
『心温まる優しいプリ小説』を趣旨に執筆しています。 〇投稿作品 『僕のシークレット!(第20回プリコン作品)』【全51話】 『雪の降る街へ。第一部「青春編」(運営のおすすめ作品掲載)』【連載中】 作品の感想など、コメントをしてくれると嬉しいです。 〇七つのかなたルール ●『媚びない』 ●『手を抜かない』 ●『未完にしない』 ●『オリジナルのみ執筆』 ●『バッドエンドにしない』 ●『鬱・病み・グロテスク表現はNG』 ●『心温まる優しい作品を執筆する』 これら7つを厳守してプリ小説をやっています。
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