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第8話

転校初日!①
一時限の授業が終わって、休み時間__
結衣(ゆい)
うぅ……、
初日から遅刻とか……
教科書を閉じて、机の上にぐっだりと伏せてしまう。
結局あの後は、寮に戻ってお嬢様のパンツを探したりしていたから、朝のHRホームルームには間に合わなかった。
それもこれも、全く整理整頓のされていなかったお嬢様のタンスの中がいけない……あれは酷かった。
帰ったら、全部ちゃんと畳みなおして分類しないと……
とは思うのだが、男の僕が手を出してもいいものだろうか。
とにかく、お嬢様の走るのが案の定遅かったこともあり、
再び寮を出て途中からはもう遅刻は諦めたのだけど__
朝から走って疲れたというよりは、精神的にぐっだりだ。
同級生A
ね、ねぇ……
どうする~?
同級生B
こういう時は……
杏子さん、お願いっ
__と、こちらをチラチラ見ている多数の視線に気がついた。
うん、まあ……転校生だもんね。
こういう空気になるよね。
杏子(あんず)
えーっと……
あの、おはよう結衣さん
こちらから話しかけてくるか迷っていると、
隣の席の女の子が立ち上がり、声を掛けてくれた。
結衣(ゆい)
お、おはようございます。
ええと……
杏子(あんず)
あたし、杏子。
杏子って呼んでね
結衣(ゆい)
杏子さん、ですね。
ばっちり覚えました。
お隣同士よろしくお願いしますね
杏子(あんず)
うん、こちらこそよろしくねー♪
にぱっと元気に笑って、そのまま手を差し出してくる。
結衣(ゆい)
え……? 
え?
杏子(あんず)
ほら、握手
断ったら、友好を望んでいないように思われるかも。
結衣(ゆい)
……どうも
ちょっとだけ緊張しながら、杏子さんの手を握り返す。
女の子の、小さくて柔らかい手だった。
杏子(あんず)
にひひ、これで友達ねっ♪
結衣(ゆい)
あは……
ありがとうございます
どうやら、すごくフレンドリーな人みたいだ。
杏子(あんず)
にしても、結衣さんの手って、小さくて柔らかくて。
なんか可愛いねー
結衣(ゆい)
そ、そうですか……?
あんまり嬉しくない……
少しは疑問を感じて欲しい。
杏子(あんず)
っと、それよりも。
みんながすっごい気になってること、質問していい?
結衣(ゆい)
え……?
なんでしょう?
杏子(あんず)
さっき、葵さんと一緒に遅刻してきたでしょ?
なんで?
結衣(ゆい)
ああ……その件ですか。
実は同じ寮に住むことになったんですけど、今朝は色々とありまして
武士の情けで、お嬢様がパンツを穿き忘れたことは言わないでおく。
杏子(あんず)
えっ、じゃあ第二寮なんだ?
園子さんとも一緒ってこと?
園子(そのこ)
はい、一緒なんですよ~♪
そしていつの間に来ていたのか、園子さんも話に入ってくる。
杏子(あんず)
そうなんだ……へぇ
結衣(ゆい)
今日はお嬢様の用事で別々に来たんですけど……
園子(そのこ)
明日からは一緒に登校しましょうね、結衣さん
結衣(ゆい)
はい。
皆さん仲良くして下さって、嬉しいです
杏子(あんず)
第二寮……
園子さんと一緒か……
何故だか杏子さんは、ちょっと困っているような顔つきだ。
杏子(あんず)
ねえ、結衣さん
結衣(ゆい)
はい
杏子(あんず)
まあ頑張って。うん
同情するように言いながら、ぽんと肩を叩かれた。
結衣(ゆい)
頑張るって、何をですか?
杏子(あんず)
だって園子さんと一緒に住むんでしょ?
園子(そのこ)
ちょっと杏子さんっ?
どうして励ます必要があるんですかっ
杏子(あんず)
結衣さんもきっとそのうち分かるよ、ファイト♪
園子(そのこ)
変な印象を植え付けようとしないで下さいっ!
もぉぉ、杏子さんって意地悪なんですからっ
結衣(ゆい)
ええと……
よく分からないけれど、園子さんって別に住んでいて迷惑そうな人じゃないよね?
つまり園子さんと杏子さんは、冗談を言ってからかったり出来るくらい仲が良いってことだろう。
杏子(あんず)
まぁ園子さんのことは頑張れとしか言えないけど、
他に困ったことがあれば何でも相談してね
園子(そのこ)
だからそういう誤解を招くような言い方しないで下さいよぉっ!
結衣(ゆい)
あはは……。
あ、それじゃあ早速なんですけど、教えて頂きたいことが……
杏子(あんず)
なになに?
結衣(ゆい)
そのぉ……
おトイレ、どこでしょう?
実は授業中から微妙に我慢していたので、
このまま時間が無くなってしまうと次の授業が大ピンチだ。
杏子(あんず)
廊下出て左だけど……
よし、折角せっかくだから一緒に行こうっ
結衣(ゆい)
えっ、それは__
園子(そのこ)
私もご一緒していいですか?
別にしたいわけではないですけど……
杏子(あんず)
あたしも平気だけどね。
連れション連れション♪
結衣(ゆい)
いえっ!そんなご迷惑をお掛けするわけにはっ!
一人で行けますから、失礼しますっ!
杏子(あんず)
あ、ちょっと結衣さんっ?
こればかりはきっぱりと断って立ち上がり、
慌てて教室から逃げ出した。








__
結衣(ゆい)
はぁ……、悪いことしちゃったかな
折角、親切で案内を申し出てくれたのに。
でも仕方がない。今の僕が女の子だと思われている以上、
あのままだと女子トイレに連れ込まれる羽目に__
結衣(ゆい)
あ、あれ……?
そしてトレイのすぐ近くまで来て、僕はその場で立ち尽くす。
……うん、冷静に考えてみれば当たり前だよね。
女子校なのだから、ここには女子トイレしかない。
結衣(ゆい)
どうすれば……?
途方に暮れてしまう。そして尿意は迫ってくる。
葵(あおい)
……結衣、なにをしているの?
結衣(ゆい)
あっ、葵お嬢様……!
葵(あおい)
一人で教室を出て行くから、
様子を見に来たのだけど……
救世主現る!
僕の正体を知るお嬢様にしか、これは尋ねられない。
結衣(ゆい)
あの……
職員用の男子トイレとかありますか?
葵(あおい)
それは、あるけれど……
結衣(ゆい)
どこに……!?
葵(あおい)
あるけれど、
今のあなたがそこに入るのは変だと思うわ
結衣(ゆい)
そう言われても、
女子トイレに入るわけには……
葵(あおい)
……個室なのだから、見えないわ。
大丈夫
結衣(ゆい)
そそ、そういう問題ではないかとっ
尿意とは別の意味でもモジモジしながら、助けを求める。
葵(あおい)
……男子トイレに入るのは、やっぱり駄目
結衣(ゆい)
ではどうしろとっ!?
葵(あおい)
ペットボトル、使う?
結衣(ゆい)
それは絶対に嫌ですっ!
葵(あおい)
なら女子トイレに入るしかないでしょう……
ああ、気持ちは分かるけど面倒そうな顔をされている……。
結衣(ゆい)
うぅっ、それでもっ!
女子トイレって使い方とか分からないですし……!
葵(あおい)
何も変わらないと思うのだけど……。
いいわ、怖いなら私も一緒に行ってあげる
結衣(ゆい)
へ? 
あの、ですが__
葵(あおい)
いいから、ついてきなさい。
結衣(ゆい)
わっ、ちょっと、お嬢様っ!?
焦れったくなったのか、
葵お嬢様はぐいぐい僕の腕を引っ張ってくる。
葵(あおい)
必要な事なのだから、諦めなさい
断固拒否するべきかも知れないけれど、このままでは目立ってしまうし、それに尿意もそろそろ限界が……。
結衣(ゆい)
ぐすっ、わかりました……
葵(あおい)
泣くほどのことではないでしょう……
呆れ顔のお嬢様に引っ張られ、僕は人生初の女子トイレ内部へとドナドナされていくのだった。



そして__





葵(あおい)
何か、分からないことはある?
トイレの個室に押し込まれ、
隣の個室から壁越しに話しかけてくる葵お嬢様。
結衣(ゆい)
い、いえ、
大丈夫だと……思います
幸いにも他の個室は誰もいないみたいだから、
こうして話していても今のところは大丈夫みたいだ。
結衣(ゆい)
うぅ……
本当にいいんでしょうか……
葵(あおい)
あなたが何を気にしているのか分からないのだけど
結衣(ゆい)
お嬢様がパンツを脱ぐ音とか、
普通に聞こえました……
というか、隣で脱いでるの?なんで?
僕がいるのに普通に用を足すつもりなのこの人?
いや、まあ、昨夜は目の前でペットボトルにした人だから、
今さらなのかもしれないけれど……
結衣(ゆい)
そ、それに、
前の人のぬくもりがまだ残ってるみたいで
葵(あおい)
それに何の問題があるの?
結衣(ゆい)
お嬢様は割とデリカシーに欠けていますよねっ!?
まさか、こんな台詞を女子に向かって言う日が来ようとは。
逆だろ普通は!
葵(あおい)
それはそうと、女子トイレと男子トイレって、
何か違ったりするのかしら
ちょっと不思議そうに、好奇心を垣間かきま見せながら尋ねてくる。
結衣(ゆい)
ええと、そうですね……。
個室しかないところとか、あと謎のゴミ箱があるところとか
葵(あおい)
生理用品、流したら詰まるから……。
あなたには関係ないのね、そういえば
結衣(ゆい)
はぁ……
なるほど……
葵(あおい)
出来れば、興味本位で漁るのは止めてあげて欲しいわ
結衣(ゆい)
しませんよっ!?
ボクを何だと思っているんですか!?
憤慨ふんがいしながら、そっち系の知識ももう少しちゃんと覚えておくべきかと考え__
とてもかなしい気分になってくる。
葵(あおい)
ところで、男の人って小さい方は立ってするのよね?
音でバレたりしまわないかしら
結衣(ゆい)
そ、そうですね……
必ず座ってするようにします
葵(あおい)
それでも、何か違う音に聞こえたりしないかしら……
女の子の場合はこうなのだけど
そして、隣の個室から聞こえてくる何かの水音。
結衣(ゆい)
って、おおおお嬢様っ!?
隣で!ホントにおしっこしてるっ!?
なんの躊躇ためらいもなくっ!少しは躊躇ってよっ!
葵(あおい)
ふぅ……、
それじゃ、結衣もしてみて
結衣(ゆい)
出来ませんよっ!
耳をまさないで下さいっ!
葵(あおい)
だけど、一度確認してみないと……
結衣(ゆい)
むしろお嬢様の方がどうして平気なんですかぁっ!
ちょっとは恥ずかしいとか思わないんですかっ!?
葵(あおい)
別に……
結衣は恥ずかしいの?
結衣(ゆい)
普通は!
女の子の方が恥ずかしがるんですっ!
葵(あおい)
そういうものなのね……。
なるほど、あなた、きちんと女の子になりきっているみたいね
結衣(ゆい)
お嬢様の女子力が低すぎるだけですっ!
どうして……どうして男の僕がこんな説教をしているんだ。
葵(あおい)
でも、今だけなら男の子に戻ってもいいわよ?
あなたのおしっこの音も、聞いてみたいわ
結衣(ゆい)
変態ですか!
お断りですよっ!?
葵(あおい)
聞いてみたいのだけど……
そんなに食いつかれたら余計に恥ずかしい……!
でも我慢もそろそろ限界だよ!
結衣(ゆい)
あ……、そうだっ、
確かこういう時って
ふと思いついて、
トイレの水を流しながらこらえていた尿意を解放した。
……ふぅ、なんとか間に合ったか。
葵(あおい)
それ、水道代がもったいないから禁止したいのだけど……
結衣(ゆい)
お嬢様学校とは思えないセコさですね
葵(あおい)
……まあ、いいわ。
あ、終わった後なのだけど、紙を使うふりをした方が良いかも
結衣(ゆい)
それはそうですね……すみません
さっさとパンツを上げようかと腰を浮かした瞬間、
お嬢様に指摘されてトイレットペーパーに手を伸ばす。
葵(あおい)
男子って紙を使わないらしいけど、汚くないのかしら
結衣(ゆい)
お嬢様に言われると、
何故か非常に不本意なのですが
昨夜の光景を思い出すと、少しだけ反論もしたくなる。
葵(あおい)
……拭き忘れるのは、たまによ
結衣(ゆい)
たまにでも忘れないで下さいっ!
あとパンツも穿き忘れちゃ駄目ですよっ!?
葵(あおい)
あなた、会話をするたびにお説教が増えていくわね……
結衣(ゆい)
お嬢様にツッコミどころが多すぎるんですよぉ!
それでも、こうしてトイレの中まで付き合ってくれるのは、
僕のことを助けに来てくれたから……だよね。
困っていたのは事実だし、文句ばかりではなく
少しは感謝もしないと……などと思ったのもつかの間。
葵(あおい)
それにしても、
いちいちトイレに来るのは、やっぱり面倒だわ
結衣(ゆい)
そこは当然のこととして受け入れてくださいっ!
用を足すだけで、お説教のタネは尽きないのだった。

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春香かなた
春香かなた
『心温まる優しいプリ小説』を趣旨に執筆しています。 〇投稿作品 『僕のシークレット!(第20回プリコン作品)』【全51話】 『雪の降る街へ。第一部「青春編」(運営のおすすめ作品掲載)』【連載中】 作品の感想など、コメントをしてくれると嬉しいです。 〇七つのかなたルール ●『媚びない』 ●『手を抜かない』 ●『未完にしない』 ●『オリジナルのみ執筆』 ●『バッドエンドにしない』 ●『鬱・病み・グロテスク表現はNG』 ●『心温まる優しい作品を執筆する』 これら7つを厳守してプリ小説をやっています。
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