第16話

保健室
320
2020/04/02 09:35
目を覚ますと、白い天井。


保健室……か。


保健室の先生
あ、目覚めた?
天野由希
……はい。
保健室の先生
貧血ね。最近無理してない?田中さんたち、随分と心配してたわよ。
天野由希
あの、私どうやってここに……?
保健室の先生
立花さんがね、連れてきてくれたわ。


美咲が?


あんな小柄な体格で?


保健室の先生
立花さん、なんか明るくなったわね。本人に言ったら天野さんのおかげだって言ってたわよ。
天野由希
そう…ですか。


美咲……




美咲はそこまで私にしてくれるのに



私は……



あぁ、本当に自分が嫌になる。

素直じゃなくて

最低な自分が。


保健室の先生
今は10分休憩だけど、次の授業は体育みたいだし、もう少しここで休んでなさい。
天野由希
分かりました。


このままでいいのかな。



私はどうしたいの?



ひろに


気持ち伝える?



そんなこと絶対できない。



第一、私みたいな素直さや可愛さの欠片もない人を好きになる人はいないだろうしなぁ。






それから20分程して、保健室の扉が空いた。


元田裕翔
あ、立花が走ってて擦りむいたみたいなんで。

ひろが美咲を連れてきた。


うちの学校の体育は2クラス合同で行う。


ひろは保健委員だし、女子の保健委員の子は今日は休みで、連れてきたのも普通なこと。


なのに……


なんでこんなふうに思っちゃうのかな。


保健室の先生
元田くん、ありがとうね。もう授業に戻りなさい。
元田裕翔
はい。
保健室の先生
立花さん、先生ちょっとすぐ来るからそこ座って待ってて。
立花美咲
はい。


そうして、先生とひろは保健室から出ていった。


美咲と二人きり。



今は一番二人になりたくなかったのに。

立花美咲
由希ちゃん。

お礼くらい……言わないと……

天野由希
み、美咲……
立花美咲
何?
天野由希
ありがと、連れてきてくれて。重かったでしょ。
立花美咲
ううん。でも、由希ちゃんが教室を出ていって、中庭かなって思って行ったら倒れてたからびっくりしたよ。


はぁ……



美咲に私は何一つ勝ててないや。



ひろも美咲か私だったら絶対美咲を選ぶだろうな。

立花美咲
ねぇ、由希ちゃん、怒ってる?
天野由希
お、怒ってない。
立花美咲
そ、そう……?
保健室の先生
ごめんねー!立花さん、どこ擦りむいたんだっけ?


先生が戻ってきて、私たちの会話は中断された。




本当に自分が嫌になる。




ひろは、私のことどう思ってるんだろう。




そんなこと聞いても無駄か。



はぁ。


私、これからどうすればいいのかな。

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