あれから、教室に戻ると
みんなは「大丈夫?」としか声をかけてこなかった。
なんか見られてる感じはすごかったけど。
机に伏せていた頭を上げると、そこにはひろがいた。
そんなこんなで、今日一緒に帰ることになってしまった。
少し嬉しいと思っている自分がいる。
それがすごく嫌だ。
でも、もう自分が分かんない。
どうしよう。
あれから、そんなことをずっと考えているとあっという間に放課後になった。
私はひろと外に出た。
そういうと、予想外の返答だったのか、ひろは固まってしまった。
あの?
女の子?
あぁ。
私は思わず、吹き出してしまった。
やばい。
嫉妬なんて言おうとしてた?
しっ、疾走?
失敗?
いや、どう誤魔化せばいいのか……
あー。
こんなのだから、嫌われるんだよ。
昔の自分が出てきて嫌になる。
人のせいにして
自分は悲劇のヒロインみたいな立場にいて
最低な昔の自分。
もう最低になんかなりたくない。
そう思って、自分の気持ちはなんでも言おうとそう決めた。
なのに、また昔の自分が出始めてる。
言おう。
なんと言われてもいい。
自分の今の気持ちを。
そう。
最初はね……
なんか昔からの友達ってくらい
安心するの。
昨日まで気づかなかった。
自分でも驚いてる。
最初はあんなに好きなんて思うところひとつもなかったのに。
今は
ひろと一緒にいて楽しく思える。
こんな短期間で
こんなに人の感情って変わるんだなって思う。
え……
ひろって鈍感だったの?
この状況で他に誰が考えられるのよ。
またフリーズしちゃったよ……
てか、こっちが恥ずかしいんだけど。
まあ、驚くのは無理ないでしょうね。
考えてくれるんだ……
すぐに断られるって思ってたけどね。
少し嬉しい、いや、すごく嬉しい。
明日は、みんなにきちんと謝ろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!