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2021/08/10

第6話

素直
翔は病院に運ばれて治療を受けた。
医者の話では、体に複数の痣や傷があったらしい。
俺達が学校に行っている間も、母さんに暴力を振るわれていたんだ。
晴
......
澄
晴兄、そろそろ帰ろう。
また明日来ようよ。
晴
でも、翔が...
樋倉
樋倉
翔はお医者さんに任せて...。
晴兄の体調も心配だよ。
俺は翔が倒れてから1回も睡眠時間を取っていなかった。
昨日寝不足で倒れたばかりだ。
帝耀
帝耀
晴兄も体調良くないんだろ。
帝耀が俺の顔を覗き込んでくるけど、俺は放心状態だった。
早く家に帰らないと蒼空がパニックを起こすかもしれないけど、翔が目覚めたら説明しないといけない。

また選択をしなければいけない状況なんだ。
澄
翔のことは大丈夫だから。
早く帰ろう。
晴
......
翔
......
ベッドで酸素マスクをつけられて眠っている翔。
そんな翔をまた見捨てるのか。

そう思っても弟達に連れられて、蒼空を優先した。
樋倉
樋倉
晴兄だけが悪いんじゃないんだから。
責めなくていいんだよ。
帝耀
帝耀
翔が目覚めても反抗されるだけだけどな〜。



そう話しながら帰った数日後、翔は目を覚ました。




翔の病室に向かうと、複数の看護師が焦っているのが見えた。
晴
.....??
澄
何があったんだろうねぇ。
俺らが病室を覗くと、翔は両手で耳を塞ぎ極度に震えていた。
翔
ごめんなさい...ごめんなさい.....
看護師
翔くん落ち着いて!
看護師
私達は何もしないよ!
翔
触らないでッ...!
帝耀
帝耀
.......
不良の道に進む前...俺が翔の心を壊す前の...怯えた翔だった。
樋倉
樋倉
あのすいません...。
僕達この子の兄なんですけど...。
看護師
あ、お兄さん達!?
医者
...どなたかひとり来てください。
晴
俺が行くよ。
澄
分かった。
俺は医者に連れられ、誰にも聞かれないところで話をされた。
医者
本当に言いにくいんだけど...。
晴
...はい。
医者
翔くんは...多重人格、ですね。
晴
多重人格...?
医者
虐待を受けていた子によく見られます。
「自分は虐待を受けていない」「殴られていない」と思い込む為に、わざと自分の中で違う人間を生み出してしまうんです。
晴
虐待なんて......
言いかけて思い出した。
母親から暴力は日常茶飯事。
翔は自分の苦しみを人に言えない子。
信じられるものは何も無い。

そう考えてみると、確かに虐待に当てはまることばかりだった。
医者
翔くんは暴力を振るわれている間、もう1人の人格と交代して精神を保っていたんだと...。
晴
.......
医者
...多重人格を治すのは非常に困難です。
一人の人間として翔くんの中で成立させてますから...。
晴
じゃあどうすれば...
医者
今のところ見られるのは、怯えている子と攻撃的な子だけです。
どちらが本物の人格なのか分かりませんが。
晴
家にいる時は...割と前から攻撃的でした。
医者
...なら、怯えた子が本当の人格ですね。
晴
え?
俺は理解が出来なかった。
家にいる時に攻撃的だったなら、そっちが本物じゃないのか?
医者
翔くんが別人格を作った原因は、家庭での虐待にあります。
晴
...
医者
つまり、家にいる時は本当の自分を出してはいけないんです。
晴
何で...
医者
本当の自分を出してしまうと、翔くん自身が殴られているって思ってしまうでしょ?
晴
.....あ。
俺は気付いた。
翔は「自分は殴られていない」と思う為に別人格を作った。
つまり、家では翔自身を出すと「翔が殴られている」ということになる。

翔は自分の精神を保つ為に別人格を作り、そいつが殴られていると思い込むようにした。
だから怯えている方が本物なんだ。
医者
気付いたようならこれ以上言いません。
治療法は、翔くん自身を認めてあげるしかありません。
晴
認める...?
医者
翔くんは誰にも見られず、誰からも愛情を与えられず、本当の自分を隠しています。
晴
.....
医者
翔くん自身を認めてあげなければいけない。
別人格は翔くんに不必要です。
晴
でも...
散々俺らは翔を見捨ててきた。
「翔なら大丈夫」と謎の期待を、小さい翔に背負わせた。

そんな俺達を翔が受け入れるかどうか...。
医者
...晴さん、でしたね?
晴
あ、はい。
医者
実は翔くん...この病院に来たの初めてじゃないんですよ。
晴
え?
初めてじゃない...。
でも俺達は翔を病院に連れていったことなんて無かった。
翔が自分から来たってことか?
医者
1度だけ昼過ぎまで帰ってこなかった日がありませんでした?
晴
.....あ、そういえば...。
言われてみれば、あった。
朝からいつものように出かけて、次の日の昼まで帰ってこなかった日が。
医者
あの時ですよ。
あの時の怪我も虐待だったんでしょうけど。
晴
.......
医者
僕らが「何もされてない?」って何度聞いても、「コケただけ」って答えられて...。
晴
何で答えなかったんですか...
医者
もしあそこで「家で殴られている」なんて言ったら、お兄さん達も捕まるって思ったんでしょう。
子供の考えって意外と深いですよ。
晴
.....
医者
...まぁそういうことです。
戻って結構ですよ。
晴
...ありがとうございます。
俺は複雑な気持ちで病室に戻った。