目が覚める。
どうやら、壁にもたれかかって眠っていたようだ。
目元が濡れていることに気付く。
泣いていたんだろう。
思い出せない。
そして立ち上がる。
と、
ボロッ…
右手首から下が崩れ落ちる。
痛くもないし、痒くもない。
まるで、その部分は最初からなかったかのような感覚だ。
夢から醒めたはずなのに。
まだ、眠っているのだろうか。
立ち上がる。
ここがどこなのか、知る必要があると感じたからだ。
目の前の扉を開け、外に出る。
あたりは暗く、下に建物の光が見える。
相当高い場所にあるのだろう。
他にも情報はないかと辺りを歩いてみると、
一人の女性が、フェンスの近くに立っていた。
なぜだろうか。
彼女のことは知らないはずなのに、
俺は彼女のことを知っていて、
彼女も俺のことを知っている、そんな気がした。
彼女は俺の方を見ると、ニコッと微笑んだ。
目の前が真っ暗になる。
最後に彼女は、何か言っているようだった。
だが、残念なことに俺の耳には聞こえてこなかった。
ベットの上で目が覚める。
見慣れた部屋、元通りの右手首。
次はちゃんと現実みたいだ。
よかった、と安堵しつつ、さっきの夢を振り返る。
夢とは思えないほどの現実感。
もしかするとあれは誰かの記憶なのだろうか。
コンコン
ドア越しにリクが言う。
ガチャ
走っていくリク。
俺も走り出す。
分からないことは結局、忘れてしまうのが楽なのだ。
それが正しい選択なのか、それは誰にもわからないだろうが__。
不思議な感じの物を書きたかったという自己満。
エアフレでキラが言ってたことを参考に作成。
リク君お借りしました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!