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第4話

貴方さえいれば世界なんていらない(前編)
51
2019/04/26 14:49
しんしんと雪が降る中、まだ夕方だというのに宴が続いている。
食べ物やワインといった酒など食べたり飲んだりと騒いでおり、二日酔いの人もいるがそれはそれとして巻き込まれる側となり、容赦しなかった。
若干一名、いや二名ほど宴には顔を出していない人物がいる。

アジトの中にはこれでもかという殺風景なフロアに、ポツンと一つの部屋がある。
部屋の中には黒い牙の首領ブレンダン・リーダスの長兄ロイドと、リキア地方の有力貴族エルバートとエレノアの息子エリウッドだった。

以前、ベルン王国の前に立ちはだかった敵将であるロイドに討ち勝ったが、エリウッドの唯一弱点である人の痛みや苦しみが分かる優しさにより、ロイドに隙を見透かされ拉致された。
友人であるオスティア侯ヘクトルと、サカ地方ロルカ族のリンディスも居たが、エリウッドを救うことは出来ず拐われる。

今はロイドと一緒の部屋におり、拉致されてから一週間ほど経つ。

「…宴会には行かなくてもいいのかい?」
「あぁ。あれは奴らが勝手に開いたから、別に参加するしないは自由だからな。」

ロイドに暖かめの毛布を体中包ませられたエリウッドはぴとりとロイドの隣にしゃがむ。

「そうなんだ…。でも、どうして敵である僕をこのアジトに…?」
「本当は依頼で、お前を暗殺するのが今回の任務だった。だが、お前を見て俄然興味が湧き、こういう風に捕えた。」

和解すればいいのにね、とエリウッドはぽつりと口を零す。
ロイドはそれを聞き逃すことは無く、エリウッドを愛おしく抱きしめる。

「そうだな。こんな依頼なんか無ければ、和解だって出来る。共闘も出来る。」
「…じゃあ、僕ら二人でアジトを抜け出すのはどうだい?」

エリウッドの発言によりロイドは頭を悩まし、少し呼吸を整える。抜け出すのはかなり困難の事、アジトには父親であるブレンダンの後妻であるソーニャ、その配下である【四牙】の蒼鴉ウルスラがいつ出てくるかわからなくもない。

「それは暫く日が経った方がいいじゃないか?そろそろ俺達【四牙】が、壊滅寸前というのもあるからな。」

ロイドはエリウッドに優しめに言い聞かせたが、少し驚愕した。エリウッドの目は、希望を失った様に、暗い目をして。

「そうだね…。でも、僕は君がいてくれるならば他はどうでもいいんだ。例え皆が僕らを敵に回そうとも、僕らならどんな困難にも乗り越える事さえできる…」

ああ、そうか。俺と同じで良かった、と、ロイドは歪んだ笑みをし、エリウッドが先程まで包ませた毛布を剥がし、自分の上着をエリウッドの体中を包み込ませ、被せる。

「俺も、お前に誓おう。共に在る事を。そして、この戦いが終わったら此処を抜けよう。俺達の場所を見つけ、暮らそう。」

ロイドはエリウッドの頭上に軽く口づけをし、頑なに抱きしめる。

「…ロイド、絶対に僕の前から居なくなったりしないでくれないか?」
「分かってる…。俺はお前を置いて死ぬ訳には行かない。仮に、お前の体に傷が付いたとしても、そいつを殺めたりする事もあるからな。」

ここまで自分に依存するとは思ってもいなかったと、ロイドは自分のモノとしてエリウッドの首筋に軽く痕を付け、痕の付いた傷をねちっこく舐める。
エリウッドはロイドに自分の首筋に痕を付けられたが、痛いとうんともすんとも言わない。むしろ、喜びの笑みをした。

「なんだ、笑うとかわいいな。」
「笑うというか、笑みを見せるのは君だけなんだよね。」

少し笑いながら抱きついている両腕を離すことはない白狼、それにつれ白狼の頬をぴとりと自分の頬をくっつける公子。

【四牙】のうち早く狂い始めたのは白狼だという事は、【黒い牙】全員が知り始めたのは二人が【牙】を抜け出してからの話であった。
後日の事。なにやら黒い牙のアジトからざわざわと騒ぎが起こった。
とても尋常では無いほどの人数がばたばたと不器用ながらに走り出す。
それに気づいたのは、黒髪で理魔法と杖を扱う首領のブレンダン・リーダスの後妻であるソーニャ。彼女は裏からネルガルという元凶と、仲間のリムステラと【黒い牙】を操っていた。
「とんでもない騒ぎね。何かあったのかしら?」
はぁ、とため息をついたソーニャは依頼に張り紙を貼っている剣士に声を掛けた。
「…何かで騒ぎを起こしているんでしょ?事件かしら?」
ソーニャに後ろから声を掛けられた剣士は驚き、そして振り向く。
「…事件といっても、ソーニャ様にとっては反吐が出る程下らないかもしれませんが…。」
「大丈夫よ、言って。」
少し冷や汗を流した剣士はゆっくりと呼吸を整え、ソーニャの耳元でこう囁いた。
「…ロイドさんが牙を脱退しました。…前に依頼され、数日程捕虜されていたフェレ侯公子エリウッドも。」
ロイドが脱退した。あの、首領の長兄が。じゃあ残っている[四牙]で探すしかないのか、とソーニャは頭を悩まし、冷静さを取り戻す。
「…ロイドはいつ脱退した?」
「俺が気づき始めたのは、つい昨日の事で…。それで、今日皆でロイドさんを探そうと思ってこうやって張り紙を…」
剣士はマスクを少しずらしながら呼吸を整えた。それ程ロイドに信頼関係を寄せていたのか、実に下らない。

「今日中でロイドを見つけるよ、お前たち!エリウッドは見つけ次第暗殺する事よ!」
数分後別室へ移動したソーニャは、[四牙]の[蒼鴉]の異名を持つウルスラと[死神]の異名を持つジャファルをこの部屋に呼び寄せる。
「…[白狼]が脱退という事は、何か理由があるのですね。」
ウルスラは少し怪訝な表情で顎に手を当てては肘を机上に付く。
「…そうだな。」
ジャファルは今まで沈黙だったが、それを割り切るかのようにトーンを更に低くする。
「理由がどうであれ、ロイドを説得すればいいんじゃないかしら?その方が早まるし。」
「流石ですね、ソーニャ様。」
巧みなる言葉のキャッチボールで辻褄が合うソーニャとウルスラ。その横に居るジャファルは何かを思いついた。
「…[狂犬]はどうするんだ。」
ジャファルが言い放った[狂犬]は、ロイドの弟であるライナスの事だった。首領の次男であり、ガサツで気性が荒いが兄のロイドと首領を誰よりも信頼している。勿論、義妹でありソーニャの娘であるニノも。
「ライナスはいいじゃない。後から伝えればいいと思う。」
すっぱりとウルスラは鶴の一声の如く一言で割り切った。
「…なら、いい。」
俺には関係ない事だ、とジャファルはさきに別室を後にしロイドを捜索し始めた。
「私達も探しましょう、ソーニャ様。」
「ええ。ロイドを見つけるのは最優先、エリウッドはその後よ。」
ソーニャとウルスラもロイドを捜索をする事となった。
アジトから大分離れ、ベルン街へ訪れたのは牙を脱退したロイドとエリウッドだった。
何やらエリウッドには、軽めの服装の上にロイドが昔着用した上着を羽織ってある。どうやら標的にバレないようにするためだと、ロイドは注意深くエリウッドに言い聞かせた。
「…ロイドは何も上に着なくてもいいのかい?もしバレたとしたらまた、僕らは…」
エリウッドは自分の心配をするロイドに少し困り気味になり、ロイドの服の裾を掴む。
「俺は大丈夫だ…。お前が居てくれてるから俺は頑張れるんだ。それに、抜け出そうと提案したのはお前だろう?」
ロイドはエリウッドの髪に触れ、微笑みを交わし体を自分の方に寄せ、抱きしめる。
エリウッドの温かい体温でロイドの冷たい体は温まる。
「…ロイド、頬が冷たいじゃないか。昨日は湯浴びしなかったのかい?」
「いや?湯浴びしようとしたけどな、どうもお前の事が気になっててな…つい。」
ロイドはエリウッドの事を常に心配しては、時々自分のやる事は後回しにする癖がある。なので、エリウッドは自分の事を優先にすればいいとロイドの頬を指で突く。
「…はは。お前に言われたなら、やらなきゃな。…さて、支度するぞ。」
そう、ロイドとエリウッドはベルンから大きく離れた場所、エレブ大陸南西に位置する半島であるミスル半島である。大半は砂漠に覆われ、人が住むには限られている。それをロイドは定めを付けてはエリウッドに提案をした。
「…そうだな。でも、ベルンからとても離れているよ?人の足だと経つ日が掛かるかもしれないが…」
「それもそうだが、その為に食料を買い込んだ方が餓死には繋がらないだろう?仮に、連中が追った時に武器の調達もな。まぁ、持ち込みには人それぞれ制限があるからな。」
ロイドはガサガサとポケットに添えてあった小さなバックから、2000Gをエリウッドに見せ、握り締める。
「この位の金しか、くすねかったから…。予想とは、下回るかもしれないが。」
エリウッドは少し苦笑いを浮かべて自嘲するロイドを見ては、はにかんだ。
「…そんな事ない。少ないお金でも補えるものはあるじゃないか。僕も少しだけ持ってきたけど、それは武器の調達にしようか傷が付いたときの薬草に使うか迷ってて…」
エリウッドはあまりの恥ずかしさが顔に出てしまい、目を背けては頬をかく。
「これだけあれば足りる。少しずつ、食料や薬草など調達していけば大丈夫だ…。」
ロイドは恥ずかしがるエリウッドの頭を優しく撫で、空には覆われた筈の雲が消え太陽が明るく照らしては空を見上げた。
「…綺麗だね。これは、僕らを照らしてくれるんじゃないかい?」
「…ああ。買い出しに行くか。」

ロイドはエリウッドの手を優しく握り、繋いだ。
買い出しに向かうロイドとエリウッドは、近くの噴水広場まで歩き、ここを集合場所とロイドはエリウッドに助言をした。
「俺は武器の調達、お前は薬草と食料にするが…減らした方がいいか?」
エリウッドは友人の手合わせで二月に一度しているが、その分筋力は身に付いているが逆に体力は劣っては倒れることもしばしばある事も。
ロイドはあまりに無理しないように分量を減らそうと考えた。
「いや、僕は大丈夫だよ。この位量なら丁度いい。」
ふわりと笑みを溢したエリウッドはロイドに頼まれた薬草と食料をメモに書き、後ろを振り向きぱたぱたと市場へ走った。
「…俺の心配のし過ぎか?いや、あいつに何かあったら…」
エリウッドを見送ったロイドは悶々と頭を悩ましてはブツブツと呟いた。

数分後、エリウッドは市場につき薬草を最初に買おうと決め込み、薬草の売店がある店を探すことにした。
普段の市場は大変人気があり繁盛しており、人混みなどで巻き込まれては素人にとって怪我をする恐れがある。
今日は人混みなど無く、むしろ空いてた。
人数は少なく、寧ろエリウッドが通れる道は十分あり通りやすい。
エリウッドは早速薬草の売店を見つけ、駆け込んだ。
薬草といっても色んな種類があり、効果はそれぞれ違いがあるので慎重に選ぶしかない。
「…あの、すみません。この薬草を下さい。」
エリウッドは恐る恐る店員に声を掛けた。
店員は振り向き、エリウッドの表情を見てはニコニコと微笑んではエリウッドの手に薬草を渡す。
「あいあい、この薬草を選ぶとは。あんちゃんいいセンスだな!」
おおらかに笑う店員にエリウッドは戸惑う。そこまで効果があるの薬草を選んでたのか。
「…ど、どういった効果があるんですか?」
「おう、これはな!丁寧に扱えば擦り傷や切り傷も勿論、病気も治す薬草なんだぜ!いやぁ、流石あんちゃん!鋭くいくねぇ!」
バシバシと店員はエリウッドの頭を叩いては豪快に笑う。叩かれた所とても痛い。エリウッドは言おうとしたけど、店員は悪くないと思い、やめた。
「そ、そうなんですか…?教えて頂き、ありがとうございます…。これ、お幾らですか?」
「…おう!これはな、ちーっと高いがあんちゃんの顔が良いから50Gで負けてやるぜ!450Gだ!」
何か知らないが負けてくれた。凄く太っ腹だな、この店員は。エリウッドは冷や汗を掻きながら、450Gを店員の手にGとGの間に金属音を鳴らし、渡す。
「おっ!丁度いいな!ありがとうな!」
最後まで豪快に笑っていた店員はエリウッドを見送る。
そして、後ろをを振り向いてはある張り紙と後ろ姿のエリウッドを確認する。
「…なぁ、もしかしてだけど…フェレ侯公子なのか?」
店員は空いてた人数がまだ市場に居るのにも関わらず、ボソリと呟いた。

エリウッドが薬草と食料を買い込みを終えた同時刻、ロイドは武器の調達により武器屋に向かった。
武器屋は逆に空いているかも思いきや、寧ろ混雑していた。武器の買い込みで爆買いしては店員を脅迫し、全ての武器を買い込む人がいる。売られている武器が、僅かというのも稀ではない。
そんな物騒な店の前に牙を抜けたロイドはため息を付いた。
「…結構並んでいるのか。待つには時間が掛かりそうだな…。」
ロイドは黙り込み、ふと何かを思いついた。
「…儀式、してないな…。着いたときにするか。」
そう、儀式とはロイドとエリウッドの誓いの事。それを提案したのもロイドだが、エリウッドは最初恥ずかしがっていたが、儀式をする度に慣れ始め笑みを溢しては、ロイドの周りに薄白のレースをロイドの体に羽織る事がある事も。
再び、メモを取り出しては購入する武器をロイドは確認した。
「儀式って何のことっすか?」
ロイドの左上半身からひょっこりと顔を出したのは、茶髪の髪色で真っ赤なローブ、薄緑色の服装を身に着けた青年だった。
「な…っ!?い、いやこっちの話だ…気にするな。」
ロイドは青年を見ては疑いを隠せず、呼吸を整える。
「あはは、そうっすよねー。言いたくないってことありますよね。」
青年は飄々とした表情でロイドに警戒もせず話す。
「…そうだな。あんたも、言いにくいって事あるだろ?」
「…あるとしたら、レイラを死なせた【黒い牙】の復讐かな…。誰がレイラを暗殺したのかまだ分からないんですけど、居たら仕留めようかと。」
青年は目は笑っておらず、ただ憎しみで歯を食いしばりは、先程までおちゃらけた表情はふと消えた。
青年が名を挙げたレイラ、それは青年の恋仲であり、【黒い牙】の任務が終わったら青年の故郷で暮らす予定だった。
だがそれがつかの間、レイラという女性が【黒い牙】を侵入していた事がネルガルという人が造った[モルフ]であるエフィデルにバレてしまい、その場で[死神]であるジャファルに葬られ、魔の島にて遺体として置かれたのが最期だったと、青年は目の前が敵である事を知らないロイドに淡々と話した。
「…そうか。それは辛い事だよな。だけど、あんたは頑張っているだろう?レイラっていう女性の分も生きているし、それに…あんたの周りに仲間が居るじゃないか。」
優しく青年の頭を撫でたロイドは哀れみの表情で青年を慰めた。
「…ああ。でも、まだ時間や日にちはある。ゆっくり自分のペースで進もうと決めたんだ。」
青年は泣きそうになっていたが、ロイドの励ましによりいつもの表情に戻る。
そして青年がロイドにそそくさと渡したのが一枚の紙だった。
ロイドは疑問に思い、青年に問う。
「…人探しか?」
「そうなんですよ~。辺り見回して探しても見つからなくて…あ、人物画と名前はここに書いてあります。」
青年はロイドが持っている紙の文字に指を指しては目を通す。
文字には乱雑で無く、丁寧に書かれてありロイドにはとても読みやすかった。
そして、人物画は誰なのか目を通したロイドは瞬時青ざめた。
「…は?」
人物画を見たロイドはヘラヘラとした表情をしてる青年を見上げ、また人物画を見ては二度も凝視した。
ロイドがそこまで凝視するとは思わなかった。じゃあ、人物画は誰なのか。
「ん?どうかしたんですか?」
青年は青ざめているロイドを見ては普通の表情に戻る。
「…あんた等が探してるのか?」
「そうなんですよね~。なんせ、ヘクトル様の友人であるエリウッド様なんですよ。」
青年が探している人物はエリウッドだった。まさかロイドが拉致したエリウッドが。この飄々した青年らに狙われていたのか。
冷や汗を掻いたロイドはタオルで顔を拭き、青年を見ては警戒し始めた。
「…探し始めたのは、何時なのかわかるか?」
「えっとですね、確かベルンにて忽然と姿消してしまって…そっからですかね。」
ドンピシャだった。確かこの時、ロイドがエリウッドを拉致した時だった。
恐らくだが、数日経った頃ロイドはエリウッドをアジトで匿ってから、こいつ等はエリウッドを捜索し始めたと、ロイドは持っていた紙をぐしゃりと握り締めた。
「…そうか。見つかるといいな、エリウッドって奴を。」
ロイドは全く表情を変えず、青年に告げ口をした。
やっとの事自分の番になったロイドは武器を買い始め、青年に手を振り、去った。
全て買い終えたロイドはエリウッドが居る噴水広場まで走り出した。
エリウッドはロイドがこちらに走っているのを気づき、軽く手を振る。
「...悪い、少し遅れてしまった。」
「大丈夫だよ。僕も丁度着いたばかりだからね。」
エリウッドは両腕に薬草と食料を抱え込み、ロイドは武器を鞄の中に詰めてある。
「…行けるか?」
「…ああ。」
ロイドとエリウッドは大陸南西の半島にあるミスル半島を目指し、一歩踏み出した。

一方、アジトでは

「ソーニャ様!ロイドさん見つかりません!」
「居そうな場所を探しましたが、まだ…」
部下の二人が青ざめながら、ソーニャに申し訳無さそうにワタワタと慌ててはソーニャを困らせた。
「…そうね。流石に明日には戻るんじゃないかしら。そして事情を説明させればいいけれど。」
ソーニャもウルスラと一緒にロイドを捜索したが、見つける事は出来なかった。
そして、先程居たジャファルもロイドを探していたが見つけれなかった。
死体の山で赤ん坊として生き残った彼は、ネルガルに拾われ暗殺を極めては道具として扱われ、全くの無表情で依頼をこなすあのジャファルも、ロイドを見つけれないのが最大の難点だと、ウルスラは冷や汗を掻き始める。
「…明日も戻れなかったら、どうするんだ。」
ジャファルは表情を変えず、ソーニャに問う。
普通なら、焦ってたり悔しがってたりするがジャファルはそんな表情を一切しなかった。
流石、[死神]の異名を持っているには相応しい。
「皆一斉にベルンを出て、それぞれの大陸に分かれて探すしかないわね…。」
ソーニャは紙を取り出し、ペンで大陸とそれぞれの島や国を書き込んだ。
明日に賭けることにした。ロイドの捜索でもし見つけなかったら、死を覚悟すると。
ソーニャとウルスラ、それにジャファルも。そして【黒い牙】の皆も心の中で誓った。

次の日、ベルンから少し離れた宿屋に泊まり、最初に起きたのはロイドだった。
隣には、すうすうと寝息をたてているエリウッドが居てはロイドは優しく微笑んだ。
ベッドから降り、鞄の中を漁り取り出したのは小さなブレスレットだった。
色はオレンジ色と黄色で、二人のカラーであり一緒だという印と儀式で使うというのもある。
ロイドは眠っているエリウッドの所に寄り、手首を優しく掴み、オレンジ色のブレスレットを括り付け、手の甲に口づけをした。
「…愛してる、エリウッド。」
まだ儀式は序盤だが、島に着くには大分日が経つ。それをわかっての承知でロイドは、エリウッドと一緒に行くことを決めた。それと同時にエリウッドに愛着心が沸きはじめ、こうやって言葉を囁いたり、共闘したりとロイドにとっては幸せに満ちていた。
まだ二人の旅は終わってはいない。
これからどんな旅になるのか、白狼は少し好奇心が湧き出したのである。