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第3話

誰にも触れられないように(ロイエリ)
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2019/04/13 02:39
ベルン城までの道のりはとても険しい。
何より霧が濃く、いつどこで敵が襲い掛かるのがあまりにも予測がつかない。
少し息切れが出始めたエリウッドは、友人のオスティア公弟ヘクトルと一緒に【黒い牙】の首領の長男、ロイドを撃破してなくてはならなかった。

元々エリウッドの性格からしてみれば生真面目で誰にも隔て無く接する彼だが、無理な戦いはあまり好まず多くの犠牲を払うのが極めて嫌いという部類に入る。
今回も多くの犠牲を払わず、せめて増やさず終わらせたい、と心から願った。

「…ヘクトル、もうすぐか?」
「…あぁ。今マシューにたいまつで霧を消しながら手伝ってくれてる。範囲に関しては限られているが、もうすぐだ。」

ヘクトルの配下である義賊のマシューは、主に宝箱や扉開け、先程のたいまつで範囲を広げるといった密偵の担当だ。
身のこなしが早いのか、周りを把握しながらさくさくとやりこなしている。

「若様!それにエリウッド様!敵将見えてきました!」

マシューの掛け声により二人は走り、マシューのもとに駆け寄る。

「ロイドって奴が居るのか?」
「はい。ロイドは【黒い牙】の四牙の中で白狼と呼ばれる逸材ですから、今まで戦った敵将より手強いかと…。」
「…そうか。じゃあ、僕から行くよ。」

エリウッドの素直で正直な言葉により、ヘクトルとマシューはその場で固まる。
エリウッドは無理な戦いは好まず、全員無事に生き残ろうと心掛けている彼からそんな口から出るのは極めて稀である。

「おい...エリウッド、マシューから聞いただろ?ロイドは牙の中で手強いって。お前のひょろい体であんな化物に勝てるのか?」
「…それはわかっている。だけど、そこで力尽きてしまったら前に進めない。父上を殺めたネルガルを倒すまでは、僕は諦めないと誓ったからだ。」

エリウッドの言葉により、ヘクトルは『しょうがねえなぁ、いっちょやるか!』と両腕を振り回し、斧を片手に持つ。
『あはは、いつもの若様ですね。おれも護衛しますよ!』と、マシューは飄々とした表情で短剣を片手に持ち、くるくると器用に回す。

「…よし、行こう!」

先程マシューから放ったたいまつの効果が切れる目前に、エリウッドは敵将ロイドのもとへ走り出しそれにヘクトルとマシューも釣られ、走り出す。
ロイドの元へ辿り着いたエリウッドは、呼吸を整え静かに剣を構える。

「...貴方が、この集団のリーダーか?」

エリウッドは落ち着いた表情で目の前にいるロイドに質疑を問う。

「...ああ。」

ロイドは目を少し開き、こちらも落ち着いた表情をしエリウッドに質疑を返答する。

「君達【黒い牙】は信念をもった集団だと聞いた。…それが何故、ネルガルのような男に与しているんだ?」

『はぁ…』とロイドは呆れたのか、真剣な表情をしているエリウッドに対し重く声をのし掛かる。

「…ネルガルやソーニャは関係ない。俺達は、与えられた使命を果たすのみ。」
「その使命が、正しいのどうか疑う事は無いのか!?」

ネルガルとソーニャは関係ない。その台詞に若干冷や汗をかいたエリウッドはロイドに更に質疑をもう一つ増やした。

「…首領の言葉に異は問えない。それが、統一された組織というものだろう?」
「しかし…!」

ここでグッとエリウッドは口を固く閉じる。
もっと相手が納得のいく質疑があったのだろうかと、少し頭を悩ます。

「確かに、あんたは悪いヤツには見えない。だが、【牙】の裁きは絶対だ。」

ロイドの腰からチャキと剣の刃が上空の日光と反射し、光りだす。
相手には不足無しか、とエリウッドは相手の行動を読みながら剣を腰から抜き取る。

「悪いな、消えてくれ。」

ロイドが振りかざした剣は、エリウッドの頬を掠める。
長年の剣術の経験を積み上げたロイドのさばき方は、幼い頃ヘクトルと手合わせにより剣術を積み上げたエリウッドにとっては圧巻だった。

「...速いね。」

エリウッドは思わず口を溢す。
今まで戦った敵将の中でも手強いというのは本当の事だった。
攻撃も強いが、防御も速さもエリウッドを大幅に上回る。

「そうか?俺は今までの奴らにはあまり歯ごたえが無くてな。だけどあんたは違う。その剣さばきは俺の弟と似ている。」

ロイドの剣さばきとエリウッドの剣さばきが合わさる時、金属音がぴりぴりと鳴り響く。
勿論、後ろに防衛をしているヘクトルやマシューにも聞こえる。

「...だが、ツメが甘いな。」

ロイドの素早い剣に、エリウッドはその反応をする事に遅れてしまい、剣を払い除け、鈍いと音と共に自分の剣を落とす。

「そんな…嘘だろ…?」

エリウッドは口を濁し、少し苦い表情をする。
そんなエリウッドの表情を見たロイドは、少し疼いた。

「…なぁ、その顔いいなぁ。」

少し歪んだ笑みを零すロイドが、ゆっくりとエリウッドの元へ歩む。
エリウッドはロイドの表情を見た瞬間、突然背中が凍りつく様な寒さが襲い掛かり、後ずさりする。

「…なんで逃げるんだ?俺はあんたのその表情がいいんだよ。本当は、あんたの周りを排除してから…あんたを捕らえようとした。」

ガシリとエリウッドの肩を掴んだロイドは剣先の刃をエリウッドの頬に軽く当てる。
別に傷は付けたくないが、ただそれをすれば彼は怯えるだろう、と。

「…変わり者だね、君は。」
「…何が言いたい。」

少しだがエリウッドの表情は和らぐ。
ロイドに自分の頬を思い切り斬られたら、元も子もないというのにロイドの表情を読み取る。

「君も、他の住民の人達を犠牲にせず敢えて避難をさせた。そうだろう?」
「ああ。無駄な犠牲も払いたくないし、争いもだ。場があまりにも大きかったら意味がないだろう。」

『まぁ、茶番はここまでだ。』と、ロイドはエリウッドの頬に当てた剣の刃先を離し、そして剣を後ろの懐にしまいこんだ矢先に、エリウッドの両腕をガッシリと掴む。

「上からの命令であんたを捕らえる。…悪く思うな。」

エリウッドはロイドにねちっこく、そして重低音で耳元にボソリと囁かれた瞬間、脈動が走り出した。
そしてズキリと頭が痛み出し、苦い表情をする。

「…っ…あ、あぁ…」

エリウッドはあまりの痛みに呻き声を上げ、そのまま地面にしゃがみ込む。
『やり過ぎたな。でも、まだだ。』とロイドも一緒にしゃがみ込み、呻き声を上げているエリウッドの両腕を離し、正面に向かせる。

「そんなに痛いのか?なら、少しだけ快楽を与えてやる。」

スッとロイドはエリウッドの右頬に軽く手を当て、軽く口づけをする。
ほんの数秒により、ロイドはエリウッドの唇の間から隙間が出た瞬間、自分の舌をねじ込みエリウッドの舌を絡める。
ぐちゅぐちゅといやらしい水音が響き渡り、どういう状況なのか全く読み込めなかったエリウッドはただその行為に少しずつ溺れる。
まるで大量の水が体中にかけられ、瓶の中に閉じ込められたような感覚に。

やっとの事口づけが終わったのか、ロイドはエリウッドの唇を軽く離した。
ロイドの舌とエリウッドの舌から少しだが銀色の糸が垂れる。

「...ま、公子はこういうのは初めてだったかな。」

林檎のように赤く染まり、口から少し涎が垂れているエリウッドの表情を見たロイドは少しだが歪んだ笑みを零す。

「…どういうつもりだい?正々堂々と戦うんじゃないのか?」
「それはそれだ。あんたのその表情を見たら更に興味を持った。」

ロイドの先程の行動によりやや警戒し始めるエリウッドに対し、ロイドは飄々とした口調で自分の腕の中にエリウッドの顔をうずくめる。

「捕らえるといっただろう?騒がれると困るから…少しだけ、眠ってくれ」

またあの脈動が走り出す。最初の脈動よりやや早めに、そして荒れるように。

荒い脈動が終わったのかと思いきや、今度はじわじわと催眠誘導に駆られる。

「…体が、言う、事…きか、な」

ガクンと体を崩し、エリウッドはロイドの腕の中に眠った。

「っ!お前…エリウッドに何をした!」

友人であるヘクトルがロイドに突っ掛かり、『若様!待って下さい!』とマシューがヘクトルの後を追うようにロイドの元へ駆けつけたが、もう遅かった。

ロイドの俊敏な剣術により、ヘクトルの腕を深めに斬るという重傷寸前に負わせたからだ。

あまりにもロイドの剣技によりヘクトルは腕から血を流しながらも、そのまま地面に崩れ落ちる。

「…じゃあな、オスティア候。せいぜい抗ってみろよ。」

友人を助けることが出来ず、何も上手くやれなかったヘクトルはロイドの嘲笑を見ながらふらりと意識を手放した。
眠ったエリウッドを抱えたロイドは、颯爽とアジトへ向かいザクザクと雪の音をたて、歩きながら扉を開け、所々に色白い床にへばりついてある雪の塊がロイドの足音を変化させる。
首領の後妻であるソーニャに見つからない様に自室へ向かい、鍵を固く閉める。
ベッドにエリウッドを寝かせ、その上に暖かい布団を掛け、起きるまで暫し待つことにしたロイドは、近くにある窓の所にくくりつけてあるカーテンを閉め、外部からも見えないようにした。

カタカタと時計の秒針だけ鳴り響く自室にロイドは椅子に座り込み、眠っているエリウッドをただ見つめる。
ガサガサと布団の音が聞こえ、エリウッドの瞳はゆっくりと開き起き上がる。

「…目が覚めたか?エリウッド。」

先程まで座り込んでいたロイドはエリウッドの眠そうな表情を見て、エリウッドの髪を触れては笑みを浮かべる。本当の笑みではない、狂ったような笑みだ。

「此処は…何処なんだ…」

正気を取り戻したエリウッドは自分の髪に触れていたロイドの手を払い除け警戒をする。
いつもは戦いを拒み、平穏な道を選ぶ彼には珍しいの事、だけど此処を抜け出す方法を考えないと頭を悩ます。

「此処か?黒い牙アジトの中にある自室だ。まぁ、俺の部屋だけどな。」

そんなに警戒するな、とロイドはまたエリウッドの髪を優しく撫でてはエリウッドを宥める。

「…そうか。でも、何故敵である僕を捕えた…?」
「そうだな…お前が俺の前から離れるとしたら…お前の身体に剣を切り刻んで、誰にも触れる事はなく、俺だけ、見てくれればいいなって…なぁ?そう思うだろ?」

もう狂っていた。ロイドの心は深い闇に囚われていた。ただエリウッドを束縛したい。自分の物にしたい。自分以外を見るな。と。
背筋が寒くなったエリウッドはすかさず起き上がり、駆け足でドアに手を伸ばしたがもう遅い。
ロイドに後ろからにきつく、いや、優しく包み込むように抱きしめられた。しかし、エリウッドの首筋に剣の刃が突き立てられる。

「…貴方は、何故そんな事をするんだ!冷静に物事を考え周りの皆に配慮をしている貴方が!何故!」

自分の首筋に突き立てられた剣の刃を右手で握り締めながらエリウッドはロイドを睨みつける

「…そんな事はどうでもいい。その表情が、俺にしか見せないつもりだろ?俺は、色んな表情をしているあんたがもっと見たい。笑ってる表情、悲しい表情、怒る表情、苦しんでいる表情…。様々だが、ずっと見たいんだ。ここで、この部屋で、永遠に、な?」

右手で持っていたエリウッドの首筋に突き立てた剣を床に置き、エリウッドの両目を軽く塞ぎ、そしてエリウッドの首筋に歯をたて痕を付ける。
エリウッドの少し呼吸が乱れだし、ロイドが付けた痕から生暖かい赤い液体が首筋をつたう。

「やりすぎたか…。」

つたった赤い液体を指で掬ったロイドは舐めとり、痕を付けた首筋に今度は甘い口づけをする。

後日のこと、アジトにて皆が食事や依頼のことで騒ぎを起こす中、一つの個室には首筋に赤い首輪を付けた公子にそれを人形のように愛を教え、瞳には光が灯してない白狼が居たとは、誰も知らなかった。