【あなたの下の名前said】
30日目
朝起きたのに
ぼうっとして立ち上がれなくて
ベッドに座ったままの私にモトキさんが言った
手にはマグカップに入れたコーヒー
またキッチンに消えていく
私のマグカップに入れて来てくれた
ほい、と渡されたマグカップ
もう数日後にはこの部屋に無いマグカップ
ベッドに腰をおろしたモトキさんが
ふーふーとコーヒーを冷ましている
その度に息が当たって揺れる、彼の伸びてきた横髪
髪をかきあげて耳にかけてる
でも毛量多いから直ぐに落ちてきている
自分の髪ゴムを持ってきてまだふーふーしているモトキさんの髪の毛をさわった
上半分むすんでハーフアップにしてあげる
ちょこっと髪の毛を引き出してみるといい感じ
んふっと笑ったモトキさんを
ぎゅっと抱きしめた
小さく笑ったあとにひとくちコーヒーを飲んだのが分かった
そういうモトキさんの表情が
1か月前よりずっとほぐれている
私は
惜しいところまで行っていたんだろうか
モトキさんの優しい温もりを感じながら考えていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。