第32話

#32
327
2023/01/15 11:46
【あなたの下の名前said】
31日目



一日ぼーっと過ごしてしまった

最終日なのに






最終日ってことを考えたくなくて

仕事とか他のことで必死に気を紛らわせてたら


もう夕方









私の1ヶ月


ちょっとは役に立ったのかな






彼の中の何かを変えられただろうか






せめて彼との時間を噛み締めようと

彼が帰ってくる前にお風呂を済ませた




夜の10:00ぐらいになってやっと帰ってきたモトキさんが

風呂入るわーって普段通りに言う




お風呂から聞こえる鼻歌を聞くのも今日で最後





モトキ
寝るか。今日は早めに。
お風呂から上がったモトキさんが

テレビを見ていた私に声をかけてきた


モトキ
最終日だから布団入ってちょっと喋ろう。

2人で布団に入ってひっつく


さりげなく腕枕してくれるのが嬉しい


モトキ
最後だけど何も言わないのね。
ふふっと笑うモトキさん
あなた
1ヶ月でさ…ちょっとは私に対する気持ちとか変わった?
絞り出すように聞く
モトキ
そうだね。
続きを期待したけど

それ以上はなにも言ってくれなかった
あなた
好きには…なってないんだよね。
モトキ
そうだね。
淡々と答えるモトキさん


今はそれが少しありがたいぐらい


下手に何か言われたら泣いちゃいそうで




モトキさんにさらにぎゅっとひっついた














枕元の時計の秒針が


カチ、カチ、と進む音が聞こえる






ちらっと見てみると


23:00をまわったところだった










モトキ
明日からあなたの下の名前さんどうするの。
あなた
そりゃあもう出ていくよ。
あなた
期間限定の同棲だったんだもん。
モトキ
急に出て行けるの?
あなた
もう荷物はけっこうまとめてるから。
モトキ
もう俺に振り向いてもらうことは諦めて荷物準備してたの?
あなた
最初は…振り向いて貰えるって思ってた。
あなた
頑張ったらいけるんじゃないかって…過信してた。
あなた
だんだんモトキさんが優しくなってきて…いけるかもって思ってきて…でも…
あなた
それはたぶん好きになってきたんじゃなくて…「嫌い」から「普通」になっただけなんだろうなって気づいて…。
あなた
それなら…一緒に居れる時間を噛み締めて…潔く出ていこうって思ってたの。
自分の声が揺れている





腕枕してくれているモトキさんの左手が

私の頭を優しく撫でた









枕元の時計を確認した


23:56






あぁもう



終わっちゃう
あなた
モトキさん…
そっと呟いた

モトキ
ん?
優しい声がかえってくる


あなた
…こんな私のわがままに付き合ってくれて…ありがとうございました。
話し始めてすぐ涙がまた滲んできて

モトキさんの服に顔を埋めた



私こんなに泣き虫だったっけ
あなた
好きな人と…一緒に…暮らせて…
あなた
一緒に…ご飯とか食べれたり…一緒に…眠れたり…。
あなた
すっごく…幸せだった…です。
モトキ
うん。






23:59

























あなた
ずっと…あなたが…
あなた
大好きでした。










モトキさんの胸で呟いて


そっと彼の腕から抜け出た






モトキ
ん…?



あなた
…もう…日付変わったから…。
あなた
約束の1ヶ月…終了。

笑ってみたけど

たぶん今私の顔は涙でぐちゃぐちゃ




枕元の時計を確認したモトキさんが
モトキ
…そんなすぐじゃなくても良くない?
モトキ
明日の朝まで一緒に寝るぐらいなら別にいいよ?
そう言ってきたけど
あなた
ここで…ちゃんと切り替えないと…終われないから…。
あなた
…私はソファで寝るよw
そう言って

リビングに行った









暗いリビングのソファの背もたれに顔を埋めて


いつまでもいつまでも泣きじゃくっていた

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