【あなたの下の名前said】
31日目
一日ぼーっと過ごしてしまった
最終日なのに
最終日ってことを考えたくなくて
仕事とか他のことで必死に気を紛らわせてたら
もう夕方
私の1ヶ月
ちょっとは役に立ったのかな
彼の中の何かを変えられただろうか
せめて彼との時間を噛み締めようと
彼が帰ってくる前にお風呂を済ませた
夜の10:00ぐらいになってやっと帰ってきたモトキさんが
風呂入るわーって普段通りに言う
お風呂から聞こえる鼻歌を聞くのも今日で最後
お風呂から上がったモトキさんが
テレビを見ていた私に声をかけてきた
2人で布団に入ってひっつく
さりげなく腕枕してくれるのが嬉しい
ふふっと笑うモトキさん
絞り出すように聞く
続きを期待したけど
それ以上はなにも言ってくれなかった
淡々と答えるモトキさん
今はそれが少しありがたいぐらい
下手に何か言われたら泣いちゃいそうで
モトキさんにさらにぎゅっとひっついた
枕元の時計の秒針が
カチ、カチ、と進む音が聞こえる
ちらっと見てみると
23:00をまわったところだった
自分の声が揺れている
腕枕してくれているモトキさんの左手が
私の頭を優しく撫でた
枕元の時計を確認した
23:56
あぁもう
終わっちゃう
そっと呟いた
優しい声がかえってくる
話し始めてすぐ涙がまた滲んできて
モトキさんの服に顔を埋めた
私こんなに泣き虫だったっけ
23:59
モトキさんの胸で呟いて
そっと彼の腕から抜け出た
笑ってみたけど
たぶん今私の顔は涙でぐちゃぐちゃ
枕元の時計を確認したモトキさんが
そう言ってきたけど
そう言って
リビングに行った
暗いリビングのソファの背もたれに顔を埋めて
いつまでもいつまでも泣きじゃくっていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。