人の気配は無く、シーンとしている
充電したスマホを取りに寝室に戻ったら通知が光っていた
あなたの下の名前さんからLINEで一言
「いままで本当にありがとうございました。」
とだけ送られていた
あぁ
もう出ていったのか
歯を磨きに洗面所に行く
昨日まで2人分並んでいた歯ブラシがひとつになって
なんだか寂しそうにひっそりと佇んでいた
今日はご飯も自分で作る
自炊は好きなはずなのになんだか物足りない
撮影があるから昼飯はコンビニで買おうかなとか考えながら
彼女が作ってくれてたお弁当を思い出した
昨日の夜の彼女の涙
思い出すと心がぎゅうっと痛んだ
彼女は強かった
「1ヶ月したら諦めろ」という約束をちゃんと守って
去り際も「大好き」とはもう言わなかった
自分で約束したことなのに
今朝LINEの通知を見た時一瞬
「大好きだったよ」とか書かれているかもと期待した自分がいた
家が広い、と思った
もともとあなたの下の名前さんが来るまで一人暮らししてた時はなんとも思っていなかったのに
もう少し狭かったらよかったのに、とか思った
孤独な俺には広すぎる家
家のどこを見てもあなたの下の名前さんの笑顔や泣き顔が思い浮かぶ
早く出たくてさっさと準備してマサイの家に向かった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。