第34話

#34
266
2023/01/23 13:30
【あなたの下の名前said】
1ヶ月ぶりに家に帰った

病院からもらった薬の袋だけがぽつんと置いてある机


がんについて調べるために買ったたくさんの本たちが雑に置かれたままの床





余命と言われた1ヶ月



「入院しないと危ない」ってお医者さんには言われたけど





なんとなく治らないのは分かってた






だから最後ぐらい好きな人に

自分の気持ちをぶつけてみたかった



この命が燃え尽きるなら

いままで秘めていた思いをちゃんと言いたいと思った








モトキさんには病気のことは言わなかった






言ってしまったらたぶん彼は優しいから

同情で私と付き合ってくれる





そうじゃなくて



ありのままの私のままで、どれだけモトキさんに愛してもらえるのか知りたかった










結局は無理だった






だけど悔いはないよ


やり切ったし














あなた
幸せだったなぁ…。
呟いた言葉がひとりぼっちの部屋に吸い込まれていった









自然と笑っていた






でも泣いていた


プリ小説オーディオドラマ