【あなたの下の名前said】
1ヶ月ぶりに家に帰った
病院からもらった薬の袋だけがぽつんと置いてある机
がんについて調べるために買ったたくさんの本たちが雑に置かれたままの床
余命と言われた1ヶ月
「入院しないと危ない」ってお医者さんには言われたけど
なんとなく治らないのは分かってた
だから最後ぐらい好きな人に
自分の気持ちをぶつけてみたかった
この命が燃え尽きるなら
いままで秘めていた思いをちゃんと言いたいと思った
モトキさんには病気のことは言わなかった
言ってしまったらたぶん彼は優しいから
同情で私と付き合ってくれる
そうじゃなくて
ありのままの私のままで、どれだけモトキさんに愛してもらえるのか知りたかった
結局は無理だった
だけど悔いはないよ
やり切ったし
呟いた言葉がひとりぼっちの部屋に吸い込まれていった
自然と笑っていた
でも泣いていた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。