俺には、毎日最低でも1度は聴いている曲がある。
中2の冬。
俺の家で、あいつとドラクエしてた時。
あいつがワクワクした顔で俺に言ってきた。
あなた「あ!ねね!壱馬っ!!!」
壱馬「?...」
あなた「これ聴いて!!」
そう言って俺の目の前にイヤホンを差し出してくる。
黙ってそれを取り、聴いてみる。
物語が僕を拒んだって
誰かが運命を定めたって
会いに行くよ
どこにだって
探し続けるよ
出会えた頃とまた同じように
恋するよ
え...
なんだよこの歌。まるで、俺の気持ちじゃんか。
壱馬「いい歌...」
あなた「でしょっ!?!?最近知ったんだけどね、ほーんといい歌だよねぇー」
壱馬「なんで俺に聴かせたの...?」
あなた「え、えー?そ、それは秘密だよー」
まー、どうせこいつのことだから歌詞が素敵とかいう理由なんだろう。
そう思った。
それは、もともと俺はずっと片思いだからだ。
出会ってから、ずっとだ。
もちろん今でさえも。
俺は幼稚園の入園式の日、あいつと出会い、恋をした。
家も隣だったから、毎日のように遊んでいた。
どちらからともなくゲームしようだとか暇つぶしにつきあってだとか悩みを聞いてくれだとか、なにかあればすぐにあいつのとこに行ったし、あいつも俺のところに来てくれた。
絶対に叶わない恋だ。
あいつは俺の事好きじゃない。
俺じゃダメだ。
しばらく会ってない。
正式にいえば、俺が会うことを避けて生きている。
ただでさえ恋をしているのに、会ってさらに好きになるのがこわい。
叶って欲しいのに、叶わない恋。
会いたい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!