小さい頃は幸せだった。
母と父は、親の反対を押し切って結婚し、私を産んだ。
母と父は私をこれでもかというほど愛してくれた。
だけど、幸せには終わりがある。
私が小学4年生の頃、母の体に癌が発見され、その次の年に母は死んだ。
その頃からだ。
......父が変わってしまったのは。
母が死んではじめて気がついた。
父は、別に私のことなんて愛していなかったんだと。
父が愛していたのは、世間体から見た「いい父親」の自分だったのだと。
そんな自分が崩れてしまったからか、父は私に関わって来なくなった。
食事も。衣服も。学費も。全て無関心。
まるで私も死んでいるかのように。
稀に、自分の子どもに性的な目を向ける頭のおかしい大人がいるらしいが、私の父はそのようなことは
なかったから、その点ではまだ良かったのかもしれない。
父は毎日のように家に女の人を連れてきた。
知らない女の人の甘ったるい声を聞くたびに何度、父に殺意を覚えたことか。
昔は父が死ぬことを想像すると自然と涙が流れたけど、
母が死んでからは、そんな想像をすることだけが生きがいに感じた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。