だいちぃside
あなたちゃんを呼ぶなすびの声が部屋に響く
その言葉に戸惑っているあなたちゃんに
と声をかけた。
少し曇った顔を見せながらあなたちゃんは部屋を後にした。
名指しで呼ばれたはじめはビクッと体を震わせ、顔を向けた。
口を開いたはじめ。
それに何か引っかかるものがあったたなっちは勢いよく椅子から立ち上がった。
その時俺は気づいた。
畑の歯車が崩れていく。たった1人の女のせいで。
いや、あなたちゃんのせいではない。
これは、好きになってしまった俺たちに問題があるんだ。
隣の部屋から聞こえてくるあなたちゃんの声。
それは。優しさと怒りが混じった、とても不思議な声だった。
少しフリーズをしているとバタンと何かが落ちる音がして隣がおさまった。
ドアの隙間から覗くと。
普段の怠けさでは考えられない妹を抱き抱えている兄。なすびの姿があった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!