私の泣き声が響く部屋。
そこに、1人の人が入ってきた。
たなっちだ。
それを止めようとだいちさんが手を伸ばすが力が足りずズカズカと入ってきた。
私の顔を見たたなっちは辛そうな顔を一瞬させてお兄に話し始めた。
見当違いの答えだったのか、お兄が私の事をジッと見る。
そう言ってこの部屋はたなっちと私だけになった。
少しの間。沈黙が続く。
その間俯いていると
ポンと頭を撫でられた。
…その言葉にまた涙が止まらなくなってしまった。
今度は苦しさではなくて、
心が暖まって溶けてしまいそうな、優しい気持ちで。
私が名前を呼ぶと腕を開いて
空いたそこに思いっきり抱きついた。
どんなに泣いても、たなっちは背中をさすってくれて。
そう言って宥めてくれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!