子供を慰める保育士のような感じでふくらさんは言った。
本当にどこまでもどこまでも優しい人だ。
ふくらさんの家はお風呂までも清潔感に溢れていて、本当に男性の家とは思えなかった。
私なんてもっとゴチャゴチャなのに、と思うところがたくさんあった。
お風呂上がったあとは二人で企画なんかについて話して、それから寝た。
ふくらさんは伊沢に悪いけど仕方ないよねと言って、私が眠るまで側にいてくれた。
そのおかげでカバンに入っていた薬の存在も今日は忘れられた。
私が眠ったあとはきっと部屋に戻って寝たのだろう。
ふくらさんは本当に良い人だ。
ふくらside
俺の哀しい声も届いていないように、君は静かな寝息をたてる。
ぐっすり眠れているようだった。
俺の発した言葉に、君が笑ったような気がした。
そうだねって言ってくれているみたいに。
窓の外にはまだ、月明かりに照らされた鬼灯が咲いていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。