第23話

ミンギュ
633
2021/03/28 15:23



1番後ろの窓際の席。日当り良好。
心穏やかに日々を過ごせる。

席替えをした当初の私はそんなことを思っていた。




そう、思っていたのに。






ミンギュ
ミンギュ
ねぇねぇ、あなたちゃん!




この男によってそんな理想は砕かれた。


U
…何ですか?
ミンギュ
ミンギュ
いや、敬語やめよ?ㅎ
U
はぁ…要件は
ミンギュ
ミンギュ
今度遊びに行こうよ!
U
断ります
ミンギュ
ミンギュ
えぇ、なんで?!



陽キャのチャラ男と地味な女
絶対に交わることのない世界線。


U
私、忙しいんで


これで諦めると思ったが、
毎日飽きずに話しかけてくる。





ミンギュ
ミンギュ
あなたちゃ〜ん
U
……
ミンギュ
ミンギュ
あれ、あなたちゃん??
U
…どうして私に構うの?
U
友達のところ、行きなよ
ミンギュ
ミンギュ
なんで?
U
なんでって…
U
私とあなたじゃ住む世界が違いすぎる
ミンギュ
ミンギュ
世界とかよく分かんないけど…
俺はあなたちゃんと居たいなㅎ



楽しそうに笑う彼の八重歯が見えた。




U
 もう… 勝手にしてください



その笑顔に私は負けてしまったんだ。












ミンギュ
ミンギュ
あっ、その小説知ってる!
U
本当?
ミンギュ
ミンギュ
犯人、喫茶店のおじさんだよ!
U
……なんで言っちゃうの?
ミンギュ
ミンギュ
はっ!ゴメン!!


大きな身体を縮こまらせて、
分かりやすく落ち込むミンギュ君。

U
ㅎㅎㅎ
ミンギュ
ミンギュ
あ、笑った
U
ミンギュ君と居ると結構楽しい、かもㅎ
ミンギュ
ミンギュ
ホント?!
ミンギュ
ミンギュ
やったー!!
U
うるさい。



目を輝かせて喜んでいる。
尻尾を振る大きな犬みたいだと思った。











👧🏻
ねぇねぇ、ちょっといいかな??
ミンギュ
ミンギュ
お?どした?
👧🏻
あんたじゃなくて、あなたちゃん!!
ミンギュ
ミンギュ
…🥺



ニコニコと可愛いこの子は、クラスの一軍女子。

たしか、いつもミンギュ君の周りに居た人


U
えっと…私?
👧🏻
うん!!  ちょっと来て!!




非常階段に到着した。

嫌な予感しかしない…





👧🏻
あんた、ミンギュから離れてくんない?



振り返った彼女からは、
先程までの可愛らしさは消え去っていた。


U
…それを何で、あなたから言われなきゃいけないの?
👧🏻
うるさい、あんたがいると邪魔なのよ!
👧🏻
ミンギュにとって迷惑なの!
U
痛っ…!



私が口答えをしたのが気に食わなかったのか、
勢い良く肩に掴みかかってきた。






なぁ、何してんの?



突然入ってきた声。顔を見なくても分かる。



👧🏻
ミンギュ~!



今までに見たことない表情をしていた。

女は私から離れ、彼の腕に絡み付く。



👧🏻
ねぇ、ミンギュからも言いなよ!!
ミンギュ
ミンギュ
んー、何を?
👧🏻
迷惑だからもう近寄るな!ってㅎ
ミンギュ
ミンギュ
ㅎㅎ
ミンギュ
ミンギュ
そうだね、ちゃんと言わなきゃ



そう言って彼は横目で私の方をチラッと見た。

あぁ、やっぱり。

最初から違う世界って分かってたはずなのに
馬鹿だな…


U
分かった…
U
あなた達とはもう関わらないから




彼の口から直接聞くのは嫌で、
2人の側を通り抜けようとした。




ミンギュ
ミンギュ
待って!



後ろから抱き締められた。

ミンギュ
ミンギュ
…行かないで
U
なんで…
👧🏻
は、?ちょっと、何してんの?ㅎ
ミンギュ
ミンギュ
うるさい…
👧🏻
なに?ミンギュらしくないじゃんㅎ



私から離れ、だけど手は繋がったまま

女の方に体を向けてはっきりと言い放った。


ミンギュ
ミンギュ
迷惑だから、もう近寄るな
👧🏻
ちょっと、意味分かんないんだけどㅎ
ミンギュ
ミンギュ
あなたに手出したら女だろうと許さない
ミンギュ
ミンギュ
「次」は無いと思えよ?




繋がった手を、強く握られた。

彼の迫力に押され、女は逃げていった。

しばらく、沈黙が流れる。



最初に口を開いたのはミンギュ君だった。



ミンギュ
ミンギュ
前に…あなたちゃんが言ったこと覚えてる?
U
ん?
ミンギュ
ミンギュ
俺とは、住む世界が違うって話。
U
あ…うん
ミンギュ
ミンギュ
それね、俺も納得したんだ




胸がキュッと苦しくなった。
自分で言った事だし、分かってたつもりだけど
改めて彼から口に出されると…


ミンギュ
ミンギュ
あなたちゃんは清楚で頭も良いし、凄く綺麗で
U
…え?
ミンギュ
ミンギュ
俺なんて馬鹿だし周りもうるさい
ヤツらしかいなくて…
ミンギュ
ミンギュ
あなたちゃんには釣り合わないなって。
U
ちょ、ちょっとストップ!
ミンギュ
ミンギュ
ん?
U
私は逆に、ミンギュ君が羨ましかった
ミンギュ
ミンギュ
え?何で?!
U
明るくて誰とでも仲良くなれて、
いつも人の笑顔の中心にいるんだもん
U
本当は、憧れてたのかもㅎ


彼はいつも輝いて見えていた。

「ミンギュ君みたいになりたい」

でも、そう思うと余計に自分を惨めに感じるから
わざと遠ざけていたのかも知れない。



ミンギュ
ミンギュ
なんだ、俺たち同じこと思ってたㅎ
U
ふふ、そうだねㅎ
ミンギュ
ミンギュ
ねぇ、
U
なに?
ミンギュ
ミンギュ
これからも、あなたちゃんの隣に居ていい?



そんなお願い、断れるわけがない。
むしろ居てほしいのは私の方。


U
もちろんㅎ
ミンギュ
ミンギュ
ほんとに?!   よっしゃ!!!



ミンギュ君の大きな身体に埋もれる。

力いっぱい抱き締めてくるから、
苦しいくらいに伝わってきた


ミンギュ
ミンギュ
大好きっ…
U
…私もㅎ





違う世界は、案外遠い場所じゃなかった。
手を取り合えば世界なんてここにしかない。




二人だけの、素敵な世界






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