「イケメン」「優しい」「紳士」
「教会に居そうなお兄さん」
私の幼馴染であるこの男は今日も女子からの
熱い視線を浴びている。
よくもまぁそんなキラキラと胡散臭い笑顔を。
完璧な笑顔を崩さず(しかし目の奥は笑っていない)
周りの人に聞こえないような声で私に言った。
皆さん、聞きました?
これがこの男の本性です。
まぁこんなことを言っている私も例外ではなく
小さい頃からジスのことが好きだったりする。
しかしこの男、それはもう沢山の可愛い子からの
告白を1度もOKしたことがないのだ。
理由を聞いても「興味が無い」の一点張り
そんな恋愛に興味を持たない男に恋してる私って……
幼馴染なんて余計に可能性ナシに決まってる。
という事で、私はある作戦を立てた。
そうこれは作戦。
名付けて、
他の男子と新しい恋始めよう大作戦!
廊下で隣のクラスの男子と会話をする。
彼は同じ委員会で、最近仲良くなったのだ。
ほらほら、この流れいい感じじゃない??
あんなエセ紳士なんてさっさと忘れてやるんだから
背後から突然私の肩に腕を回した彼は
いつもの紳士スマイルだった。
周囲からひそひそと声が聞こえてくる
顔を見上げると、そんなのお構い無しの
楽しそうな笑顔。
これ、新手のイジメかな?
ジスの腕をくぐり抜けて逃げ出した
人々の目を避けて逃げ着いたのは、
誰も居ない裏庭。
そう叫んで再び逃げようとすると、
手首を掴まれた。
珍しく真顔で、感情が読み取れない。
掴まれた手が引き寄せられ、距離が縮まる。
驚く私の顔を見て、彼は微笑んだ
更に手を引かれ完全にジスの胸元に埋まった。
耳を疑うほど心臓の音が速く、大きく聴こえる。
いつもみたいにふざけた様子でも、
ジェントルマンのような声でもない
少し、震えたジスの声だった。
「やっぱり揶揄ってるんじゃん!」
口を開いたところで、彼の人差し指に制止された
あぁ、やっぱり
どれだけ目を逸らそうとしても
昔から大好きな人。
私はこの先も一生、彼に勝てる気がしない
🐰
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。