3時間目の授業。
太陽が真上に昇る時間帯
私の隣の席は、空っぽ。
さっきまで居たはずなのに
クラスメートのイ・ジフン君
クラスの中心的な集団の輪の中で、
彼はいつも静かに笑っている。
しかし、気付くといつの間にか姿を消していて
そんな彼の居場所を、誰も知らない。
つまり、ミステリアス。謎多き人。
.
.
やっと見つけた時には、授業開始まで5分
急がなくちゃ。
別の棟にある特別教室へ向かう移動中、
ジフン君を見つけた。
あまり人の通らない廊下
どこへ行くんだろう…
と思ったら、非常階段を上って行った。
誰も知らない、彼の居場所…
興味が湧いた。
もちろん、ダメ。
立ち入り禁止のロープが張ってある。
しかし彼は、躊躇なくひょいっと越えて行った。
気になる。この線の先。
これは、学級委員長として…捜査のため…!
私はその線を、越えた。
階段を上りきった先には鉄の大きな扉が1つ。
ジフン君が居るであろう場所
そこは、屋上だった。
扉を開ける錆びた音に気付き、振り返った。
彼は少し遠くの手すりに腕をかけて立っていた。
私は、扉の近くで立ったまま会話をする
彼は少し微笑んで顔を前に戻した。
って、私の話は無視ですか…
時間を確認していると、
いつの間に目の前に来た彼に手を引かれた。
遠くで、授業開始のチャイムが聴こえた。
でもそんなの関係ないと思ってしまうほどに
美しい景色が広がっていた
私たちの町が小さくなって、遠くには海も見える。
青い空には高く昇った穏やかな太陽。
隣に居るジフン君とは、肩が触れる距離。
冬と春の間。
まだ少し冷たい風が
私たちの間を通り抜けた。
にっこりと満面の笑みを見せる彼。
その初めての笑顔に、釘付けになってしまった。
どうやら私も
彼の秘密の一部になってしまったらしい。
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そうして今日も、屋上への階段を駆け上がる。
越えた線の先には、秘密の場所。
🍚
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。