第23話

広がる波紋①玉森side
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2020/02/27 03:00
翌朝…
「あれは?いったい、なんだったのか」

裕太、俊くんが来たわよ
玉森
なに?また来たんだ
嬉しいくせに
玉森
別にぃ


ミツが舞台で倒れたとき、傍に行こうとして匂った甘い香り。

宮田
おばさんすみません、いつも
御馳走になっちゃって
玉森
本当だよ、なんでお前
メシ時に来るの?
宮田
この大きな鼻が匂いを嗅ぎつけ
るんだよねぇ
玉森
はあっ?


そしたら目の前がクラクラし急に息苦しくなって。


玉森
調子いいこと言ってる
宮田
あははっ

俺は全身が火照って、身体の奥から何かが突き上げてくるような感じがし。


まぁまぁ、いいじゃないの
玉森
母さんが甘やかすから、こいつは
もう1人、息子ができたと思えば
玉森
息子ね、ふっ


あれは高校生のとき、学校の帰り道に匂った香りにも似ていた。

宮田
思い出すよなぁ2008年の
演舞城、ねぇ~タマ
玉森
‥‥‥
宮田
横尾さんと二階堂、がっちゃんと
タマ、俺の5人で観に行ってさ


あの時も俺は今回と似たような症状となり、一瞬
記憶をなくしてしまい。

宮田
がっちゃんが、すっげ~泣いて終わってから楽屋でもまた泣いて


「客席でずっと泣いてただろ」「泣き顔がツタンカーメンで超ウケたわ、ガハハッ」

宮田
ガヤさんもキタミツも大笑い、おまえ
なんで泣いてるの意味わかんねぇって


気がつけば、ボーッとしながら道路を歩いていたんだっけ。

宮田
どうかした?タマ
玉森
えっ
宮田
何か考え事でもしている?


誰にも言えない俺だけの秘密、そのとき俺は。

宮田
タマ?
玉森
あ…そっ、そうだ!メンバーが
頑張っている姿を見ているだけ
で泣けてきて~だっけ


(で、あってたよな?千賀が言ってた言葉)

宮田
…うん
玉森
それより俺は


ペラペラ、ペラペラ、その場を誤魔化すかのように喋り続けた。

玉森
内くんのコンサートでバックに
ついたとき


宮田の不安げな、心配そうな視線に堪えきれず。

俺な、これでもお前らのこと
調べたんやで
北山
本当っすか嬉しいっすよ
千賀
それぞれの名前、分かります?
もちろんや北山、藤ヶ谷、横尾やろ
横尾
はい
それから玉森、千賀、二階堂
二階堂
うっお~マジで!?
あと1人、誰やっけか?
宮田
俺です、俺
ん~確かぁ、宮なんとかゆうてたなぁ
宮田
みや、み~
宮内、ちゃうなぁ、思い出した
宮下や!
宮田
違いますって内く~ん
玉森
くくくっ、宮下、みっ
北山
ガハハハッ
二階堂
タマ、はまりまくってる、ギャハハハ
藤ヶ谷
ぷぷぷっ
千賀
今日からお前、宮下でいんじゃね
宮田
そんなぁ~
一同
あはははっ


でも、あれは最高に面白かった。

明けて次の年、2009年に帝劇で行われた新春:滝沢革命では滝沢くんがファンを魅了したのはもちろんだけど俺達グループのファンが狂喜したのは。

ファン
きゃあ~タイピーとキタミツが
敵同士だなんて萌える~
.
2人の対決シーン、ぞくぞくする
ファン
藤北、さいこ~う


「ファンって不思議だね俺には理解できない,ハハッ」それから、何故だか俺は事務所に呼ばれ。

玉森
オーディション…ですか?
統括
ここいらで玉森も気合い入れ何か足跡を残さんと周りから置いてかれるよ
玉森
あ、はぁ~


もともと好きで入ったわけではない事務所、母親がファンで勝手に履歴書を送った。あの日のことは、今でも聡明に覚えている。

玉森
イヤだぁ、ヒクッ、釣り行くの~和くんと約束しているんだから、やっやっ、帰るぅ~
裕太お願い、ねっ
玉森
やぁ~だぁっ


後にも先にも、あんなに泣いたのはあの時だけ。

北山
あれタマ、お前も来ていたんだ
藤ヶ谷
へぇ~珍しい同じグループから3人


それは有名なドラマのオーディションで過去に亀梨くんとかも出ていた番組、そのスペシャルをやるため生徒役を募集してのことだった。

(俺達の2トップのお出ましか、なら負けてはいられないな)

普段はボーッとしていると言われている俺だけど、実はかなりの負けず嫌いときている。

北山
タマちゃーん演技したことあるぅ?
玉森
むっ、そういうキタミツだって俺と
大して変わらないじゃん
北山
俺は舞台で経験を積んでるからさ
ガハハッ


俺達のグループ内でも、半端なく男気が強かった
ミツ、まぁ~サッカーをやっていたのもあるんだ
けど。

玉森
舞台とドラマは違う


(それだったら俺だってやってきたさ、キタミツほど上手くはないにしろ)

北山
じゃ受からなかった方が肉、おごりな
藤ヶ谷
ふっ


そんな俺らのやり取りを経験豊富なタイピーは余裕の笑みで見つめていて闘争心に火がつき、結果。

.
高杉怜太役は玉森裕太くんに
決定しました


(パチパチパチ!)

玉森
マジで!?本当に
藤ヶ谷
おめでとうタマ
北山
頑張れよ
玉森
うん、んふふっ


人には、誰にでも転機というものがある。


スタッフ
玉森裕太くん入りまーす
玉森
宜しくお願いします
亀梨
宜しくタマ
玉森
はい


俺の転機は、この「ごくせん」というドラマに出れたこと続けて夏公開の映画にも出演し。

.
玉森お前の位置はそこじゃない
ここだ
玉森
えっ!?


いきなり、前へと出され。

玉森
キタミツ、俺
北山
大丈夫、タマならできるさ
藤ヶ谷
自信を持って
玉森
タイピー


そんな俺を悔しそうに見つめていた千賀、寂しげな表情の宮田。

玉森
俺、頑張る
北山
タマ、ふっ


芸能界は競争の世界、躊躇していたら負けてしまう「好きなこと全部捨てこの世界に入って来た、だから負けるわけにはいかないんだ」

でも、どんどん才能を発揮し飛躍していくミツや
タイピーに比べ自分はいつも宮田と怒られてばか
りいて。

初めはβには無理なんだと思っていた、けど位置を奪われた千賀の鋭い視線が胸を貫き「俺だって頑張っていたんだ」そう言いたげに…

(分かっているよ分かっているダンスや歌はお前の方が上さ、でも俺はβだから無理だと甘え怠けていた自分から卒業したい見ていてくれ絶対に恥ずかしくないセンターになってみせるから)

が、その後とんでもない「どんでん返し」が待ち
受けていようとは。

センターとしての玉森裕太は、こうして誕生し今
ここにいるメンバーのいろんな想いを受け不安と
期待の中で。




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