第3話

護りたい者②藤ヶ谷side
横尾
藤ヶ谷?
藤ヶ谷
なに
横尾
なんか…あった?
藤ヶ谷
どうして
横尾
寂しそうに見えたから


(ふっ、まさか横尾にあんな言葉を投げかれられるとは思わなかった)

あれは、2006年「滝沢演舞城」初演のとき。

北山
なんすか?それ
滝沢
んっ?あぁ、抑制剤
北山
どこかで聞いた事があるような
滝沢
お前さ、ちゃんと勉強している?
北山
やってますよ一応、大学生だし~
滝沢
そうじゃなく
北山
んっ?
滝沢
小学生のとき学校で習わなかった


「 DREAM BOYS」の舞台中に滝沢くんに声を掛けられて以来、何かと可愛がってもらっていた北山。

それからしょっちゅう楽屋へと入り浸って、この日も俺が前を通ったら。

滝沢
あっ、いい所へ来た藤ケ谷こいつ
連れて帰ってくんない
藤ヶ谷
北山また?ダメじゃん、すみません
いつも
滝沢
いやいいんだけどさ、そろそろ
北山
あぁーっ
藤ヶ谷
うわっ、なに!?
北山
そういえば、お前も飲んで
なかったっけ
藤ヶ谷
はっ?
北山
抑制剤
藤ヶ谷
‥‥‥


そう俺は正真正銘のアルファ純血の血筋、ともに
αの両親から生まれた。

滝沢
へぇ~そうなんだ
藤ヶ谷
いや、ほら行くぞ失礼しました


ペコンと頭を下げ、北山の腕を掴むとグイッと引っ張り。

北山
ちょ、痛いってば!そんなに強く
引っ張んな


ジーッと俺を見つめる滝沢くんの視線を感じつつ、自分の楽屋へと戻って行き。

千賀
うおっ、どうしたんすか!?2人とも
藤ヶ谷
どうしたもこうしたもない
二階堂
分かった、また滝沢くんの楽屋へ
行ってたんでしょ
宮田
だからって、そんなに怒らなくても
藤ヶ谷
怒ってねぇよ
横尾
十分に苛々していると思うけど
藤ヶ谷
ちっ


北山と知り合ってからの俺は、いつも誰かに謝ってばかりで。

北山
大倉またそんなの食ってんのか、仕方がね俺が美味いもん食わせてやっから
藤ヶ谷
北山、先輩にタメ語は使うな
いつも言っているだろ
北山
だって~俺ら友達だし、なぁ大倉
大倉
あはっ
藤ヶ谷
すみません本当に
大倉
ええって気にすんな


俺より年上なのに自由奔放で、だから滝沢くんにも目をつけられたんだけど。

藤ヶ谷
えっ、滝沢くんに?
北山
そっ、飯に誘われちまった
藤ヶ谷
なんで?
北山
おまえ生意気だな、そう言われてよ
藤ヶ谷
はっ?わけ分かんない


(ほんと、頭が痛いよ俺の相棒は)

滝沢
藤ヶ谷、終わったら一緒に
メシ食いに行かない
藤ヶ谷
俺とですか?北山ではなく
滝沢
そう


その日とつぜん滝沢くんに食事に行こうと誘われた、それも2人きりで。

滝沢
そんなに緊張しなくてもいいよ
藤ヶ谷
あ、はい
滝沢
ここ個室だから周りの目を気にし
なくても済むし


(わざわざ人目につかない場所を選んだってことは、あの話し…だな)

滝沢
うちの事務所ガードはしっかりして
いるから
藤ヶ谷
です…ね
滝沢
俺も入所した後に提出したんだ


(ほら、やっぱり)

滝沢
主治医の先生って誰?
藤ヶ谷
高林先生です
滝沢
ふーん


大勢のタレントを抱えてるってことは逆に時限爆弾も下手すりゃ入れてしまうかもしれないってこと、つまりその危険を回避するため事務所はαが入所してきた際には委嘱した病院へ通わせる事にしている

滝沢
藤ヶ谷は小5で入ったんだよな
藤ヶ谷
そうです
滝沢
ってことは


すでに、第二次性徵期検査を入所時に済ませていた場合「結果通知書」を事務所へと提出し。

滝沢
入所後の検査で出たんだ俺と同じだね
藤ヶ谷
‥‥‥
滝沢
どう思った?
藤ヶ谷
別に両親共にそうですし
滝沢
へぇ~そこまで一緒とは驚きだな
藤ヶ谷
滝沢くんも!?
滝沢
離婚しちゃったけどさ
藤ヶ谷
あ…‥


(そうだった、まだ小さかった頃に)

滝沢
藤ヶ谷の両親は仲いいの?
藤ヶ谷
とても
滝沢
じゃ、うちみたいに運命の番には
出くわさなかったってわけか
藤ヶ谷
えっ
滝沢
俺の親父は、それでお袋と別れ
その人との間に子供を作った
藤ヶ谷
‥‥‥


(滝沢くんも、いろいろあったんだな)

滝沢
ところで
藤ヶ谷
はい


と、とつぜん厳しい表情になり。

滝沢
なんで藤ヶ谷は自分の能力を
発揮しないわけ?
藤ヶ谷
えっ
滝沢
今のままじゃデビューは遠いよ
藤ヶ谷
俺…は
滝沢
それとも、やる気がない?
藤ヶ谷
違います!


(俺は人を感動させ夢を与えられる人間になりたい、そして皆を笑顔にしたい)

滝沢
だったら


滝沢くんは言った、俺らグループを引っ張って行くのは俺と北山しかいないと。

滝沢
2人でよく話し合っているんでしょ?


グループの方向性やメンバー各自のキャラについて

滝沢
なら言いたいことが分かるよね?
藤ヶ谷
ずっと、ずっと考えていました
自分はどうあるべきなのかを


(このグループのために)

滝沢
北山は見た目チャラく見えるけど
芯はしっかりしていて自分の考え
をハッキリ俺に言ってくる
藤ヶ谷
ですね、よく分かります
滝沢
人徳なのか生意気なくせして先輩や
目上の人にも可愛がられ
藤ヶ谷
滝沢くんも
滝沢
可愛いよ俺、あいつのことが
可愛くて仕方がない


(分かっていますって、ふっ)

滝沢
北山がΩじゃなくて良かったって
心底そう思う
藤ヶ谷
えっ
滝沢
あいつがΩだったら大変さ
藤ヶ谷
はい、ですが
滝沢
もし、だったとしたら俺は真っ先に
あいつの項を噛み自分の番にするね
藤ヶ谷
滝沢くん!?
滝沢
そうやって大切な者を護ってやるのが男ってもん、そうだろ?
藤ヶ谷
ぁ…‥
滝沢
心配するな例えばの話し、うちの
事務所Ωは入所させないから
藤ヶ谷
確かに


そう二階堂や自分みたいに小学生で入所した場合は、そのあとの第二次性徵期検査でΩだと分かった時点で強制的に退所させる事になっている。

「基本Ωは入所させない」それが事務所側の方針、だから北山がΩなわけないんだけれど。

滝沢
まっ、そうじゃなくても俺は後輩として彼奴のこと大事に思っているし


(滝沢くん貴方の言いたいこと何となく分かりました心配しないで下さい俺が北山の傍にいつもいます。そして2人してグループを引っ張って行きます天辺を目指し)

「この世界で必ず」そう決心した、あの日のことを昨日のことのように思い出す。

滝沢
稽古、開始するぞ~北山、藤ヶ谷
北山
はい
藤ヶ谷
はい


滝沢くんの号令で、革命の稽古は再開された。