(滝…沢‥くん)
あの騒然とした場で、俺の理性は思考を無くし正確には記憶をなくしてしまい。
周りを見渡せば、そこは帝劇の楽屋の一室で俺は
ソファーの上で横になり。
ツタンカーメンのような顔をした千賀が、傍で泣きじゃくっていてよ。
「あ、そう…か‥俺、ハッ!北山は」そう、ガバッと飛び起きたら。
改めてよく見れば、いるのは千賀と高林先生だけ
じゃなく。
(だよ…な、あれだけ高林先生にも注意するように
言われてたのに俺は、よりにもよって舞台の上で)
(悪い…)
コクンと、小さく頷く高林先生。
(そんなわけない、あれは間違いなくΩのヒート俺はそれに誘発されラットを起こした薬を飲んでいたのに発情してしまったのは、ハッ)
「そうです貴方が運命の番だからです」高林先生の眼がそう言っていた、だから抑制剤が効かなかったのだと。
・千賀side
それはガヤさんが目を覚ます少し前のこと、ニカが俺達のところまでやって来て。
(あの混乱の中で滝沢くんとワッターが交わしていた言葉の意味に、気づいた人はどれだけいたんだろ?たぶん殆どの人が気づいていなかったはずだ)
(さすが五関くん勘が鋭い)
(ガヤさん、なんで?)
(どうして誤魔化すんだよ?αだってバレたくないからか別にいいじゃん櫻井くんだってそうだし、うちの事務所けっこうαが多い滝沢くんや山下くん亀梨くん俺、知っている分かるんだαの櫻井くんを見て来たから。でもガヤさんもそうだとは気づかなかった、なんで隠していたんだろう?)
ガヤさんは、両親と兄弟の5人で暮らしている。
根は寂しがり屋のガヤさん家族と住んでいながらも俺達の家へ泊まり歩くことでも有名で、だから俺んちにも来たことがあった。
行きかけた俺に声を掛けてきたガヤさんに、クルッと後ろを振り返れば。
そう言って寂しそうに笑い、その顔が気に掛かる「なにか、悩みがあるのなら聞いてあげたい俺では役不足だろうけどさ」
でも俺は、そこにミツが関係していただなんて思わなかったんだラットはΩのヒートにより引き起こされるものだという事も。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。