第2話

護りたい者①横尾side
2009年12月━

この日、俺たちは帝国劇場に併設されている9階の稽古場で新年早々に行われる舞台:滝沢革命の稽古に勤しんでいた。

二階堂
よし、今度は俺の番っと
千賀
まだクリアしてねぇよ
宮田
ねぇ何をやっているの?
二階堂
あぁ、このゲームさぁ
玉森
宮田あぁ~寄り道していないで早く
行って来い
宮田
はぁーい今~二階堂、がっちゃん
またねぇ


(あっ、これはそのなんていうんです合間に弟たちがゲームなんかをしちゃったりしているわけで、ハハッ)

が、そんな中で俺はなんとなく気になっているメンバーがいてさ。

横尾
どうかした?北山
北山
えっ、あ…んにゃ


元気がない様子の北山、しかし聞いても正直に答えるわけがない。

横尾
調子、悪いの?
北山
…まぁ
横尾
なっ、具合悪い!?
北山
はっ?俺、なんか言った
横尾
‥‥‥


(大丈夫か?こいつ)

そのときふと感じた身近にいた奴の視線、俺はこの視線を知っている以前にも心配そうに見つめていたから、思い起こせばこの年の夏、少年隊さんの跡を継ぎ青山劇場で「PLAYZONE」の舞台を務めることになったとき。

宮田
よっ、横尾さん!?どしたの?その髪
千賀
また随分とバッサリ切ったねぇ
横尾
これ?役作りだよ、や・く・
づ・く・り、んふっ


誰の胸の内にもあった今が正念場という気持ち、
それが。

北山
気合い入ってるなぁ~横尾さん
玉森
でも、どうして前髪を短く切った
わけさ?
横尾
んふふっ


幼児の格好をすると聞いた俺は思い切った行動を
起し、これがメンバーにかなり受けたらしく稽古
場へ行ったらすぐに突っ込まれ。

藤ヶ谷
イケてるじゃん
横尾
でしょ~
藤ヶ谷
ワッター似合ってるぅ
横尾
Thank You 藤ヶ谷


ここ最近の俺達はノリに乗っていた、その前の年にはエビキスでコンサートをしたくらい。

小山
このまま行けばデビューも夢じゃ
ないよ横尾ちゃん


(デビューねぇ、ふっ)

したいと思ってなかったわけじゃない、この世界に飛び込んだのは15のとき。以来ずっと、それなりに頑張って来た「Youじゃなくお兄さんが欲しかった」そんな社長の言葉を引きずりながら。

けど次から次へデビューしていく周りの連中を見ながら気落ちする日々が続き周囲でなんて言われてたかなんて知っている、売れ残りの寄せ集めの7人。

それが「PLAYZONE」の舞台をメインで務めることになり。

二階堂
やったぁ~
宮田
頑張ろうタマ
玉森
うん


続けるにしろ辞めるにしろ爪痕を残すなら今しかない、そんな思いからでもあったんだ。

北山
2人とも、ほら発声練習
発声練習、くくくっ
玉森
あ・え・い・お・う~
山本亮太
あーえーいーおーう~


まだ、このときは北山にそういった兆候はなく。

玉森
はあ~っ
山本亮太
はあっ
北山
ガハハハッ、そんなんじゃ
聞こえないよー
屋良
もっと大きな声で
玉森
はあぁ~っ
山本亮太
はああっ
北山
かぁ~わいい
屋良
くくくっ


賑やかな声が、稽古場いっぱいに広がっている。

二階堂
可愛いのは分かるんだけどさ弟はタマだけじゃないんだっつうの
千賀
妬かない妬かない
二階堂
俺は別に、チッ
宮田
分かるよ二階堂、キタミツのこと
人生の師匠だって言ってたもんな
二階堂
宮田
千賀
でも屋良にぃの亮太への溺愛も
半端ない
宮田
ほ~んと屋良さんってあんなふうに
なっちゃうんだ初めて知った
二階堂
マジ信じらんねぇ


そんな中、それぞれが前を見据えていたとき今でも聡明に思い出す、あのときの藤ヶ谷の顔を何故だか独り北山のことを遠巻きで見ていて。

(どうしてそんな眼で?辛そうな、それでいて切な
そうな)

俺は、どちらかというとそっちの方が気に掛かり。

横尾
藤ヶ谷?
藤ヶ谷
なに
横尾
なんか…あった?
藤ヶ谷
どうして
横尾
寂しそうに見えたから


そう言うと「ふっ」と笑い尚更、目が離せなくなってしまう。

さかのぼれば藤ヶ谷が事務所に入ったのは小5のとき、当時は滝沢くんとヒロミさんがMCを務めていた「8J」という番組によく出ていたらしい。しかし、中学になった頃より事務所からの連絡がピタッと止まり入れ替わるようにして入所して来たのが、俺や宮田、二階堂ってわけ。

そんな藤ヶ谷と深夜に放送された番組「裸の少年」で顔を合わせたのは、それから約1年後のこと。

お互い初対面から肌が合わず、な~んてのは昔の話し誰にでもある子供だったからなんとやら滝沢くんと翼くんも今でこそコンビを組んではいるものの昔は不仲だったのは有名な話し。

それと同じで皆いろいろあるんだ、ただ芸能人だから言われてしまう仕方ないんだけどね藤ヶ谷と北山のことだってそう思春期から大人へと成長していく中でよくある話し。

俺は、ずっと見て来たから2人のこと1番近くにいてずっと。

宮田
ねぇ最近キタミツ可愛くない?
千賀
なんていうの以前より俺さま感が
薄れた気がする


(ん~それはね)

二階堂
分かった俺が、みっちゃんなんて
言ったからだ


(違う違う、あははっ)

二階堂が北山のこと「みっちゃん」と呼んだのは、NHKの少クラという番組で、あのときの彼奴ったらデレ~ッとした顔しちゃって。

北山
みっちゃんだってさ~んふふっ


嬉しそうにニマニマしていたっけ、けどだからってわけじゃない年々セクシーさが増していた藤ヶ谷、ドラマ「ごくせん」に出てより意欲が沸いてきていた様子の玉森。錦織さんはそんなメンバーをちゃんと分かっていて各自それぞれの個性を把握し、その良さを舞台で生かそうと演出してくれた。

(凄い人さ)

稽古の初日から基本をみっちり仕込みダンスも、
あまりに個性的な俺達に皆で揃え綺麗に踊ること
を教えてくれ宮田は自分がアニメオタクであると
カミングアウトし。

北山は…

北山
えぇ~どうして分かったんすかぁ!?
上手く誤魔化してたのにな
錦織
その必要ないでしょ
北山
どうしてです?


錦織さんがいち早く素質を見抜き、それも革命の
舞台のとき。

錦織
だって勿体ないじゃん無理してカッコつけ粋がっているだなんて
北山
そおっすか?
錦織
いい素質があるんだから出さなく
っちゃ、ねっ
北山
ガハハハッ


それが新たな北山宏光を生み出すきっかけとなり、幕が開いた「PLAYZONE」の舞台では今まで見た事がないド天然の北山がいたんだ。

そう、こいつは玉森や千賀に負けないくらい天然だったってわけ。

後になって、この時のことを二枚目でいることより三枚目を演じる楽しさを知ることができたと本人は述べている。

その、なんとも言えないキャラに客席は湧き何よりもファンの子たちを喜ばせたのが、釣りをしている藤ヶ谷のもとへ内のことを話しに北山がやって来るシーン。

藤ヶ谷
タモとってタモ
北山
タモっていうのこれ?
藤ヶ谷
早く好きなの取っていいから


それを何故だか北山は、藤ヶ谷の頭に被せ。

北山
おっと~藤ヶ谷だったぁ
藤ヶ谷
ドキドキすんじゃねぇか
北山
お前、言うねぇ~


こんなふうに毎回アドリブを変え絡む2人にネットでは藤北の萌えシーンとして話題を呼び、こうして俺達は無事に舞台を務めあげる事ができ、いわゆる転機ともなったこの作品で更なる飛躍を遂げる事となる念願のコンサートツアーへと繋げ。

そして、今。

北山
はっ?俺、なんか言った
横尾
北山さ
北山
悪い、ちょっと考え事をしてて


(いつもの北山じゃない、どうしたっていうんだろ)

横尾
調子が悪いわけじゃないんなら
いいんだけど
北山
へっ?
横尾
あんまり無理しない方がいいよ

けど、それは前兆だったんた。


藤ヶ谷
北山!
玉森
‥‥っ
宮田
キタミツ!?
二階堂
宏光、しっかり
千賀
二階堂、揺さぶっちゃタメだ!


数日後とつぜん北山は稽古中に倒れてしまい「貧血かもしれない最近、顔色が悪かったから」俺がそう言うと。

滝沢
お前ら、そこを退け


聞こえてきた声に振り向いた先にいたのは。

宮田
滝沢くん!?


滝沢くんが血相を変え飛び込んで来て。

滝沢
藤ヶ谷
藤ヶ谷
はい
滝沢
少し休ませるから手を貸してくれる?
藤ヶ谷
分かりました
滝沢
みんな休憩してていいよ


この2人だけが気づいていた北山の異変、そのあと俺も知る事となる。

横尾
今のは誰?誰に掛けていたの


それから暫くしSOSして来たとき、俺も藤ヶ谷の傍にいてさ。

横尾
俺には言えない人?
藤ヶ谷
くっ
横尾
北山は大事なメンバーだよ何かあってからでは遅い、ちゃんと説明しな


苦渋に満ちた表情…

藤ヶ谷
力を貸してくれる?
横尾
なんの


(辛かったよね、凄く)

藤ヶ谷
北山を…くっ、護りたい
横尾
‥‥っ


(不安で、心配でさ)

高林
では隠す必要はないって事ですか?
横尾
はい、俺も力になりたいんで
宜しくお願いします
高林
分かりました


(でもこれからは大丈夫、俺が藤ヶ谷を支えるから
一緒に護って行こう)

俺達の大切な人をー